起業。誰もが希望に満ちあふれ事業をスタートする。だが、そこには成功だけがあるのではない。事業につまずいた女性起業家たちの反省から、経営の極意を読み取ろう。
CASE.1:共同経営者との経営感覚、金銭感覚の違いで破綻
●井田美里さん(41歳/仮名)
同年代の女性Sさんと2人でソフト制作会社を設立したが、3年で破綻。「共同代表なのに、お互いをじっくり把握しなかったのが問題」。Sさんとは交流会で出会い、お互いのビジョンが一致。2年間意見を交わしつつ法人設立に至った。
「今思うとお互いの夢を語っていただけにすぎませんでした」。主に井田さんが営業面、実務面はSさんが担った。「仕入れ先からたびたび支払い確認の電話が入るようになったことで発覚しました」。ふたを開けてみると、売り上げはおろか、プールしておいた資本金の一部さえ底をついた状況にがくぜん。原因はSさんの使い込みだった。「いちばんの失敗要因は経理・決済フローの不備。また、金銭感覚の違いなど“人を見抜く力”も経営者には必要だと痛感しました」
会社は清算したが、今も個人的に未払い外注費を少しずつ返済している。
・代表取締役は1人が基本。すべてに責任を持って
・最悪の場合には、責任のなすり合いにも!
CASE.2:社会状況が急変。資金繰りに苦戦し、清算
●赤坂さつきさん(45歳/仮名)
大手広告代理店を経て、投資不動産物件専門情報誌を立ち上げたが、リーマン・ショックにより状況が一変。「国内外の不動産投資熱が一気に冷え込みました。広告出稿は激減。さらに取引先不動産会社の倒産も相次ぎ、メタメタに」。もともと万一のときでも耐えられるほど十分な資本金でスタートしたわけではなく、時代の波に乗って経営していたようだったと振り返る。
「オフィスも一等地のおしゃれなビルに構えるなど、背伸びしすぎました。業績悪化後はスタッフの給料の手当てに奔走。印刷代などの支払いもあり、泣く泣く退社をお願いしました」。
なんとか持ち直そうと奔走するも、経済の冷え込みは続き、会社は清算。「資金繰りもショートし、もう限界でした。万一に備える経営保険に加入していなかったことが敗因です」。現在、広告会社で営業をしながら新事業を模索中だ。
・身の丈をわきまえた起業を
・中小企業共済などに加入し、万一の備えを万全に
CASE.3:いい社長と思われたい気持ちが結果、経営をダメに
●山本朝子さん(38歳/仮名)
大手エステサロンから独立。小規模ながらサロン2店舗を経営するも、半年前に個人サロンへと縮小した。「女性だけの職場のため、雰囲気を悪くしたくないのと同時に、私の中で“いい社長”と思われたい気持ちがあり、厳しく指導できませんでした」。そんな経営者の態度に、スタッフは次第に山本さんを見下すようになる。
「遅刻や勤務中の私語が目立ってきました。客商売ですからすぐに口コミで広がり、経営に影響しました」。それでもスタッフとの関係を改善できぬまま、とうとう縮小を決断。サロン閉鎖を伝えたが、「あっさりと辞めていきました。スタッフを引っ張れない経営者では、サロンの行く末は見えていたのだと思います」。
現在は、接客から経営までひとりでサロンを切り盛りしている。「気持ちがラクになりました。私には個人事業が向いていたのかもしれません」
・経営者と従業員は責任の持ち方が違う。一線を引いた接し方を
・他人の目を意識しすぎない