自宅での鑑賞とは一味違う高揚感がある、映画館のスクリーン。オーナーの愛が詰まった「シネマアミーゴ」では、とっておきの映画と非日常が待っています。
シネマアミーゴ
神奈川県逗子市新宿1-5-14
電話046-873-5643 席料1500円(ワンドリンク付き)
(営)9:45~、1日5回上映。(休)不定休。イベントや貸し切り等で休映の場合もあり。

神奈川県は逗子海岸のそばにたたずむ「シネマアミーゴ」。アンティークの椅子とテーブルを置いたリビングのような空間で、コーヒーやビールを飲みながら映画を鑑賞できる“シネマカフェ”だ。足を踏み入れると、そこには映画のワンシーンのような雰囲気が漂っている。地元民はもとより、遠方からもファンがこのレトロな一軒家を目指してやってくる。

ライトに浮かび上がる文字が、上映中であることをそっと告げる。カフェにはバーのようなカウンター席も。好みの椅子に座って、映画の始まりを待つ時間も楽しみたい。

「ここには海も山もある。小さな非日常を味わえる場所で、携帯の電源を切って映画を見て過ごせば、心からくつろげます」

オーナーの長島源さんがこの場所の魅力を静かに語ってくれた。自然豊かな逗子は長島さんの生まれ育った街だ。どんな思いでシネマカフェを始めたのだろう。

世代を超えて、地域に根づく文化を

「自分の生まれた街にカルチャーの発信基地をつくりたいと思ったのがきっかけです。やるからには長く続くものをつくりたい……。そう考えていきついたのが、映画を上映するカフェ。幅広い世代を魅了する映画を切り口にすればコミュニティーは広がるだろう、という思いもありました」

それまで、ミュージシャンにモデル、海の家の立ち上げなど、さまざまな活動をしてきた長島さん。友人たちとともに会社を立ち上げ、9年前にシネマアミーゴをオープン。しかし、はじめは苦労も多かったという。

「映画を上映するには、配給会社から作品をおろしてもらわなくてはなりません。でも当時は、うちのような小規模なところに映画を配給してくれる会社はわずか」

しかも、すでに映画館から人の足が遠のいていた時代。「まったくお客さんが来ませんでした」と、長島さんは当時を振り返って笑う。それでも、あきらめずに続けていたからこそ、口コミで映画を見にくる人は少しずつ増え、取引してくれる配給会社も増えていった。

「5年目からフルタイムで人を雇えるようになって、僕も外の活動に参加できるようになりました」

外の活動というのは、会社をともに運営している仲間が中心になって行っている移動式映画館“シネマキャラバン”のこと。浜辺や丘の上、廃虚など、さまざまな土地に赴いて野外上映を行う活動だというから、想像するだけでわくわくしてくる。長島さんは言う。

「シネマアミーゴはあくまでも拠点。旅好きの僕らは、根なし草にならないよう、“拠点を持った旅人”をコンセプトに活動を続けているんです」

今ではオランダやスペインなど、海外でも上映活動を行うようになった。それができるのも根となる拠点があるからこそ。シネマアミーゴはカルチャーの発信基地として、日々、淡々と映画を上映し続けているのだ。

ここで見られるのは、シネコンでは上映されないようなドキュメンタリーや、日常を描いたほのぼのとした作品が多い。

「そのような、感情が揺さぶられる映画は、小さな空間で見るほうが胸に迫ります。アコースティックギター1本のライブは距離の近い場所で聴くほうが感じ入りやすいでしょう。それと同じかな」

オーナーの思いがこもった海辺のシネマカフェは、ゆったりと時間の流れる場所。仕事のことも雑事も忘れて、非日常のひとときをかみしめられるだろう。

1.古民家をリノベーションした、別荘のようなたたずまい。


2.ワンドリンク付きで映画が楽しめる。コーヒーのほか、逗子のクラフトビール“ヨロッコビール”もある。
3.基本的には新作を上映。半数はドキュメンタリー作品。
4.味のある手書きの黒板。
5.「映画は僕の人生に違う視点を与えてくれた」と話す、オーナーの長島源さん。
6.毎年GWに逗子海岸で行われる「逗子海岸映画祭」では、浜辺に巨大なスクリーンを設置。夜空の下で海風を感じながら映画を楽しめる。