キャリアを変えることはリスクです。決断を後悔するかもしれません。それでも新天地に飛び込んだ女性たちがいます。なぜその一歩を踏み出すことができたのか。連続インタビューをお届けします。今回は、SENSY 取締役CBOの皆川朋子さんのキャリアについて――。

※本稿は、「プレジデントウーマン」(2018年4月号)の掲載記事を再編集したものです。

SENSY 取締役CBO
皆川朋子
さん 40歳 転職2回 留学

英国留学で価値観一変。大手にこだわらず、世を変革する仕事を

大学卒業後、日本IBMに入社。先輩や同僚に恵まれ、順風満帆な社会人生活をスタートさせた皆川さん。仕事に慣れてきた頃、ちょうど会社がコンサルティング会社を買収し、入社4年目にその部門に異動となった。ここで初めて大きな壁が立ちはだかることになる。

(下)バッグは2個持ち。PCや資料はグローブトロッター、化粧ポーチなど小物はロエベに。

「これまでの経験が全く役に立たず、力不足を痛感する日々。クライアントに振り回され、土日も仕事が続いたせいで、電気代が異様に安かったのを覚えています(笑)」

だが「このヘビーな環境を生き抜いたことが良い経験になる」と“超ポジティブ思考”で乗り切り、納得できるクオリティーが出せるようになった。

「でも、1つのことがある程度できると、次に移りたくなる性分で。今度はMBA留学を30歳で決意して、英国に渡りました」

1年間の留学は、皆川さんの価値観を完全に変えた。

「英国では、裕福な家に生まれたり能力が高い人は社会に価値を還元すべきだ、という考え方が普通。働き方も柔軟で、自由にキャリアを変えている人が多い。私も世の中の役に立つことがしたい、他人の価値観を気にせず人生の選択をしたいと思いました」

帰国後すぐに日本IBMを退職。大手企業という枠にとらわれず、ベンチャー事業型の戦略コンサルティングファームに入社した。と同時に、NPO法人「二枚目の名刺」に初期メンバーとして参画し、やりがいを見いだすようになった。

迷ったときは「譲れないもの」を何度も考え直す

「仕事もNPOの活動も、それぞれ異なる刺激があって面白かったです。ただ、コンサルティングはあくまでもサポートする立場。自分で責任をもって事業に関わりたいという思いが強くなりました」

そして、「AI(人工知能)で人々の生活を幸せにする」というビジョンに引かれ、現在の会社に転職。事業開発の責任者として、会社自体を成長させていく役割を担っている。

「同じことを同じ時間かけてやったとき、新しい経験のインプットが少なくなると物足りなくなって、それが焦りになるタイプ」と自己分析する皆川さんだが、留学も転職もかなり悩んできたという。

「迷ったときは、自分にとって譲れないものを何度も考え直します。おばあちゃんになって振り返ったとき、あのときの決断は当時の自分にできる最良のものだったと思えるようにしたいんです」

28歳:日本IBMビジネスコンサルティングサービスへ
30歳:慣れない仕事に戸惑う日々。横暴なクライアントに振り回されることも
33歳:英ケンブリッジ大学にMBA留学
34歳:コンサルティング会社へ転職。同時期にNPOの活動をスタート
40歳:人工知能ベンチャーに参画。取締役CBOに就任