世界85カ国以上で親しまれているオーストラリアの人気ワイン「ローズマウント」。その造り手とともに、和食とローズマウントの相性を探る試飲会に参加してきました。試飲会では貴重なヴィンテージワインも登場し……。

チリや南アフリカなど第三世界のワインが定着して久しいが、安定して人気なのがオーストラリアワインです。世界85カ国以上で楽しまれ、その味に定評があるオーストラリアの人気ワインブランドが「ローズマウント」。今年6月から、ローズマウントの日本での販売権を獲得した国分グループは、同社のチーフ・ワインメーカーであるランダル・コミンズ氏を日本に招き、和食とローズマウントの相性を楽しむ試飲会を行いました。

本記事ではランダル・コミンズ氏のインタビューを交えつつ、試飲会の様子をお伝えします。果たして、オーストラリアの人気ワインと、和食の相性は……?

ローズマウントのワイン。左から「シラーズ・カベルネ」「シャルドネ・セミヨン」「シラーズ」「シャルドネ」「バルモラル・シラー」「G.S.M」
 

ローズマウントってどんなワイン?

ローズマウントのルーツは、1864年にさかのぼります。カール・ヴルストというドイツ移民が、ニューサウス・ウェールズ州の“ローズマウント”という名の土地を買ったのが始まり。ここでは良いブドウが育ったのですが、彼の死後、ブドウ園は牧場になってしまいました。その後、現在のローズマウント社のオーナー一族であるオートレー家がこの土地を購入。1974年からワイン造りを始めたのです。目標は、国際的に認められる質の良いワインを造ること。1984年には数々の国際大会で受賞するまでに急成長しました。

1991年にはさらに、南オーストラリア州のマクラーレン・ベールにも土地と醸造所を購入。現在、ローズマウント・エステート社のメインワイナリーとなっています。「マクラーレン・ベールは(南オーストラリアの)アデレードの南にあり、海に面した非常に穏やかな気候の土地。香りの良い、素晴らしい品質のワインが造れるのです」(コミンズ氏)

ローズマウントのワインは「どんなシチュエーションでも、おいしく楽しく飲めるワイン」と話すランダル・コミンズ氏。「日本に来るのは初めて。和食と一緒にワインを飲むのが楽しみだよ」と笑う。

ローズマウントのフィロソフィーは「ワインとは楽しいものであり、またみんなでエンジョイできるものである」なのだそう。「最高級のレストランでの素敵なディナーでも、家で家族や友人と夕食を楽しむときでも、仕事終わりに同僚とでも、あるいは週末に友達と楽しくお昼を食べながら開けるワインとしても。どんなシチュエーションでも楽しめて、美味しく飲めるワインを造っています」とコミンズ氏は話します。

「もう1つ心掛けているのは、ワインは、楽しい時間をよりよくする、手助けする存在であってほしいということ。『昨日、楽しかったね、おいしかったね』というような語られ方をするワインを届けたい。『ワインを飲むために集まろう』は違うと思うのです」(コミンズ氏)

前菜、お造りと合わせたのは軽快なシャルドネ

乾杯しながらいただいた1杯目は「ローズマウント ダイヤモンドラベル ソーヴィニヨン・ブラン  2015」

まず前菜と合わせたのは、「ローズマウント ダイヤモンドラベル ソーヴィニヨン・ブラン  2015」(2100円、以下すべて750mlボトルの希望小売価格、税別)。アデレードヒルズ、マウントセンティンサントなどを中心に、複数のヴィンヤードから取ったブドウをブレンドして造るワインです。

お造りには「ローズマウント ダイヤモンドラベル シャルドネ 2015」(2100円)。こちらは、マクラーレン・ベール、ハンターバレー、ラーモンクリークという3カ所の畑のシャルドネで造ったワインです。「マクラーレンベールはリッチでフルーティーな、ちょっとメロンっぽい味。ハンターバレーはさらにリッチでピーチっぽさのある素晴らしいブドウができるのです。これによって深みを増します。そして、ラーモンクリークの特徴である、グレープフルーツのようなフレーバーで爽やかさを加えています」(コミンズ氏)。このワインのもう1つのポイントが、ほんのり香るオークの風味。「ステンレスタンクと、オーク樽を使い分けています。ステンレスタンクで造るワインのフレッシュさに加えて、ごく軽くオークの風味を付けています。僕たちは『バタフライオーク』と呼んでいます」

