優秀なビジネスパーソンは、概して「数字」に強い。どうすれば数字に強くなれるのだろうか。「ビジネス数学」の専門家である深沢真太郎氏は「『割り算』を使うと、数字がイメージしやすくなる」とアドバイスする。その具体的な方法とは――。

「ピンとくる数字」は割り算でつくろう

あなたは仕事をしていて、「割り算」をどんなときに使っているでしょうか。

たとえば利益率を知るときや、前年比や増加率を計算するときなども実は割り算をしています。あるいは会社の飲み会を仕事と定義するなら(?)、そのときの「ワリカン」も割り算ですね。しかし、私たちビジネスパーソンにはこれらよりもずっと大事な割り算があることをご存じでしょうか。それは、伝わりやすい数字に変換するときに使う割り算です。

どういうことか、簡単な算数で説明します。「時速3.6kmは秒速◯mである」という問題があったとします。さて、あなたはどうやって正解を導きますか。まず3.6を1000倍し、その後に60で割り算し、さらに60で割り算することで「秒速1m」という正解に辿り着くでしょう。

そこで注目したいのは、「時速3.6km」と「秒速1m」ではどちらのほうがあなたにとって実感を伴った理解になるか、簡単に言えば「ピンとくるか」ということです。おそらくほとんどの人が後者と答えるでしょう。その理由は、1秒も1mも極めてイメージしやすく、実際にどれくらいかを測れる概念だからです。

▼「年間140億個」のすごさの伝え方

数字はコミュニケーションにおいて重要な役割を担います。具体的な数字で伝えることで相手に一瞬で伝わる場面はあなたも何度か体験したことがあるはずです。しかし、せっかく数字で伝えても、相手がその数字にピンとこなければ伝わりません。

ならばあなたがコミュニケーションで数字を使うときに気をつけるべきことは、その数字が相手がピンとくる単位になっているかどうか。ノーであれば数字の変換をすることです。

簡単な具体例で理解を深めます。たとえば全世界で年間140億個も売れた商品があったとします。140億個という数字はあまりに大きすぎて、いまいちピンとこない数字ではないでしょうか。世界の人口が約70億人であることを考えれば、「全世界で年間1人あたり2個買った商品」という伝え方もできるでしょう。

そこで考えます。たとえばあなたが年間に2個買うものはどんなものでしょうか。私は年に2着ほどスーツを新調しますが、世界中のすべての人が私と同じことをするとイメージすると、私にとってはこの140億個という数字が実感を伴った「すごい」になります。使ったのは言うまでもなく、ただの割り算です。

同じことを伝えているのに伝わり方が違う。コミュニケーションにおいては、頻繁に起こることです。たとえば、「元カレ」は甘酸っぱい青春の香りがしますが、「元交際相手の男性」は犯罪のにおいがします(あくまで私の主観ですが……)。

同様に、せっかく数字という具体的な言語を使うのであれば、最後のちょっとした“ツメ”まで気を使い、相手がピンとくる数字に変換して伝えてみましょう。

▼ビジネス数学の専門家・深沢真太郎先生のアドバイス
ただ単に数字を並べてもピンとこない。相手に伝わるレベルまで数字を割ってみよう!
深沢真太郎
ビジネス数学の専門家。BMコンサルティング株式会社代表取締役、多摩大学非常勤講師。『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(日本実業出版社)など著書多数。人生のテーマは「数字が苦手な人を0(ゼロ)にする」。