保険の選び方に正解はないし、ライフステージが変われば見直しも必要。でも、入りすぎや、逆に足りないなんてことは避けたい。FPの畠中雅子さんプロデュース、“ちょうどいい”6人のモデルケースをご参考に!

CASE1:シングル

●茜さん(34歳)/広告代理店勤務/年収600万円/貯金300万円/賃貸マンション
仕事で忙しい日々を送り、癒やしは休暇を利用した海外旅行。美容やファッションには敏感。化粧品や洋服を買うのが趣味で、ストレス解消法でもある。その結果、あまり貯蓄がなく、保険に入っていないのが悩み。

●シングルは、終身の医療保険さえ入っておけばいい

イラスト=河村ふうこ

シングルで、両親を養っているなどの特殊な事情がない人は、原則として生命保険は不要。

「死亡しても経済的に困窮する遺族はいないわけですから、わざわざ生命保険でお金の準備をしておく必要性がありません」

逆に、入っておくべきなのが医療保険だ。なかでも、終身(一生涯)保障が続くタイプがおすすめだ。

「年を取ると病院のお世話になる可能性が増えるので、医療保険があると安心。とはいえ、健康保険の“高額療養費制度”もありますし、貯金でまかなえないほど医療費がかさむ例はまれなので、最低限の保障で十分です」

茜さんのようにお金を貯めるのが苦手な人は、掛け捨て型よりは、支払った保険料がある程度戻り、貯蓄代わりにもなる保険がおすすめ。医療保険は掛け捨て型が多いが、探せば貯蓄型の商品もあるので、注目してみよう。

●Nice plan
月額:4970円
◎医療保険(入院保険)
月額保険料:4970円
保障期間:終身
払込期間:終身
入院日額:7000円
入院時手術:7万円
70歳時の健康還付給付金:214万7040円

●Pick up
「高額療養費制度」

健康保険組合、国民健康保険等のいずれにもある制度。一定金額以上の医療費を支払った場合、払い戻してもらえる。一般的な所得の人で、上限は1カ月あたり約8万円。つまり、8万円以上支払ったら、超えた分は払い戻される(保険外診療や差額ベッド代は含まず)。

●Check!
「メディカルKit R」(東京海上日動あんしん生命)

掛け捨てで保険料の安い医療保険が多い中、この商品は掛け捨てではなく、入院給付金等の受け取りがなければ、支払った保険料が全額戻ってくる。そのため、茜さんのように貯められない人は、保障を担保しつつ貯蓄代わりにもできる。

CASE2:シングル

●孝子さん(40歳)/ウェブデザイナー(フリーランス)/年収700万円/貯金300万円/持ち家(分譲マンション)
家で仕事をし、家で過ごすのが大好きなインドア派。最近、より居心地の良い住空間を求めてマンションを購入。インテリア雑誌をめくるのが楽しい日々。保障のない自営業なので何らかの備えがほしいと思案中。

●フリーランスは、万が一のための就業不能保険に

イラスト=河村ふうこ

CASE1の、シングルの茜さんと同様、終身の医療保険に加入しておくのは基本。さらに、自営業(フリーランス)で働く人は、会社員とはまた違った視点を持って保険に入らなければならない。

「会社員は会社の健保などに守られるため、もし長期療養が必要になっても、健保から“傷病手当金”などの補助が出て、休業中の収入がゼロにはなりません。さらに、所定の障害を負ったときの『障害年金』もあります。厚生年金に入っている会社員は、国民年金だけの自営業者より年金額は多くなります」

逆に、自営業だとこうした恩恵がなく、病気などで働けなくなると収入がゼロになるリスクも。そのため、病気やケガで長期間(180日以上など)入院したり、退院してもそれまでのように働けなくなったときにお金が出る「就業不能保険」で自衛したい(うつ病などの精神障害が原因の場合は支給対象外となる場合が多いので注意)。

