今や会議に不可欠なファシリテーションですが、苦手意識を持つ人も多いはず。そんな人たちのために、ファシリテーターの谷益美さんによる、スキル習得から極意までを一挙公開します。さあ、名ファシリテーターを目指しましょう!

ファシリテーションとは、会議や対話の場において、そこに参加する人たちの意見を引き出し、まとめるコミュニケーションスキルです。と同時に、複数の相手に対して気持ちよく話をさせるムードメーカーとしての役割も担います。

コーチングが1対1で行うものに対し、ファシリテーションは複数人を扱うコミュニケーションスキル。扱う人数が増えてくると必然的に人間関係が影響し、そこに参加する人たちにとって話しやすい場をつくる環境整備をする必要もあるのです。

ではどうしたらうまくファシリテーションできるようになるのでしょう。ファシリテーションには大きく分けて2つのスキルが必要です。1つめは「対話」のスキル、2つめは「書く」スキルです。

はじめに対話のスキルについてご説明します。ファシリテーションは、単なる司会進行とは違います。場を活性化し、意見を引き出すには、ファシリテーターがシンプルで効果的な質問をすることが重要です。

例えば、発言内容をもっと広げたい場合は「ほかには?」という言葉を、深めたい場合には「具体的には?」「例えば?」といった言葉を使うことで、発言が促され、ぐっと話しやすくなるんです。

さらにこのときに意識してほしいのが聞く態度です。イメージとしてはインタビュアーのようにイキイキとした表情で、相づちやうなずき、復唱などを適宜入れる。たったそれだけで話し手にとって話しやすい環境となり、場の雰囲気も良くなります。日常会話でも意識してみると練習になりますし、相手との関係も良いものになりますよ。

次に書くスキルです。苦手意識を持つ方が多いですが、ポイントを押さえ回を重ねればうまくなります。

谷さん流“ファシリテーション七つ道具”/(1)3色のホワイトボード用カラーペン(2)12色ペン(3)付箋(4)養生テープ(どんな場所でも模造紙などを貼ることができる)(5)ノート(6)4色ボールペン(7)名刺サイズのメモ用紙。意見やアイデア、感想などを書くのに最適!

初心者へのおすすめは、自分のためではなく“誰かのためのノートをとる”こと。このときのポイントは、完璧を求めないことです。会議の場にいなかった人に対して、口頭説明とともにそのノートを見せ、会議の内容が伝わればOK。これを繰り返し実践することで、誰もが見やすいノートを書けるようになります。

ノートをうまく書けるようになったらホワイトボードを活用しましょう。複数の参加者がいる場合、意見や情報を可視化できるホワイトボードは必須アイテム。いきなり会議中に書きはじめるのはハードルが高いので、まずは事前に、ある程度のフレームを書いておくとよいですね(写真参照)。

 

ファシリテーションとは、場の意見をまとめるだけのスキルではありません。会議を“キライ”から“好き”に、“長くまとまらない”から“短くまとまる”会議へとスイッチさせることもできるスキルなのです。みなさんには、谷流ミーティングファシリテーションの5つの極意をお伝えしましょう。

1つめは、会議時間の管理、議題や目的などを明確にし「会議全体をデザイン」すること。2つめは、傾聴、質問などを駆使し、得たい成果や目的などを短時間でわかりやすく引き出し、それを理解してもらう「対話のスキル」。3つめは、出された意見をまとめて、皆で共有し取り扱えるよう「見える化(=可視化)」すること。4つめは、決定者や役割分担、判断基準など、あらかじめ「決め方を決めておく」こと。5つめは、会議上はうまくいっても、実際の現場ではうまくいかないこともあるので「長期目線で考える」こと。この5つのポイントをマスターし、繰り返すことで、会議が短くまとまり、みんなが会議を好きになるような、良い循環へとつながります。

会議だけではありません。ファシリテーションがうまくなると聞き上手、まとめ上手になり、ロジカルに考えられるようにもなり、対話力、対人力、仕事力のすべてがアップします。結果、自然と人間関係も円滑になり、チームが活性化し、ビジネスもうまくいくという良いスパイラルが生まれます。

身につければ、友人や恋人、家族とのコミュニケーションもより良いものに変わります。仕事だけでなく、プライベートも充実させるファシリテーションの可能性は無限大。みなさんも、ぜひ実践してみてくださいね!

▼会議を“見える化”、ホワイトボードはこう使う!

POINT 1:日付と時間を入れる
いつ何を話し合ったか一目でわかる。写真に撮って議事録代わりに。

POINT 2:会議のテーマを書く
会議のゴールを可視化することで、話し合うべきことが整理される。

POINT 3:アジェンダにはチェックボックスを
その日に話し合うことをあらかじめ書き出し、それに沿って会議を進めれば話が脱線することも回避できる。

POINT 4:色分け・箇条書きでわかりや
話のポイントをつかみ、できるだけ端的な言葉で。ホワイトボード用のペンは何色かを用意。色分けすることで見やすくなる。

POINT 5:時にはイラストを用いて
簡単なイラストがあると伝わりやすく、和む。

POINT 6:本筋と別の話は線を引いて欄外に書き残す
「あ、そういえば、あれについても話さなくちゃ!」など脱線しそうなテーマに適用。

POINT 7:いっぱいになっても消さずに裏面へ
複数枚のホワイトボードを用意するのがベスト!