自己流の対策で、悪化することも
現代はストレス社会。職場の人間関係などに加え、女性は家庭内にも子どもや親をめぐる問題が盛りだくさん。少々気になる症状があっても、あまたの情報の中から自分でできそうな対策を見つけ、とりあえず試して様子を見る人は多いだろう。
だが、間違ったやり方や効果のない方法は、続けることでさらに症状の悪化を招くことが少なくない。ときには「よかれと思ってしたことが、余計にひずみを生んでほかの痛みを誘発する」(足医学・桑原靖先生)こともあるから自己判断は禁物だ。それを防ぎ、適切な治療を早期に開始するためにも、「ただ悩みすぎているだけなのか、治療が必要なのか、専門の病院で客観的に現状を診断してもらうことが大切」(抗加齢医学・浜中聡子先生)だという。
ストレスは心と体に影響を及ぼし、身体機能も年齢とともに必ず低下する。特に女性は「社会進出に育児や介護、自分自身などマルチなストレスを抱えている」(睡眠医学・林田健一先生)というから、早めに専門医に相談に行くことは決して無駄ではないのだ。
気になる症状が、ズバリ名称に
これまで自己流で対処していた悩みや不調が、実は深刻な病気やホルモンバランスの変化の始まりということだってある。できれば早めに医療機関を受診したいけれど、何科を受診すればよいかというハードルも。そんなときは、頼りになる「専門外来」を探してみてはどうだろう。
専門外来は、めまい・頭痛・口臭・ドライアイなど、気になる症状や不調をそのまま名称にうたっていることが多く、必然的に診療科のミスマッチが少なくなる。何よりその分野に精通した医師が診療にあたるのが魅力だ。ただし、大学病院と同じように紹介状が必要な場合もあるので、すぐに受診が可能かどうかは確認が必要。ここでは、女性特有のトラブルを相談できる専門クリニックを3軒紹介しよう。
髪の悩みの治療は徹底した問診から
・短くて細く軟らかい抜け毛が増えた。
・頭頂部や髪の分け目が透けて見えるようになった。
・過度なダイエットをしたら髪がパサついて切れるようになった。
・出産後に抜け毛が増えて回復する様子がみられない。
・更年期世代に突入した。
見た目年齢を左右する頭髪の悩みは、女性にとって切実な問題。徐々に薄毛や抜け毛、地肌の透けが気になり始め、ヘッドスパや育毛剤を試したり、美容師に相談して髪形を変えたりする人も多い。
女性の薄毛は、主に血流の低下と女性ホルモンの乱れによるもの。ただし、原因は1つに限定できず、「子宮や卵巣などの婦人科疾患のほか、甲状腺疾患、出産(特に高齢出産や多胎出産)、過度なダイエットなど多岐にわたる」と浜中先生は話す。早ければ20代から症状に悩む人もいるというほど、クリニックを訪れる年齢層は幅広く、悩みは深い。
だからこそ、治療には徹底した問診が大切だ。特に若い人には生活習慣の見直しと、月経周期や月経前症候群など婦人科的側面に対しての指導をすることで、早めに改善のきっかけをつくる。「加齢による変化がいずれ来たときに、やれるだけやったうえで本格的な治療に入るのが理想」なのだそう。
クリニックでの治療は保険適用外。1年~1年半くらいで70~80%は改善が見込めるという。抜け毛が怖くても、日常ケアとして「シャンプーは毎日すること、自然乾燥させないこと」は守りたい。
1.2.日本初の女性専門外来の設立から丸11年。女性が通いやすくリラックスできる空間づくりも魅力。3.4.プライバシーに配慮した個別対応の環境が整う。5.受診前に専門スタッフによる無料相談が可能。費用や治療内容の疑問はカウンセリングで。6.診察では頭髪・頭皮はもちろん、生活習慣なども問診。血液検査、血圧測定を経て投薬などの治療が開始される。
教えてくれた人=院長 浜中聡子先生
女性頭髪専門外来 医療法人社団 ウェルエイジング ウィメンズヘルスクリニック東京
東京都千代田区丸の内1-11-1 パシフィックセンチュリープレイス丸の内10F 電話03-5224-6661 (診)火・木・金・土・祝10:00~14:00、15:00~19:00 水13:00~19:00 (休)日・月・第1水 ※予約制
日本人の多くは睡眠が足りない
・床についてから眠るまでに60分以上かかる。
・夜中に2回以上目が覚め、その後なかなか寝つけない。
・いつも起床予定時刻より2時間以上早く目が覚めてしまう。
・脚がムズムズして、じっとしていられず眠れない。
・寝ても疲れがとれず、仕事のミスなどが増えた。
日本は世界でも有数の睡眠不足の国。適切な睡眠には7~8時間が必要だが、6時間以下の人や、質やリズムに問題がある人も多い。
働き盛りの女性が抱える睡眠の悩みはいくつかあり、眠りたいのに眠れない不眠症、24時間化社会の影響で社会的時差ボケになる概日リズム睡眠障害が目立つという。
