職場では部下を率い、家では子育てに奔走するママ管理職たち。働き方にどんな工夫をしてきたのか。現場で活躍する8社8人にインタビューしました。第2回は高島屋の村田さんと三井物産の伊藤さんと富士通の曽根さんのケースです――。(第2回、全3回)

※本稿は、「プレジデント ウーマン」(2018年4月号)の記事を再編集したものです。

高島屋横浜店のシニアマネジャーの場合

売り場を歩き、にこやかに会話を交わす村田加奈子さん。彼女は高島屋横浜店のシニアマネジャーで、現在は取引先を含め100人以上のスタッフが働く売り場を担当する。

高島屋 横浜店 販売第2部(婦人服)シニアマネジャー兼ストアバイヤー 次長 村田加奈子さん

京都店にいた26歳のころに結婚したが、夫の東京転勤が決まり、翌年関東の店舗へ転勤の希望を出し、今の店に異動になった。43歳で出産するまでは、仕事中心の日々を過ごした。「前例の少ない転勤ができ、自分の好きな仕事をさせてもらっている。だからこそ頑張らなければならないという自分への追い込みがあり、出産はこの年齢になりました」

出産前に夫が再び転勤となり、母子のみの生活に。自宅、保育園、勤務先を徒歩30分圏内にすることで乗り切った。とはいえ、土休日の出勤では、兵庫で単身赴任中の夫に日帰りで戻ってきてもらうこともあった。

自身のキャリアアップについては、事あるごとに悩んできた。そして「会社は自分に何を求めているんだろう」と思い、48歳のとき、社内FA制度を利用。面談ののち、シニアマネジャーに任命された。

「『村田さんはキャリア志向ですね』と言われることがあります。でも、仕事も家庭もあきらめないという気持ちが強いだけです」

▼村田加奈子さんのLIFE CHARTS

三井物産 不動産事業部 事業室長の場合

「建設中のビルがあると、つい見てしまいます」

三井物産 コンシューマービジネス本部 不動産事業部 第一事業室長 伊藤鼓月さん

不動産事業部の管理職として働く伊藤鼓月さん。32歳で今の部署に異動し、現在は、本店で国内不動産部門の室長として活躍する。一方で、小学3年生の娘を持つママでもある。

「管理職と子育ての両立でもっとも大変なことは、“時間の使い方”ですね。オンとオフの切り替えにはメリハリをつけ、子どもとの時間は仕事を忘れてしっかり向き合います」

会社では日中、会議や打ち合わせに追われて自分の作業ができないため、どうしても家に仕事を持ち帰ることになる。そこで伊藤さんは、「モバイルワーク」(テレワーク)制度を使い、子どもの就寝後に自宅でじっくり作業をすることに。

ほかの社内制度もフル活用。「時差出勤」制度は個人で勤務時間をずらせるもの。制度導入前の出勤定時は9時15分だったが、今は9時30分に出勤。子どもを学校に送り出した後の15分間にひと息入れ、仕事モードへ切り替えている。

大変だが、管理職だからこそ得られる楽しさもあると伊藤さん。

「仕事も責任も増えましたが、そのぶん集中力と判断力が鍛えられています」

▼伊藤鼓月さんのLIFE CHARTS

富士通 営業グループの法務部門マネージャーの場合

「長男の出産と同時に、それまでと世界がガラッと変わりましたね」

富士通 金融・社会基盤営業グループ ビジネスマネジメントセンター 契約支援部 マネージャー 曽根妙子さん

営業グループの法務部門のマネージャーとして働き、中学2年生と小学6年生の2人の男児を持つ曽根妙子さん。仕事と子育ての両立にはさまざまな紆余曲折があったという。

「長男のときも大変でしたが、さらに次男を出産したときには、年の近い2児の子育てと夫の海外赴任も重なり、“産後うつ”で体調を崩してしまいました。そのときは、出世や昇格などとても目指していける立場じゃないんだなあと悩みましたね」

テレワーク勤務の活用や、保育園・学童保育に頼りながら過ごし、次男の小学校入学と夫の転職を機に、37歳のとき夫の実家近くに引っ越す。仕事と子育ての両立に理解のある上司に恵まれ、2年後に管理職になったが、ちょうど長男の中学受験のタイミングだった。「慣れない管理職業務と、長男の受験が重なり、また体調を崩してしまいました」

2018年迎えた次男の中学受験では、そのときの反省を活かし、送迎や勉強の内容を見るのは夫、自分は次男のメンタルケアや食事面の対応、というように、役割分担を見直した。

「効率よく物事を進めるためにどうしたらいいか?と常に考えています」

▼曽根妙子さんのLIFE CHARTS