ビジネスの場では論理的な話し方が重要だというけれど、そもそも“ロジカル”とはどういうことでしょう。ロジカルに話したらどんないいことがあるの? 体系的に解説します!

論理的な話し方3つのポイント

“ロジカルな話し方”を考えるときに、まず大切なのは(1)順番、(2)内容、(3)ノイズの3つに注意することです。(1)は相手が理解しやすい順で話すということ。(2)は、相手にとっての結論と要点を意識して話すこと。そして感情が前に出すぎないように抑制して話す、これが(3)の意味です。この3つのことを心がけると、大きなメリットが2つあります。ひとつは時間短縮。短い時間で効率よく内容を伝えられるため、仕事をスムーズに進めることができます。もうひとつは信頼感の構築です。やりとりに時間をかけなくても、わかってもらえるほうが相手はラク。相手から信頼される人になれるわけです。

その訓練としておすすめなのが、できるだけ違う立場の人と話すこと。ランチは社外の人と行くとか、できるだけ男の人と話すとか。いまは雇用が流動化し、プロジェクトチームで動く仕事が多い時代。どんな人とでも組めるように、意識的にトレーニングをしておくと将来的にも役立つでしょう。

テクニック1:理解しやすい順番で話す

●唐突に自分が伝えたいことから切り出さないで!

聞き手は、いきなり途中から話されてもわからない。(イラスト=Maiko Sembokuya)

たとえば部下が上司に相談するとき、部下はどう切りだそうかと思いつめているわけですが、相談される上司からすると、唐突なことも多い。話しかけるほうは、それが何の話なのか“導入”を用意しておくことが理解しやすさにつながります。「先日の○○さんとの打ち合わせの件ですが」など、入り口としてきっかけになるような話し出しがあれば、相手は頭の中のどの引き出しから出せばよいか、すぐにわかりますよね。まずはここを変えるだけでも印象は全く変わってきます。

そうして話し始めて相手が前向きに話を聞いてくれれば、相手側にも次々と疑問がわいてきます。こちらは聞いている人の頭の中に浮かぶ問いを想像しながら答えていく。そうやって順々に話していくと、相手はすごく聞きやすい。たとえばテレビショッピングでは、ある商品の機能を説明したあとに「でも高いんでしょ」というフレーズが出てきます。そのあと間髪入れずに「高いと思われるかもしれないけれど、この値段なんです」ときて、視聴者はスッキリする。よいサンプルです。

テクニック2:相手にとっての結論と要点を伝える

●自分の要点も、相手には単なる情報の一部なのかも。

話し手と聞き手の結論が違っている。(イラスト=Maiko Sembokuya)

内容面では、結論と要点、この2つを意識しながら話すことが何よりも重要です。「結論から話す」とはよくいいますが、その結論は自分の結論ではなく相手の結論からまず始めるということです。たとえば仕事を依頼するとき。「ギャラは安いし大変なんですけれど……」と、いきなり難点を持ち出す言い方ではなく、「そんなに条件はよくないけれどお願いしたい仕事があります」と言えばいいということです。

要点も、やはり相手にとっての要点ですが、何が要点かがわからなくてうまく伝えられない人が多い。要点というのは判断が変わる情報をさします。たとえば働く女性を調査したい。働きながら子育てする女性に協力してもらいたい。でも予算がないから近所の人を集めてお金をかけずにやる。となると、この企画の要点は働く女性を調査することではなく、お金がかからない調査ということになるわけです。それが相手と共有できていれば、“要点がつかめている”ということになります。

テクニック3:ノイズをカットする

●こみあげてくる思い、それは聞くほうにとっては雑音!?

感情が入っていて聞きたくない。(イラスト=Maiko Sembokuya)

“感情的に話さない”ということは大事。理由は簡単。感情的に話すと、相手は聞きたくなくなるからです。感情的に話す人特有のフレーズで「納得できません」というものがありますが、それは聞く側からすると、どうでもいいことが多い。担当者の納得で仕事の進み具合が変わるなら、任せられないと判断されても仕方ありません。この台詞は使わないほうがいいでしょう。

語気を荒らげたり、気持ちを込めたり、感情的に話すと、一見説得力があるように見えますが、説得力というのは、出来事と解釈があってはじめて生まれるもの。これよりも大きな感情が出てくると、聞いているほうは混乱してしまいます。「取引先の○○さんが怒っています」という出来事があった場合。「その原因として△△を問題視されていると考えられます」、これが解釈です。出来事を伝えて、それに基づいて自分の解釈を説明するのはOK。そこに「非常識だと思いません?」などと感情が交じるのはNGということです。

鶴野充茂
コミュニケーション教育事業・ビーンスター代表。自己演出プロデューサー。1972年生まれ。筑波大学卒、米・コロンビア大学院修了。在英国日本大使館、国連機関、ソニーを経て独立。『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)はベストセラーに。