●Nice plan
月額:7998円

◎医療保険(入院保険)
月額保険料:4154円
保障期間:終身
払込期間:60歳
入院日額:5000円
入院時手術:5万円
先進医療保障付き
◎就業不能保険
月額保険料:3844円
保障期間:65歳
払込期間:65歳
就業不能給付金:月額20万円

●Pick up
「障害年金」

障害などで就業不能になったときには公的保障も受けられるので、その後の生活費全部を民間の保険や貯蓄でまかなおうと思わなくても大丈夫。自営業者は国民年金から「障害基礎年金」が出る。会社員は障害基礎年金に加え「障害厚生年金」も。給付条件が細かく決まっており、場合によっては給付されないので注意。

●Check!
「就業不能保険」(ライフネット生命)

就業不能保険は取り扱いが少なく、いい商品も少ない。そんな中でもライフネット生命の商品は保険料が安いのが魅力。

CASE3:子供をもたない夫婦

●琴美さん(34歳)/メーカー勤務/年収400万円(世帯年収は1000万円)/貯金200万円/持ち家/夫(37歳)と同居
社交性を買われて仕事は営業担当。ハードな毎日だが、週末も大抵夫と外出し、アクティブに過ごす。細かいことが苦手でお金の管理はどんぶり勘定。コツコツ貯めるよりは効率的に増やしたくて、運用には興味津々。

●保険で運用したいなら、変額保険がいいかも

イラスト=河村ふうこ

子供をもたない夫婦も、片方が残されたとき暮らしていけないほど低収入な場合を除き、基本的に生命保険は不要。やはり、終身タイプの医療保険のみに夫婦それぞれが加入しておきたい。

「シングルの茜さんにも貯蓄型の医療保険をおすすめしましたが、2人分の保険料で家計を圧迫したくなければ、掛け捨て型を選んでください」

琴美さん夫婦の場合、加えて注目したいのが変額保険だ。

「変額保険は生命保険の一種。多くの生命保険は将来もらえる金額が固定された定額保険ですが、こちらは運用次第で受け取れる金額が変化。いわば投資信託のような性質なので、保険で運用したい人にもおすすめです」

ただし、死亡時の保険金がグンと減る可能性があるのは不安だ。解約返戻金は変動しても、死亡保障の基本金額は固定されているタイプの変額保険を選ぶといいだろう。

●Nice plan
月額:2万6727円

◎医療保険(入院保険)
月額保険料:2935円
保障期間:終身
払込期間:60歳
入院日額:5000円
入院時手術:10万円
先進医療保障付き
◎変額保険(終身型)
月額保険料:8910円
保障期間:終身
払込期間:60歳
死亡保障:500万円
<夫>
◎医療保険(入院保険)
月額保険料:3212円(条件は妻と同じ)
◎変額保険(終身型)
月額保険料:1万1670円(条件は妻と同じ)

●Pick up
「定額保険」と「変額保険」

保険料が掛け捨てのものと、満期金や解約返戻金が戻ってくるものがある。戻ってくるもののうち、保険事故が起こった時点でもらえるお金が決まっているものと、決まっていないものがある。前者を「定額保険」、後者を「変額保険」と呼ぶ。変額保険は、保険会社が集めた保険料を運用するので、給付金が増減する。

●Check!
「医療保険 新CURE」(オリックス生命)
「バリアブルライフ変額保険(終身型)」(ソニー生命)

「新CURE」は保険料が安い掛け捨て型で、保障内容のバランスもよい。ソニー生命の変額保険は、解約返戻金の保証はないが、死亡保障は基本金額を保障。一般の生命保険(今、バンバン売られている低解約返戻金型終身保険)よりも保険料が割安。運用先を選択でき、インフレリスクにも対応できる(預金はインフレに弱いが、株や外国の金融商品にも資産を振り分けておけば、資産の一方的な目減りを予防できる)。

※各保険料は全ケースについて現時点の年齢で加入した場合で算出。年齢や年収、家族構成などの設定を基に、一般的な保険を選択した場合の目安です。