コミンズ氏によれば「クラシックスタイルだと、シャルドネはチキンと合わせることが多い。ゆでたカニやエビともすごく合うのでオススメ」とのこと。

先付は小豆胡麻豆腐、ミズダコとレンコンの梅肉和え(左)。マグロ、スズキ、鮎のお造り(右)
 

ダイヤモンドラベルの赤は、どっしりした味の料理と

炊き合わせと「ローズマウント ダイヤモンドラベル ピノ・ノワール 2015」

3本目、炊き合わせ(冬瓜干し貝柱射込み)とともに供されたのは、「ローズマウント ダイヤモンドラベル ピノ・ノワール 2015」(2100円)。口当たりがソフトで、とてもフルーティーな赤ワインです。

「アデレードヒルズ、南オーストラリアの畑が主で、あとは若干、タスマニアの畑のブドウもブレンドしています。これもアーリーリリース(後述)でフレッシュさを出すとともに、オーク樽を使って少しソフトさを出しています。ピノ・ノワールは、クラシックスタイルだと、ダックと合わせますね。だけど、肉やカニなど、いろいろな料理に合わせると面白いワインですよ」(コミンズ氏)

4本目に登場したのは「ローズマウント ダイヤモンドラベル シラーズ 2015」(2100円)。ローズマウントのダイヤモンドラベルといえばシラーズ、というくらい有名な、代名詞的なワインなのだそう。

「ローズマウント ダイヤモンドラベル シラーズ」

「ローズマウントで一番有名なのはこの1本だと思います。かつて、アメリカ全土で一番売れているシラーズはローズマウント、という時代もあったほどです。マクラーレン・ベールとラーモンクリーク、2カ所のブドウを使っています。マクラーレンベールのブドウは香りとリッチさを出し、ラーモンクリークでスパイシーさを足します」

丸なすとアボカドの味噌焼き、イサキの塩焼き、穴子のごぼう揚げ、はも、合いガモなどと合わせていただきましたが、確かに料理に負けないしっかりした味でありながら、あでやかでフレッシュさもある、非常においしいワインです。

次は「ローズマウント GSM グルナッシュ・シラーズ・マタロ 2013」(5000円)。コミンズ氏によると、他のオーストラリアのワイナリーに勤める友人たちの中でも、たくさんのファンがいるのがこのGSMなのだそう。GSMとは、マクラーレンベールのグルナッシュ、シラーズ、ムールヴェードルをブレンドしていることから名付けられたシリーズ名です。今回の試飲会で、筆者がもっともおいしいと思ったのがこのGSM。濃厚でスパイシーなのに、とてもフレッシュです。

「GSMはワイナリー関係者のファンが多いんです。『どれかワインをプレゼントするよ』というと『GSMがいい』とよく言われます(笑)。私自身も自宅用によくこれを買って飲んでいます。ローズマウントのフィロソフィーである“Wine is fun”を最も体現しているワインじゃないかなと思います」(コミンズ氏)

赤ワインと合わせた組肴(くみざかな)は、手前から時計回りに、合いガモ煮込みロース、イサキ酒塩焼、穴子ごぼう揚げ、丸ナスアボカド味噌焼き。

ローズマウントの特徴は、アーリーリリースとオーク樽の使い方

ローズマウント・エステート社のロゴ

ここまでいろいろ飲んでみて思ったのは、「ローズマウントのワインは、どれも味が非常にしっかりくっきりとしているのに、非常にフレッシュで爽やか」ということ。他のワインとどこが違うのかコミンズ氏に尋ねてみたところ、いくつかのポイントを教えてくれました。

