キャリアを変えることはリスクです。決断を後悔するかもしれません。それでも新天地に飛び込んだ女性たちがいます。なぜその一歩を踏み出すことができたのか。連続インタビューをお届けします。今回は、ワイン講師の紫貴あきさんのキャリアについて――。

※本稿は、「プレジデントウーマン」(2018年4月号)の掲載記事を再編集したものです。

ワイン講師、ワインコーディネーター
紫貴(しだか)あき
さん 39歳 転職1回 留学 独立

最年少で難関資格を取得、募集した日に"即完売"の講師

紫貴さんのクラスはソムリエ試験対策コースが特に人気。募集した日に満席になるという。

紫貴さんが社会に出たのは、就職氷河期。求人が多かったSE職で大手企業に入ったが、終電帰りが当たり前という過酷な環境。1年もたたずに体調を崩し、次に選んだのがワイン専門の輸入商社だった。当時はワインブーム。その奥深い世界に興味を持ち、「もっと知識を深めたい」と米カリフォルニアへの留学を決意したのが28歳のとき。5年勤めたその商社は退職することにした。

「将来に対する不安はありました。だけど1度しかない人生。ワクワクすることに挑戦したいという気持ちが勝りました」

留学と同時に、ワインの最上位の国際資格であるWSET(R)Diplomaの受験勉強を開始。日本人最年少の30歳で合格を果たす。

「解答は英語の論述式。現地の語学学校で論文の書き方を訓練していたことがアドバンテージになりました。当時は1日10時間から15時間は勉強していましたね。大好きなワインを飲むのも、週3日だけに。月1回のワイナリー巡りが唯一のリフレッシュでした」

帰国後は、留学前から通っていたワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」の誘いをうけ、講師として登壇。深い知識に裏打ちされた明快な語り口が評判となり、紫貴さんは瞬く間に人気講師に。

3年前に結婚、人生の幸福度は「今が最高」

だが土日も祝日も休みなく働く日が続くと、紫貴さんの胸にふと疑問がよぎる。「仕事だけの人生、幸せなのかな?」

結婚を考え始めたのが34歳のとき。クリスチャンの紫貴さんは、教会で友人として出会った医療関係の男性と36歳で結婚する。しかし、夫の家(埼玉県)に引っ越すと通勤時間が1時間延び、家庭と仕事の両立に悩むことになる。「私の帰りが遅くなっても、せめて朝ご飯だけは一緒に食べたい」と夫と話し合い、都内へ引っ越すことに。ワインの勉強時間も増え、女性で初めてワインアドバイザー全国選手権大会(日本ソムリエ協会主催)で優勝した。

「子どもを持つことは体質的にあきらめています。夫も職業柄、不妊治療の苦労をよくわかっているので、無理せず、2人で過ごす時間を楽しもうねと話しています」

22歳:大手企業にSEとして入社するも、残業続きで体調を崩す
23歳:ワインブームの影響をうけ、ワイン専門輸入商社に転職
29歳:ワインスクールの講座を受け持ち、たちまち人気講師に
36歳:郊外にある夫の家に引っ越すとともに通勤のストレスが増加
37歳:都内に引っ越したおかげで、勉強時間が確保できるように