毎日行うことの中に「苦手なこと」を少しだけ含めてみよう

この連載もいよいよ最終回。ビジネスパーソンを数字に強くさせる専門家として、最後にあなたにお伝えしなければならないことがあります。それは、数字に強くなる「魔法のような裏ワザは存在しない」ということです。

では、どうすれば人は苦手なものを克服できるのか。私の答えは、「毎日やることの中に、少しだけ苦手な行為を含める」ことです。

たとえばあなたの苦手な食材がセロリだとして、いきなり丸ごとかじりなさいと言われても絶対に無理でしょう。でも、スープや炒め物の中に少しだけ入れて、それを食べることを毎日の習慣にしていけば、少しずつ苦手意識が薄れていくかもしれません。「毎日する行為の中に、少しだけ苦手な行為を含める」とはそういうことです。

では数字に対する苦手意識を克服し、数字で考え、実際に使うためには具体的に何をすればいいか。さっそく説明します。

経済指標や株価のページを一生懸命読む必要なし!

あなたは新聞を読んでいますか? すべてのページに目を通さなくてもいいですし、経済指標や株価のページを一生懸命読む必要もありません(もちろん興味があれば気にすることはとても良いことです)。

数字に強くなりたい人は、1面や自分の仕事に関連しそうなページだけでいいので、必ず目を通すようにしてみてください。そして、その中にグラフや表が入っている記事があったら、ぜひそのグラフや表から先に読んでみてください。そこに書かれているデータからどんなことが言えるのか、記事の内容はどんな内容なのかを推測してから、クイズの答え合わせのように記事の文章を読んでみるのです。

最初はなかなか答えが合わないかもしれませんが、続けていくといずれあなたの推測と記事の内容が一致するときがきます。これが意外とうれしいものなのです。苦手だったはずの数字を読み解くことで、ほんの小さな「ときめき」が得られる瞬間です。

このようにクイズ感覚で新聞を読むことを続けていくと、少しずつ数字を見て考えることが習慣化されます。

新聞でなくとも、ウェブサイトのニュース記事などでもよいでしょう。経済成長率、就職内定率、大手企業の決算、さまざまなテーマの調査結果、その気になればいくらでも「数字」は記事の中に見つけられます。

それをテーマに「つまりどういうことだろう?」「なぜそんな数字になるのだろう?」「もし私がこのデータをプレゼンするなら、こんなグラフで見せようか」といったことを考えてみてください。それが自然にできるようになったら、もうあなたは「数字が苦手」から卒業できたということ。自信を持って、この連載でお伝えしたテクニックを仕事で使ってみてください。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。またどこかでお会いしましょう。

深沢真太郎
ビジネス数学の専門家。BMコンサルティング株式会社代表取締役/多摩大学非常勤講師。『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(日本実業出版社)など著書多数。人生のテーマは「数字が苦手な人を0(ゼロ)にする」。