親がうまくバックアップすることで子どもが安定的に勉強できる

子育てをしていると、いくら親が子どものためを思っても、たとえ子どもの出来が悪くても、親が子どもの替わりに勉強や仕事をしてやることはできないのだと思うことがたびたびあります。親子はどうしても別の個体なので、親にできることは、その子なりの道を探して進むようになるまで見守ってやることくらいでしょう。子どもは自分の力で自分の道を切り開いていくしかないのです。子どもの年齢が上がるにつれて世話をする割合は減っていきますが、子どもへの関わり方がだんだん難しくなっていきます。

6月の初旬、4月から浪人生となった長女の予備校の保護者会に参加しました。今回は、予備校の先生や職員の方が話してくれたことをもとに、受験生を持つ親がとるべき態度や行動を考えてみます。

小学校受験は親の受験といわれ、親がいかにがんばるかが受験の成否を分けます。しかし、大学受験は完全に子ども本人の受験。親が関わることはほとんどありません。ところが最近は、親が「うまい形で関わる」ことが、大学受験の成否を決めるのだそうです。親がうまくバックアップすることで子どもが安定して勉強できるのだとか。まったくどこまで子どもに気を使わなくてはならないのかと思います。

「勉強しなさい」という親は、NGパターン

まず、解説してもらった近年の子どもの傾向は、(1)まじめである(2)精神的にもろい(3)歯を食いしばってもやりとげるという世代ではないということ。これを頭に入れて対処する必要がありそうです。バブルを少し感じて育った親世代より、子ども世代はとても堅実な考え方をしていて、将来のこともよく考えています。

NGなのは、予備校(高校・塾など)で勉強してきて疲れているのに、家に帰るとすぐに「勉強したら」「勉強しなさい」といってくる親。親の立場からすると、浪人生(受験生)で寸暇を惜しんで勉強する時期のはずなのに、スマホを1時間近くいじっていたりすると、やはり「勉強しろ」といいたくなります。理想は、「親子で共通の目的を持ち、うっとうしくない程度に見守ってくれる親」なのだそうです。私は、ある程度子どもは自分で考えて勉強しているはずだから、あまり「勉強しろ」とはいわなくなりました。夫が私以上に「勉強しろ」という人なので、私はいわないようにしたという経緯もあります(両親双方からいわれるのは、子どももつらいだろうと思うので)。

長男のときに見るに見かねていっても、親子関係が悪くなるだけだったので、ここは見守り、成績が上がらないときに勉強の仕方をどう見直すかを話し合ったほうが建設的だと考えるようになりました。

日常のなかで、子どもの学業成績や生活態度などで注意したいことも多々ありますが、最近の子どもはひとつを否定されると自分のすべてを否定されたと感じるのだそうで、否定するよりも肯定してあげることのほうが大事なのだそうです。ああ、面倒くさい。

言い回しとしては、「○○でなければならない」という追い込み方をせずに、「○○であるといいな」と逃げ道を用意しつつ伸ばす方向に導くことが望ましいということ。予備校の先生方の気遣いもたいへんだなぁ、と思いました。

ほかの「やる気がなくなる一言」は、「勉強しなさい!」「必死でやれ!」(何もわかっていないのに)、「結果がすべてだ」(追い込む)、「どこでもいいから受かってね」(あまり期待されていない?)、「どうなの○○くんは?」(他人と比較する)、「オレが受験生だった頃は……」(親の自慢話!?)、「もう○月ね」(焦らせる目的!)など。親の言葉には敏感になっている時期なので、注意していきたいですね。

生活リズムの維持と食事の管理は親の出番

具体的に親がやるべきこととしては、親子でお互いの希望や考えを話し合って、目標と夢を共有すること、そのうえで子どもを応援してあげること。志望大学・学部を試験科目を含めて一緒に検討すること(なりたい職業や就きたい仕事なども踏まえたうえで)。

また大事なのが、生活リズムの維持と食事の管理です。特に浪人生は予備校の授業などに合わせて1日の時間管理をしっかりしないと乱れがち。先生からは「朝起きない受験生に勝者はいない」という名言も飛び出しました。これは大いにうなづけること。昼夜逆転ではなかなか効率が上がらないことも多いので、やはり、朝決まった時間に起きて一定の時間には寝るという生活ができるかどうかが大きな鍵となります。朝晩の食事やお弁当などを用意することで、健康面を支えるのも親の役割です。

家で勉強できる環境が整っているかも大事なこと。あまり神経質になる必要はありませんが、テレビの音や生活時間のズレなど、家族は少しだけ気を使ってあげたほうがいいでしょう。

受験生は勉強の時間が増えるので、どうしても座りっぱなしになってしまいます。たまには体操やストレッチをしたり、ウォーキングやジョギングをするなど、身体を動かすことも心掛けましょう。身体を動かすことはストレス発散にもなります。昨年長男が通っていた予備校では、体育の専門の先生が浪人生対象に体操などの身体のメンテナンスを仕方を教えてくれる授業も取り入れられていました。こういう自己管理のノウハウは、その後の人生にもけっこう役立つのではないかと思いました。

大学入学までのスケジュールと費用を考えることで、今のやる気をアップ!

「家ではプレッシャーをかけすぎない、前向きな考え方で励ます」という項目もあります。子どもに対する親の接し方は難しくて、期待しすぎてもプレッシャーになるし、まるで期待していないというのもダメなのです。適度に期待していることを伝えて、前向きに励ますのが理想のようですが、どうにも加減が難しいところです。

ぜひ試していただきたいのが、子どもと一緒に大学入学までの費用のシミュレーションを考えること。お金の話を子どもにすることははばかられるという方もいらっしゃるかもしれませんが、自分の家の経済事情でどこまでお金を出してもらえるか、親はどれだけの経済的な負担をしているかを金額で知ると、勉強ももう少し熱心に取り組むようになるかもしれません。

うちでも娘とこの1年間でかかるだいたいの費用の話をしました。予備校に通うお金が1年間で約70万円。それに夏期講習10万円、冬期講習10万円、大学の受験費用が20万~30万円程度、大学の入学金や1年めの授業料などで約100万円(私立文系の場合)。この2年間で210万~220万円くらいのお金が必要になります。

さっきこの話を娘にしたら、「わかってるよっ!」といいつつ、「わぁ、もう6月の半ばだ。次の模試までにある程度勉強の目途をつけないと……」と焦り始めました。来年2月の受験は先のことのように思えて「まだ6月」と思っていたものが、具体的なお金とスケジュールを確認したことによって、「もう6月」という頭に切り替わったのです。

進路に迷いがある場合ほど、この作業は効果があります。この先の目標を明確にするためにも話し合ってみてください。

保護者会に行くことも子どもへのバックアップのひとつ

今回の保護者会では、「こうして保護者会に来てもらうことも子どもへのバックアップのひとつ」だと教えてもらいました。親が子どもに関心を持っているという姿勢は、このような行動でも子どもに伝わっているものだと。そういうふうに考えれば、できるだけ保護者会などには出席しなくては、と思っています。

なるべく子どもの話に耳を傾け、「うまいサポート」を心掛けて、この1年を乗り切っていきたいと思います。

フリーライター 生島典子(いくしま・のりこ)
投資信託の運用会社、出版社勤務を経て独立し、2004年よりライター・編集者として活動。子育て、家計、住まい、働き方などが主な執筆テーマ。好きなことは、出産と住宅ローン。3人の子どもを助産院で出産した経験あり。