女性の生きる姿勢は、話し方に表れます

「フリーアナウンサーとして、話すことを仕事とする私が日々実感していること。それは、“話し方”はハウツーを学ぶだけでは上達しない、ということなんです」

フリーアナウンサー 堤 信子さん

その理由を堤信子さんは「その人自身の生き方や考え方が、話し方そのものをつくるから」と語る。

「人が何をどう語るかは、どう生きてきたか、今何を考えているかが如実に出ます。物事の捉え方まで表れるといっても過言ではないでしょう。物事をポジティブに捉える人は語り口が前向きだし、逆もしかり。それは声の発生から話す姿勢にまで表れるのです。働く女性なら、この世には理不尽が満ちていることはご存じですよね。AがだめならBがある、BがだめならCで行こう。そんな考え方ができる女性は表現豊かで、話し方も優雅です。否定的な言葉を使わず、自分の意思を明確に伝える姿を見ると、なんと賢く美しいのだろうと感動してしまいます」

人はどんなときに本音を漏らすのか

堤さん自身、インタビュアーに回ることが多く、限られた時間で初めて会った人から本音を引き出すことが求められる。そんなとき彼女はどんなことを心がけているのだろうか。

「『人は機嫌のいいときに本音を話す』。これは長年仕事を続けて感じていることです。だからこそ意識しているのが、私自身が上機嫌でいること。お話を伺うならその方の下調べをするのは当然で、調べればこそ会いたい気持ちはグンと高まります。その思いを素直に相手に伝えるんです。『今日、お会いできるのを楽しみにしていました!』と」

先に相手を好きになり、先に感謝を伝える。すると温かな空気が循環して、相手が本音を返してくれる。堤さんは「言葉はギフト」というフレーズを心から愛していて、それを実践しながら、自らの話し方のレベルを確実に上げているのだ。

▼堤さんが愛用する 鉄板フレーズ
「今日、お会いできるのを楽しみにしていました」
好意を持たれて嫌な気持ちになる人は少ない。先に笑顔でこう伝えるのが堤さん流の挨拶。
「あなたとのご縁に感謝しています」
何事も人の縁が運んでくる。人との出会いがすべてだと信じている堤さんらしいフレーズ。

プロならではのメソッドを大公開

さてここからは、堤さんによる話し方レッスン。今日知って、明日役立つテクニックを教えてもらう。

「私が実践するメソッドを7つのキーワードでお伝えします。ぜひ仕事の現場で役立ててみてください」

【短文主義】
一文は短く、結論を最初にまとめましょう。要点が3つなら『お伝えしたいのは3つ。その理由は……』が正解。新聞も雑誌もまず見出しがありますよね。話にも見出しをつけると、聞く側はその内容がスムーズに頭に入ってくるのです

【程よい間】
重要なことを話すとき、その前に1拍の間をおきましょう。心の中で『パン』と手拍子を打つのもおすすめ。一瞬の静寂をつくると、周囲はあなたに注目しますよ

【アイコンタクト】
話すときも聞くときも相手の目をしっかり見ること。苦手な人は、大切なことを話すときと、深く同意したときだけでもOK。より深い信頼関係が生まれます

【相づち】
相づちを打つのはルールであり礼儀。また大勢の場でこそ目立つので、壇上の相手にアピールしたいなら、ぜひ相づちを打ってみて

【素の顔】
話すことだけでなく、聞くときの顔も大事。気を抜いて不機嫌な顔になっていては印象もダウン。聞くときこそ口角を上げましょう

【滑舌】
1日1回、好きな文章を音読してみては。相手の耳に心地よい声を響かせるのは大切なことです

【テーマはひとつ】
相手に印象を残したいならテーマは絞る。この鉄則、覚えておいて損はないはずですよ

女性ならではの心遣いに満ちているのが堤さんのルール。今の社会にこそ役立つメソッドとなるはずだ。

(衣装協力=ワンピース17万6000円/アクリスプント(アクリスジャパン)(電話)0120-801-92 ※税別)

▼堤さんが選ぶ 話し方を学ぶ本

左から/耽美な言葉選びに感嘆する『私の美の世界』(新潮文庫)。人と信頼関係を築き、自分の目標を実現していくためのメソッドが満載の『アクティブリスニング なぜかうまくいく人の「聞く」技術』(ダイヤモンド社)。各界のトップランナーの言葉に学ぶ『成功者3000人の言葉』(飛鳥新社)。

堤 信子(つつみ・のぶこ)
フリーアナウンサー
FBS福岡放送を経て、フリーに。現在は、テレビ、ラジオ、講演や司会など幅広く活躍中。『ありがとう上手の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)ほか著書多数。