いつのまにか、約7000億円が3兆円にまで膨らんでいた2020年東京オリンピック・パラリンピックの予算。現在、小池百合子都知事のもとで見直しが進むが、一般企業なら「予算内」で事業を行うことは当たり前のこと。なぜ、予算がここまで膨らんだのでしょうか。

地方自治体の政策に詳しい宇都宮大学准教授の三田妃路佳(ひろか)さんによると、予算が膨らんだ原因は「オリンピックに固有のものと、都政の問題とに分けられる」。

責任者不在のオリンピック団体、チェックが甘い都民

小池百合子都知事と都議会は対立から協力関係に。(写真=Aflo)

はじめに、オリンピック固有の問題について見てみましょう。

まず、オリンピックを招致するためにはお金がかからないほうがいいので、もともと予算を低めに見積もっていました。しかし実際に計画を進めると建設費がかさみ、さらに施設のメンテナンスにかかる維持費を考慮していなかったことも、予算を膨らませた要因です。

では、その予算の責任者は? 20年の東京大会には東京都、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会、日本オリンピック委員会(JOC)、日本パラリンピック委員会(JPC)という4つの団体がかかわっており、「誰が最高責任者なのか」はあいまいで、予算が増えようが誰の責任にもならない状態でした。

もちろん、誰もチェックしていなかったわけではありませんが、「がんばっている日本選手のためなんだから」と言われてしまうと、予算超過への疑問の声を上げにくかったことも、オリンピックというイベント固有の原因だったようです。

一方、都の事情で予算が膨らんだ大きな原因として、三田さんは有権者の都政への無関心を挙げます。

「まず、都はほかの地方自治体とは、ケタ違いに予算が潤沢で、経済的な危機意識が希薄だったのではないか」(三田さん)。オリンピックを監視するための都民のオンブズマンさえ機能していませんでした。また、知事の交代が相次ぎ、知事不在の空白期間に予算のチェックが行われなかったこともあります。さらに、「都という大きな組織ゆえに、知事が任期途中で解任されたり、実務に熱心でない知事が選ばれても、これまで都政がまわっていたので、都民が都政全般に無関心になっていたのでしょう」と三田さん。

税金を無駄に使わせない! 私たちにできることって?

ここへきて小池知事が選出されたのは、有権者がついに「都政を改革したい!」という意思を表明したわけです。

これからこうした事態が起きないよう私たちにできることは? 三田さんは知事選に必ず行くということ以外に、「都議選や市(区)議選でも政策を見て選ぶこと」とアドバイス。まじめに政策に取り組む人が選ばれれば、意欲のある人が立候補するようになり、好循環が生まれるはずです。

そして何より重要なのは、「政治を株主の感覚でチェックすること」と三田さんは力説。国や自治体の予算は自分の財布から出ている税金でまかなわれていると思うと、無関心ではいられない!