睡眠不足症候群も注目の睡眠障害の1つ。日々の寝不足が蓄積した「睡眠負債」が日中の作業効率を下げるだけでなく、生活習慣病や重篤な病気のリスクを上げる。林田先生は「休日に寝だめする人は自分が寝不足だと気づいていない可能性がある」と指摘する。
一方で、全く別の原因がある場合も。レストレスレッグス症候群は圧倒的に女性に多い疾患で、脚の不快感で眠れない状態が続く。鉄不足やドーパミンの働きが関係していて、鉄欠乏性貧血の人は合併の可能性が高い。
こうした睡眠障害の治療は、問診を経て眠りによい生活上の工夫を指導し、必要に応じて投薬を行う。眠くなってから床につき、毎日同時刻に起床する習慣づけは特に大切だ。夜眠れず、日中のパフォーマンスに影響するようなら、慢性化する前に受診を考えよう。
1.人は職場や家庭などで問題が起きても、逃げ出せずに立ち向かうしかないことが多い。「そのストレスフルな状態が睡眠障害につながる」と林田先生。2.クリニックの場所は大崎駅前のオフィスビル内。仕事帰りにも通える利便性が心強い。3.4.診察室や待合室の照明は明るさの調節が可能。睡眠に影響する光の刺激を抑えられる仕様に。
教えてくれた人=院長 林田健一先生
睡眠外来・心療内科・精神科 スリープ&ストレス クリニック
東京都品川区大崎2-1-1 ThinkPark Tower3F 電話03-5745-3080 (診)火・水・木・金10:00~13:00、15:00~19:00 月15:00~19:00 土9:00~13:00(再診のみ) (休)月午前・土午後・日・祝 ※予約制
足骨格のゆがみを正して快適な歩行に
・真っすぐ立つと土踏まずと床との間に隙間がない。
・足裏や足指にたこ・うおのめがある。
・はだしで片足立ちするとフラフラする。
・靴底が左右非対称にすり減る。
・フラットな靴よりもハイヒールを履くほうがラク。
外反母趾(ぼし)や扁平(へんぺい)足、たこ・うおのめ、巻き爪など、足のトラブルには痛みや変形を伴う。疾患名はさまざまだが、その原因のほとんどは「足そのものの構造上の問題」。女性の足のトラブルは男性の4倍といわれており、桑原先生は、「女性は靭帯(じんたい)組織や関節構造が柔らかく、足の基本構造がゆがみやすい。足に負担のかかる靴を長時間履くのも原因の1つ」と説明する。年齢とともに膝の痛みなどにも進行しやすいため、足の疲れや痛みを放置するのは危険だ。
クリニックでの治療は、足骨格のゆがみの度合いや運動機能を検査するところから始まる。そのうえで外科的治療や、足骨格を正しく支えるインソールの使用、ストレッチ方法などを指導する。市販のインソールを使うなら、形が崩れにくく、土踏まずの部分が立体的なものを選ぶとよい。ストレッチをしてアキレス腱(けん)やふくらはぎを伸ばし、股関節を柔らかく保つのが効果的だ。特にハイヒールがラクという人はアキレス腱が縮んでいるからしっかりと伸ばそう。
欧米には「足病学」という分野があるが、日本では足の専門外来は珍しい。毎日の快適な歩行のためにしっかりメンテナンスを。
1.2.診察室で足骨格のゆがみの度合いを診断。足のトラブルには遺伝的な要因も。3.外側縦・内側縦・横のアーチのゆがみが足トラブルのもと。正常な位置に保つことで、きちんとした歩行ができる。4.間違った靴選びは足の負担に。靴は、もともと左右に倒れやすいかかとに安定感があり、足首を固定できるものがベスト。ヒールは4cm以下なら負担が少ない。
教えてくれた人=院長 桑原 靖先生
足の一般外来・こどもの足外来・フットケア外来 医療法人社団 輝幸会 足のクリニック 表参道
東京都港区南青山5-6-24 南青山ステラハウス3F 電話03-6434-1082 (診)月~土10:00~13:30、15:00~19:00 (休)日・祝(日は一部診療) ※予約優先
医療法人社団 ウェルエイジング ウィメンズヘルスクリニック東京 院長
米国抗加齢医学会ほか国内外の専門医資格を多数取得。心身両面からのアプローチで「ウェルエイジング」を提唱・実践する、女性頭髪治療の第一人者。悩める女性に寄り添った治療に定評がある。
林田健一(はやしだ・けんいち)
スリープ&ストレス クリニック 院長
日本睡眠学会評議員・認定医、精神保健指定医。慈恵医大附属病院などで睡眠障害の専門治療に幅広く取り組み、2007年にクリニックを開設。睡眠の観点から働く人のストレスケアにあたる。
桑原 靖(くわはら・やすし)
医療法人社団 輝幸会 足のクリニック 表参道 院長
埼玉医科大学病院形成外科で足の難治性創傷治療などにあたり、その後クリニックを開院。足に関する各分野の専門医とスタッフによるチーム医療を展開し、足の総合的な治療とケアを行う。