白、赤、ロゼ、スパークリング……。国やブドウの産地によってもさまざまあるワイン。その栄養価について、考えたことがありますか? 実は女性にうれしい効果が詰まっているんです! 会食、女子会、晩酌のときに、ちょっと意識して飲んでみてください。
ワインが体に効くって本当ですか?
▼赤ワインのポリフェノールは、美肌に効果あり
赤ワインは、黒ブドウの果汁とともに、皮、種も一緒に発酵させる。その皮と種に多く含まれているのが、赤ワインに豊富な成分として知られる“ポリフェノール”だ。どんな効果があるのだろう。
「抗酸化作用を持っているため、シミやしわの予防になります。血流を増加する作用もあり、くすみにつながる老廃物を流す働きもあります」
と説明するのは医師でワインスクール講師の青木晃さん。近年は、ポリフェノールの一種、“レスベラトロール”の効果も注目されている。「女性ホルモンのバランスを整える作用があることが明らかになりつつある」というから、私たちの味方!
ところで、ブドウジュースはどうなのだろう。原料が同じだから、有効成分が同様にあるのでは?
「ジュースにもブドウ自体にもポリフェノールは含まれていますが、含有量は赤ワインがずば抜けています。醸造する過程でアルコールが抽出剤となって、有効成分が引き出されるためです」
▼白ワインの有機酸が腸内環境をリセット
白ワインは、基本的に、ブドウの皮と種を入れず、果汁のみを発酵させるので、ポリフェノール含有量は少ない。代わりに、腸内の環境を整える有機酸が、全般的に飲み口がまろやかな赤ワインよりも多く含まれている。
「現代人は、加工食品の取りすぎやストレスで、腸内環境を支配している自律神経が乱れがち。そうなると腸のなかで悪玉菌が増え、便秘の原因になります。そこで効果を発揮するのが有機酸。アルコールとの相乗効果ですぐれた殺菌能力を発揮して、悪玉菌をやっつけてくれるんです」
白ワインが便秘解消に役立つなんてうれしい限り。将来的には、大腸がんの予防も期待できるという。ほかに、むくみ予防に効果的なカリウムが多いのも魅力。
「飲んだ次の日はむくんで嫌、という人にぴったりのお酒ですね」
▼ピンク色のロゼはどうなんですか?
ロゼワインには、赤ワインに似た造り方の「セニエ法」、白ワインと同じように造る「直接圧搾法」がある。セニエ法のロゼは、ポリフェノールが白ワインよりは多め。直接圧搾法のロゼは、声高に語れるほど有機酸は多くない。美しい色には癒やされるが、効果は曖昧!?
ワインの飲みすぎで太りますか?
▼含まれる糖質は、日本酒やビールよりも低い
ワインは、発酵中にブドウの糖分がアルコールに変わることで酒となり、発酵後に残った糖分の量で甘口か辛口かが決まる。
そのため、ワインの糖分量は“残糖量”と呼ぶが、栄養学的に言えば「糖質量に置き換えられる」とワインスクール講師の青木晃さん。ワインにおける糖質の成分は、ほぼ糖分だからだ。
グラフ1は文部科学省作成の日本食品標準成分表のデータをもとに作ったもの。ご覧の通り、原料を発酵させて造る“醸造酒”で、ワインの糖質は比較的低い。「でも実際には」と、青木さん。
「グラフ1は、日本で甘いワインが全盛だった頃の値。甘口のデザートワインをのぞけば、非発泡性ワインは辛口が多く、100ml中の糖質は0.06~0.2gです」
銘柄によって差はあるが、白、赤、ロゼ、いずれもだいぶ低いという。一方、デザートワインの糖質は「100ml中9gほどなので、飲む量に注意を」とのアドバイス。
▼スパークリングワインは、ラベルで残糖量をチェック
ワインは、残糖量が多いほど甘さが強く、糖質量も高くなる。少なければ、その逆だ。
スパークリングワインの場合は、最後の工程で甘いシロップやリキュールを添加し、その量で残糖量が決まる。欧州では、スパークリングワインに甘口か辛口かの分類が決められていて、ラベルに表示することが義務付けられている。だから、表示を見れば、残糖量が一目瞭然。表1が一覧だ。
「甘めのスパークリングワインが好きな女性は多いですよね。でも、糖質を気にするなら、100ml中の残糖量が0.6g未満のレベルがおすすめ。よく見るのは、残糖量が1.2g未満の“Brut”ですが、乾杯で1杯飲むくらいなら気にする必要はありません」
▼炭酸水が食べすぎ予防にも
ワインに限らず、お酒を飲むときはあらかじめ水も用意して、交互に飲むのがベスト。お酒を飲むと血中アルコール濃度が上昇しやすくなるため、水を飲んで薄める作戦だ。そうすれば、酔いにくくなる。肝臓にも負担がかかりにくい。水は水でも、青木先生がダイエット中の人に推すのは、炭酸水。「ビールと同じでおなかが膨れるから、食べる量をセーブできる」という。なるほど納得! さっそく今日から実践したい。
体に優しい飲み方、ありますか?
