イライラ、くよくよ、モヤモヤ。ざわつく心を静めるためには、坐禅が効果的。気分転換も兼ねて、日常から離れた場所で、気持ちのいい空間で身も心も清めたい。坐禅を体験しに、いざ、鎌倉の古刹(こさつ)へ。

「坐禅」で、嫉妬や怒りをなくす

東京駅からJR横須賀線で約1時間。神社仏閣が点在する古都・鎌倉には、坐禅を行っているお寺がいくつかある。一般人に門戸を開いているなかでも、人気が高いと評判なのがJR北鎌倉駅の目の前にある円覚寺だ。毎週土曜の午後、初心者も気兼ねなく参加できる1時間の坐禅会を開催している。

円覚寺の境内にある坐禅道場「居士林」の場内。味わい深い木造の建物で、ぴかぴかに磨き上げられた床が素足に気持ちいい。

境内にある道場「居士林」に入ると、50人ほどの参加者で場内はほぼ満席状態。20~40代とおぼしき女性もちらほらいて、なんと若い外国人女性の姿もあった。

作法にのっとって、貴金属を外し、はだしになって座布団に坐ると、さっそうと和尚が登場。よく通る声で、正しい坐り方から意識の持ち方まで、丁寧に教えてくれた。

坐禅といえば、雑念を捨てて“無”の境地でいるべきもの。そんな難しいイメージを持っていた。けれど、「坐りながら、自分の心を客観視することが大事」なのだと和尚は言う。坐る間も、自然と、抱えている怒りや焦りは頭に浮かんでしまうもの。そういう自分の感情を、人ごとのように“見る”心が養われれば、怒りや焦りへの対処法を冷静に考えられるようになる。和尚の言葉を借りれば、「大火事になる前に、小さな火元をたやすく消し止められるようになる」のだという。それが、坐禅の効用。

教わった通り、呼吸に集中しながら坐った。みんなも同じ状態のようで、場内はしんと静まり返っている。試しに何も考えないように努めてみたけれど、うるさいほど心配事やら考え事が浮かんでくる。そこで和尚の言う通り、自分の感情を観察しながら、体は微動だにせず20分。

カーンと鳴り響く音が坐禅の終わりを告げた。深く呼吸をしていたおかげもあるのだろうか、心配事が消えたわけではないけれど、頭の中はクリアに。ざわついていた心も落ち着いて、気分は晴れやかになっていた。坐禅って、気持ちいい!

日常から切り離された空間で自分を見つめる時間は貴重なもの。試せばわかるよさがある。週末、鎌倉散策を兼ねてぜひ。

▼すーっと、心が落ち着いていく
1. 広大な円覚寺の境内には、いくつもの見どころがある。仏殿には、寺の本尊“宝冠釈迦如来”がまつられている。荘厳な天井絵も印象的。2. 坐禅をする一般人が履く、“居士”と呼ばれる下駄。3. 境内のいたるところに立つ地蔵。4. 坐禅のための道場「居士林」。昭和初期、東京・牛込にあった柳生流の剣道の道場を移築した建物だ。
▼静寂に包まれて、ただ坐る
(左)坐禅の指導は和尚が行い、時に代理のお坊さんが行うこともある。服装はラフな格好がベター。あぐらに似た坐り方をするので、ぴったりしたデニムだと途中で辛くなる。ゆったりめのパンツがおすすめだ。静まり返った道場に身を置くだけで気持ちが落ち着く。
(右)週末に開放される、坐禅道場「居士林」。趣あるわらぶき屋根の門をくぐると、これまた風情のある木造の道場が立っている。「居士」とは、在家の禅修行者のこと。その昔、夏目漱石や島崎藤村たちも、ここ円覚寺で坐禅を組んだといわれている。
(左)経験者の部(土曜14時40分~)では、最後に「般若心経」などのお経をあげる。その場にいる全員の声が共鳴して、荘厳な雰囲気に包まれる感じがいい。カラオケでストレスを発散するのとは違って、静かに心が落ち着く。初心者の部のあと、続けて参加するとなおよし。
(右)坐禅には、肩や背中を打つ「警策」と呼ばれる棒がつきもの。こっくりこっくり舟をこいでいたらバシッ!と不意にたたかれるイメージがあるけれど、実際は違う。こちらから合掌をして、「たたいてください」という意思を示すことで打たれ、集中力を促してもらうのだ。
【円覚寺】
神奈川県鎌倉市山ノ内409 (電話)0467-22-0478
「土曜坐禅会」は毎週土曜開催で、初心者の部は13:20~14:20。経験者の部は14:40~15:40。ともに15分前集合。休会の週もあるのでホームページで確認を。予約不要。
拝観料300円。坐禅会の費用は無料。