ポイントの1つ目は、オーク樽の使い方。オークの風味が強すぎると、ワインが重くなり、また硬さやドライさも増すので、やり過ぎはよくないのだとコミンズ氏は言います。そこでローズマウントでは、オーク樽で仕込んだワインと、ステンレスの樽で仕込んだワインをブレンドし、口当たりが柔らかく飲みやすいワインになるようにしているのだそうです。

もう1つのポイントが「アーリーリリース」。一般的に、ワインを醸造してからボトルに詰めて出荷(リリース)するまで、ワイナリーではワインを寝かせておきます。このタイミングが非常に早いのがローズマウントの特徴なのだそう。

例えば今年の白ワインだと、1月から4月にかけてワインを醸造し、1カ月だけ寝かせて5月にはリリースしてしまうものもあるのだとか。赤ワインも同様で、他のワイナリーでは24カ月、あるいはそれ以上熟成させるところを、ローズマウントでは6カ月程度で熟成を止め、出荷するものが多いそうです。

「アーリーリリースをする理由は、ワインが若いとそれだけフルーツフレーバーが強くなり、よりフレッシュな味を演出できるから。若くてフレッシュなワインだから、いろいろな食事と合わせてバランスが良いんです。和食にも合っているでしょう?」とカミンズ氏は自信を見せます。

また、ローズマウントでは8年前から、すべての商品をコルクからスクリューキャップに移行しているそう。飲む人が開けやすいというだけでなく、バランスがよく爽やかな味わいに貢献しているといいます。「私たちは2001年からスクリューキャップとコルクのボトルとでワインを熟成させて比較するテストをしました。その結果、スクリューキャップはコルクに比べ、熟成がゆっくりだが安定している、という結論に達したのです。コルクが欲しい、という声はいくつかの国では今もあるのですが、テストの結果を受けて、全商品をスクリューキャップに切り替えました」

ローズマウント・エステート社のWebサイト

アーリーリリースが特徴のローズマウントを、20年近く熟成させると……?

「ローズマウント バルモラル シラー 1998」

さて、最後に「今回は特別にこれも飲んでみてもらおうと思って、ワイン博物館から持って来ました」とコミンズ氏が出してくれたのは「ローズマウント バルモラル シラー 1998」。20年近く熟成させたワインです。

「昨年末、博物館にあるワインをすべてテイスティングしました。個人的に、1998年は非常に良い飲み頃だと思います。フルーティーな良さと、熟成した年月の長さがよくマッチしていると自信があり、今回持って来ました。ローズマウントはフレッシュな若いワインを推していますが、熟成できないわけではありません。若くてもいいバランスのワインは、熟成してもいいワインだというのが私の考え。ぜひ飲んでみてください」

飲んでみると、フルーティーさを残しつつもヴィンテージワインらしい複雑でどっしりした味。貴重なワインに感謝しながらいただいたのでした。

「これは面白い、ワインに合う!」と参加者から驚きの声が上がっていたのがこの蕎麦。そばつゆの中に、コーヒーで作った氷を浮かべた氷珈琲蕎麦です。

今回、和食とローズマウントのワインを合わせてみて思ったのは、「フレッシュでやや酸味の強い白ワインと和食は、意外に相性が良い」ということ。特に鮎やマグロのお刺身とソーヴィニヨン・ブランは、想像以上においしい組み合わせ。逆に、ダイヤモンドラベルのシラーズや、GSMといった重めの赤ワインは、もっと濃い味付けの一皿と合わせると、さらに料理とのマリアージュが楽しめそうです。ワインの力強いおいしさに比べると、薄味な懐石料理は上品すぎるのかもしれない、と感じました。

料理ごとにワインを合わせて楽しむことはよくありますが、同じブランドのワインで揃えるということはあまりないと思います。しかし、同じブランドのワインを揃えて飲み比べてみると、造り手の哲学が感じられ、非常に楽しい! 機会があればまたこういう飲み方をしてみたいな、と思う、刺激的な試飲会でした。