コンカー「口頭の説明と資料をめくるスピードを一致させる」

「資料作成に魂をこめる」ことで知られるマッキンゼー出身の三村真宗社長も、「成田さん(マーケティング部 成田美津子さん)の資料は直すところがない」と太鼓判を押す。

「1枚にあれもこれもと詰め込みすぎると、人間は耳で説明を聞かず、目で書いてあることを読み始めるんです。口頭の説明の速度と資料をめくるスピードが一致するくらいがベストなバランスですね」(成田さん)

今回のような調査レポートをつくるときは、エクセルのアンケート結果を「Tableau(タブロー)」というデータ分析ツールにかけ、インパクトのある数字を拾って内容を決める。

数字に間違いがあってはいけないので、数字を自分で入力することはせず、すべてエクセルからパワーポイントにコピー&ペーストするという成田さん。いくら見た目がきれいでも、間違いがあっては台無し。この正確を期す姿勢、見習いたい。

▼プレゼンテーションクリエイター 前田鎌利さんが資料を判定

◎ピカピカOK資料

【good!】「ひと月あたり何分」よりも一生の合計時間で表現
社員が使った経費を簡単に精算できる「経費精算システム」のよさを訴えるべく、平均的なビジネスパーソンがいかに経費精算に時間をとられているかを調査して発表したデータですね。「ひと月あたり48分」ではなく「生涯で52日」と言い換えることで、インパクトの強い表現に。
【good!】カスケードグラフで全体と部分の関係が明らかに
下の棒グラフは右端の赤い部分が全体を、青や緑が部分を表しています。このように階段状に内訳を示したグラフを「カスケードグラフ」といいます。一口に経費精算といってもその作業はいくつかに分解できるので、どれに時間がかかっているか一目瞭然。
【good!】視認性の高いフォントを使用
プレゼン資料に線の細い明朝体は不向き。老眼の人、視力の悪い人には線が消えて見えることも。遠くからでも文字を認識しやすいゴシック系のフォントが基本です。成田さんは「メイリオ」というフォントを使っているのでとても見やすいですね。文字の大きさも適切です。

×あるあるNG資料

【bad!】大事なことを文字だけで説明している
成田さんが「52日/100日」「144万円/279万円」と数字を丸で囲んだり文字を大きくしたりして強調しているのに対し、こちらはフラットな文字だけ。数字を赤にしたのがせめてもの工夫ですが、素っ気ない印象は拭えません。
【bad!】経費精算作業のうち糊付けのことしかわからない
成田さんの資料では経費精算作業全体のうち、伝票に領収書を貼る「糊(のり)付け」がどれだけの割合を占めるかという「全体と部分」の関係が明白でした。しかしこちらは糊付けのことしか言っていない。もし社内プレゼンなら、間違いなく突っ込まれます。
【bad!】イラストを使うと幼稚な印象になる
文具やパソコンに向かうビジネスパーソンのイラストが使われていますが、このような「かわいい系」のイラストは特に幼稚な印象を与えがち。フリー素材の安っぽさも気になります。ビジュアル要素がほしいなら写真のほうがいいでしょう。

<成田さんの資料づくりのコツ>
▼インフォグラフィックを参考にする
情報を視覚化する手法として海外で盛んに使われている「インフォグラフィック」。スタイリッシュかつわかりやすい情報の見せ方は資料を洗練された雰囲気にしてくれる。「infographics」で画像検索すると、海外のインフォグラフィックの例がたくさん出てくるので、見せ方や色使いの参考に。
▼使わないなんてもったいない!「マスター」機能をフル活用
パワーポイントに備わっているものの、大半の人が使いこなせていない「マスター」機能。あらかじめデザインされたテンプレートのことだが、ある程度見やすくデザインされているので、ゼロからつくり上げるよりも楽。コーポレートカラーなどよく使う色を覚えさせておけば、いちいち指定せずに済む。
▼コーポレートカラー+強調の赤で色味を統一
コンカーではコーポレートカラーを薄い青、紺、緑、オレンジと決めているので、プレゼン資料も基本的にそれらの色を使う。強調したいところには赤を加えるが、ほかの色は極力使わないことでスッキリした資料に。一つの資料のなかでいろいろな強調色を使っては、ポイントがぼやけて混乱のもと。
成田美津子
コンカー マーケティング部。マーケティング活動の状況をモニタリング・分析し、施策提案などを行う。その正確な分析力と的確な提案力が現社から認められ、2015年から現職。
 
前田鎌利
監修プレゼンテーションクリエイター/書家。ソフトバンク在職中、孫正義氏の後継者育成機関の第1期生に選考され1位を獲得。孫氏のプレゼン資料づくりも数多く担当した。著書の『社内プレゼンの資料作成術』シリーズは11万部を超えるベストセラー。