ご飯が選べるヘルシーなおばんざい
スイーツに限らず、食事も甘みは適度にきいていたほうがおいしいもの。特に、砂糖や味醂をよく使う和食ならばなおさらだ。でも、女たるものいつだってカロリーや糖分が気になってしまう。罪悪感無しで食事を楽しみたい――。そんな願いを叶えてくれるお店が、2018年11月、東京のど真ん中にオープンした「神宮前 らかん・果」。調理に砂糖を使わず、その代わりに、中国の伝統的な果実“羅漢果(らかんか)”由来でカロリーゼロの自然派甘味料を使った和食を楽しむことができる。
東京メトロ・外苑前駅から徒歩7分。外苑西通りに面した2階建てのモダンな建物に着いたのは平日のお昼どき。2階にあがると30席あるダイニングはほぼ満席で、女性客にまじって、シュッとしたお洒落な男性客もちらほら。見渡すと、多くの人が店イチオシのランチメニュー「おばんざい」を頼んでいた。ご飯茶わんを囲むように豆皿が並んだおばんざいセットで、見るからにヘルシーそう。さっそく同じものを注文すると、「ご飯は白米、十五穀米、低糖質米から選べます」と店員さん。健康を意識した客への気遣いが嬉しい。
まずはお茶を1杯。黒糖のような甘さに衝撃!
「羅漢果のお茶です」
おばんざいを注文して待っている間、店員さんが供してくれた黄金色のお茶をひと口飲んでびっくり! 黒糖のようなこっくりした甘さが一気に広がって、やがて口のなかがすっきりした甘さで満たされていく。羅漢果ってなんだかスゴい……と驚いているあいだにおばんざいのご登場。
小松菜と油揚げを梅干しとなめ茸で和えた一皿に、鶏肉の生姜煮込みときくらげのきんぴら、マグロと葉大根のじゃこ炒め。冷や奴にはセロリと昆布の漬けものがトッピング。たっぷりの野菜に、肉や魚をほどよく合わせた小皿料理は、どれも、確かな甘さがありつつもキリッとした味つけでご飯がすすむ。ヘルシーな見た目とは裏腹に、案外ボリューミーでおなかもしっかり満たされる。店員さんによるとおばんざいの内容は2カ月ごとに変わるというから、これはリピート必須!
羅漢果は不老長寿の漢方薬
ところで羅漢果って一体どんな果実なのだろう。素朴な疑問を店長の西牧諒さんにぶつけてみた。
「世界で唯一、中国南部の桂林のみで自生する、ウリ科の植物です」
そう言って見せてくれた実物の羅漢果は、産毛のないキウイフルーツのような見た目で、乾燥したその実は心もとないほど軽い。からからに乾いた皮のなかには、白い綿状の果肉に覆われた種子がぎっしりとつまっている。
「中国では、“不老長寿の神果”と呼ばれ、古くから漢方薬として親しまれてきました。煎じて飲むと、せき止めやのど荒れに効果があるそうです。ランチで食前に出しているのも、乾燥した実を砕いて煮だしたお茶です」
ビタミンやミネラルも豊富で体にいい。しかも、自然な甘さが舌に心地いい。そんなお茶なら、毎日でも飲みたい!
アメリカではスーパーフードとしてブレイク中!
西牧さんによると、「羅漢果は中国で重点保護植物として指定され、生の果実を輸出することが禁じられている」そう。そのため日本では、茶褐色の乾燥した実しか見ることはできないが、もともとはウリ科植物ならではの緑色。熟した果実は、突き抜けるほどの甘みを持つという。
そこに着目したのが、環境に優しい「ヤシノミ洗剤」でおなじみのサラヤ。独自の研究を重ね、砂糖の約300倍の甘味成分を持つ羅漢果からエキスを抽出して、自然派甘味料の「ラカント」を開発した。この店で使っているのも、何を隠そうラカントだ。
ラカントなら知っているという人は多いと思うが、日本では羅漢果じたいの認知度はまだまだ低い。けれどもアメリカでは近年、羅漢果がスーパーフードの仲間入りを果たし、「僧侶」を意味する「モンクフルーツ」という名前で人気上昇中だ。日本で羅漢果ブームが到来する日もそう遠くはないのかもしれない。
人気パティシエとコラボした絶品スイーツ
魅力あふれる羅漢果の甘さを実感できるのは、食事だけではない。
等々力の人気パティスリー「PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI」の岩柳麻子さんと共同開発したデザートも味わえる。店のメニューにのぼるジェラートは、旬の果物と羅漢果が調和した自然な甘さが体にしみこむおいしさ。お茶も充実しているので、スイーツ目当てに行ってもよさそう。
1階のカフェでは、旬の果物をふんだんに使ったコンフィチュール、ナッツやドライフルーツがぎっしり入ったブラウニーを販売。砂糖不使用、しかも人気パティシエとのコラボ商品とくれば、女性ウケは確実。おいしいモノ好きの同僚や上司へのギフトにしても喜ばれるだろう。
テイクアウトのお弁当も充実
1階のカフェでは、テイクアウトのお弁当も販売している。鶏海苔弁当、しゃけ海苔弁当に、いなり寿司。どれもランチメニュー同様、バランスのとれた充実の内容だ。事前に予約して、社内のランチミーティング用のお弁当にしてもいい。「今日は残業」という日なら、お昼を食べたついでに買って帰るのも手。仕事がきついときほど、体は体にいいモノを求めるはずだから。
「当店へは健康を意識しているお客さまが多くいらっしゃいます。料理は砂糖不使用でありながらしっかりとした甘みがあり、決してストイックではないところが好評です。お昼のおばんざいもそうですが、夜の食事もボリューミーですし、お酒も充実しています」
西牧さんの言葉に、なんだか夜も気になる都会の食堂。仕事帰りに、疲れた体を癒しに立ち寄るのもよさそうだ。
▼DATA/データ
神宮前 らかん・果東京都渋谷区神宮前3-7-8 ブレノワール青山ビル
TEL03-6447-1805
営業時間 11:00~22:00(料理21:00 L.O./飲み物21:30 L.O.)
定休日 不定休