▼アルコール度数低めで肝臓に優しく
体に優しい飲み方として、ワインスクール講師の青木晃さんが真っ先に教えてくれたのはアルコール度数のこと。
「度数が高いほど肝臓に負担はかかります。それに、1%違うだけでも酔い方が違うものです。翌日に残したくなければ、少しでも低めのものを選ぶのが賢明」
次に、くぎを刺されたのは飲む量。アルコール度数の低いものを選んだとしても、量を飲みすぎては意味がない。適量が大事だ。
「人によって、アルコールの分解酵素の量は異なるので、適量も人それぞれですが、飲める女性の場合でグラス2杯(240ml)程度。ボトル3分の1弱の量です」
飲み会やパーティーなど、気にせず飲みたいときもある。でも、普段は適量を心がけよう。
▼合わせるおつまみも、体にいいものを
ワイン用のブドウ品種は数多く、それぞれ味や成分の含有量が異なる。青木さんに、ポリフェノール含有量が高い赤ワインと有機酸を多く含む白ワインの品種を教わった。さらに、それぞれの味に合う体にいいおつまみも!
まずは赤ワイン。カベルネ・ソーヴィニヨンは、カカオポリフェノール含有量の高いビターチョコレートを合わせてダブルの効果を。ネッビオーロは、整腸作用に優れたドライプルーンが最適だ。
次に白ワイン。リースリングは、食物繊維が取れる野菜スティックと発酵食品のチーズで、腸内環境リセット力を高めて。ソーヴィニヨン・ブランは、自律神経に働きかける香りのグレープフルーツが合う。ぜひ、お試しを。
>>ワインとおつまみ
赤 )カベルネ・ソーヴィニヨン × ビターチョコレート
赤 )ネッビオーロ × ドライプルーン
白 )リースリング × 野菜スティックとチーズ
白 )ソーヴィニヨン・ブラン × グレープフルーツ
▼翌日に残りにくい自然派ワインのチョイスも
最近、よく耳にする「自然派ワイン」。定義はないが、ブドウ栽培から醸造にいたるまで、なるべく化学的なものに頼らずに造られたものがそう呼ばれている。
ワイン造りでは、酸化を防ぐ添加物を使うのが普通。それが、ボトルの裏ラベルに載っている「酸化防止剤(亜硫酸塩)」だ。自然派ワインは、頭痛を起こす原因では? と考えられている酸化防止剤を控えたものが多く、「翌日に残りにくい」と愛好家は多い。
なお、自然派の白ワインには、赤ワイン同様に皮を一緒に醸した、茶色やオレンジ色のものもある。
「このタイプはポリフェノールの含有量が多く、アンチエイジングなどのポテンシャルは高いです」(ワインスクール講師・青木晃さん)
ナチュラルな味も魅力だ。
▼分析しながら脳を刺激!?
普段、同じことの繰り返しをしているだけだと、脳は怠惰になってしまうもの。そこで有効なのが、ワインを分析しながら味わうこと。どんな色や香りなのか、甘味は強いのか、酸味はどうか、たとえるならイチゴっぽい味? 感覚を研ぎ澄まし、微妙な味を探りながら飲むことで、脳は刺激されて元気になる。そう、ワインは脳のアンチエイジングにも役立つのです!
横浜クリニック院長。予防医学であるアンチエイジング医学を専門とする医師。ワインのアンチエイジング効果を研究する過程で、日本ソムリエ協会認定のワインエキスパートの資格も取得。現在、ワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」の講師も務める。