「マインドフルネス」という考え方を取り入れることで、大きく人生が変わった人がいます。ANAホールディングスの小野澤綾花さんは「瞑想なんて怪しい」と思っていた一人。しかしジムでのレッスンのあと、その効果を実感したといいます。プレジデントウーマン11月号の特集「心が強くなるマインドフルネス」より、実例を紹介します――。
(左)ANAホールディングス デジタル・デザイン・ラボ イノベーションリサーチャー 小野澤 綾花さん(右)通って4年目のジム「フィールサイクル」。6時に起床したらそのままジムへ。1時間ほど汗を流してすっきりしてから出社するのが日課。

瞑想は「怪しい」とすら感じていた

初めてマインドフルネスに出合ったときは、全然ピンとこなかったんです。失礼な話なのですが、瞑想と聞いてむしろ、怪しさを感じたほどでした。「イメージで判断するのはよくないな」と、ガイドアプリで瞑想を体験してみたものの、やはりしっくりこなくて。翌日にはアプリを削除して、すっかり忘れていました。

再会は、それから2カ月後のこと。出社前の朝活として通っている、「フィールサイクル」というジムでの出来事でした。普段と変わらずレッスンに臨んだのですが、その日はなぜか集中力が途切れることなく、大量の汗もかいてとても気持ちが良かったんです。

4年間通っていて初めての感覚でした。さらに、レッスン後のラップアップで、「ここにいる誰かが欠けても、今日の45分間はありませんでした。ここへ来たらぜひ、いましかマインドフルネスを取り入れてない時間を味わってください。そして、その時間をつくる一員としてまた参加してください」と、インストラクターの方がおっしゃいました。

これまで何度も耳にしていたはずなのに、覚えていなかったことにも驚きましたが、その言葉を聞いた瞬間、「ああ、マインドフルネスってこういう感じなんじゃないかな」というひらめきがありました。

以前は、マインドフルネス=瞑想というイメージしかなかったけれど、それだけじゃない。私にとってのマインドフルネスとは、ジムで体を動かすことなのかもしれない。「いま、目の前に集中することができれば、方法は何だっていいんだ」と理解できてから、一気に虜になりました。

 

マインドフルネスに出合うまで

▼大学卒業後
ANA東京空港支店旅客部配属。

▼2013年4月
ANAエアポートサービス旅客サービス部出向、2年後に同部国際業務課に異動。

▼2016年7月
新規事業を手掛けるANAホールディングス デジタル・デザイン・ラボに異動。

▼2016年10月
ジムで集中しているとき、「マインドフルネス」を実感として味わう。そこから、興味を持って調べ始める。

▼2017年7月
荻野淳也さんを招いて社内勉強会を実施。

▼2017年9月
国際的な初の禅イベント「Zen2.0」でANAのブースを企画。ボランティアスタッフとしても関わる。

問題が起きても状況に振り回されない

仕事にも良い影響が出ています。たとえば何か問題が起きたときに、焦ってともかく対処しようとするのではなく、「問題が起きていること。その問題に対して抱いている、焦りなどの感情」をまず認識します。全体を捉えたうえで、次に何をすべきかを考えられるようになり、状況に振り回されないようになりました。

マインドフルネスを取り入れてやめたこと
●ながらスマホ
友人と一緒にいるときも何気なくスマホを見ていたが、目の前のことにしっかり向き合うようになったという。
●自分の気持ちにふたをすること

ビジネスのアイデアにもつながっています。「乗ると元気になるヒコーキ」という、私たちのチームで企画している新プロジェクトに、マインドフルネスを取り入れたいと思っています。

お客さまが飛行機に搭乗される目的は、到着地でのアクティビティー。到着地でのパフォーマンスを最大限に発揮するために、「移動中に疲れない」を超えて、「ANAに乗ったら元気になった」と感じてもらいたい。世の中から遮断される機内だからこそできることは何だろう……。マインドフルネスとエアラインの組み合わせで実現できることを、模索している最中です。

その一環で、9月に鎌倉の建長寺で行われたイベント「Zen2.0」へも、会社として協賛し、機内シートを使って瞑想を体験していただきました。その反応を直に感じて、大きな収穫になりました。

サービス実現に向けて、やるべきことが山積みですが、企画者である私が一番ワクワクしています。そして、「乗ると元気になるヒコーキ」をお披露目できる日を、待ち遠しく思っています。

小野澤さんの瞑想タイム
(1)月1、2回、鎌倉の寺で坐禅
(2)毎朝出社前、ジム(フィールサイクル)に通う