子供の頃から親しんでいるマンガ。しかし大人になると読み方や面白いと感じるポイントも変わってきます。40代になってハマったマンガについて、働く女性に聞きました。

大人になった今だからこそ良さが分かるマンガ、子供の頃から知っているけど、今読むと新たな良さに気付くマンガ……。「30歳を過ぎてハマったマンガ4選」に続き、今回は40代の働く女性に「40歳を過ぎてハマったマンガ」を聞いてみました。

30~40代ともなれば、10歳程度の年齢差なんてそれほど変わらないのでは? という気もしますが、マンガの選び方に何らかの違いは見られるものなのでしょうか? 早速紹介していきましょう。

「今だからこそ身に染みる! 30歳を過ぎてハマったマンガ4選」

娘に買ってきてもらうのが楽しみだった『ピアノの森』

『ピアノの森』一色まこと(講談社)

「ほとんどマンガは読みませんが、昨年末に発売された完結作(26巻)まで読み続けたのが『ピアノの森』です。もともとは娘に『お母さん、このマンガだけは絶対読んで』と勧められたのですが、かわいらしいタッチで抵抗なく読むことができたんです。

話としては、『森の端』という昔でいう赤線のような地域に生まれ育った美形の主人公、一ノ瀬海(いちのせ・かい)が世界的なピアニストになるまでの姿を描いたものです。野生的で天才肌の海をはじめ、魅力的な登場人物が織り成す壮大なストーリーは、まさに音楽的。でも、“クスリ”と笑える心温まるシーンも多くて、もう、本当に大好きな作品です。

連載終盤ではむしろ私の方が夢中になってしまい、娘に『そろそろあのマンガの発売日じゃない? 買ってきて』とお願いしていました(笑)」(49歳/ケアマネージャー)

一色まことさん作『ピアノの森』は、約17年にわたる連載を続けた作品です。主人公の成長が描かれるとともに、さまざまな年代の人々が登場。読者も年を重ねていく分だけ各場面への共感ポイントが増えて、深く楽しめるものかもしれません。また、子供をある程度まで育てた後にマンガと接すると、主人公よりもその母親など、「見守る」側の立場になって読むこともあるという声もありました。

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森で生まれ育った海と、音楽会のサラブレッド修平の2人を中心に物語は進む。「モーニング」の特設サイトで一部立ち読み可能

「自分もまだまだ……!」と思えるのが逆に嬉しい『東京都北区赤羽』

『東京都北区赤羽』は携帯サイトの連載から始まり、書籍化された。現在は続編の『ウヒョッ! 東京都北区赤羽』を『漫画アクション』(双葉社)で連載中。

『東京都北区赤羽』です。そもそもは、テレビ東京で山田孝之さんが出演している番組を見て、『何、この世界観?』と興味を持ったのがきっかけ。それで、清野とおるさんの原作マンガを読んだところ完全にハマってしまいました。

清野さんが赤羽で次々と遭遇する個性爆発な人々と珍エピソードの連続に、これらが現実に起こったことというのがちょっと信じられませんでしたが、徐々に『なんで私の周りではこういう濃いことが起こらないのだろう…』と残念に思ってしまうほど。

就職とともに上京して以来、東京でだいぶ面白い出来事や人に出会ってきたつもりでしたが、自分はまだまだ……といい意味で思い知らされました」(45歳/服飾デザイナー)

実話ベースだというマンガ『東京都北区赤羽』。キャリアも人生経験も積んだ40代。世間をある程度知ってしまったと思うほどに、“未知との遭遇”はかけがえのない経験になるようです。そういう意味で、40代女性と実録モノのギャグマンガは相性がいいのかも! 「事実は小説よりも奇なり」ということを改めて考えさせられる作品です。

テレビ東京系で放映された「山田孝之の東京都北区赤羽」

結局は「仕事」の話だった? 『失恋ショコラティエ』

『失恋ショコラティエ』水城せとな(小学館)

「チョコレートオタクなので、ショコラティエが主人公と聞いて手に取って読み始めたのが『失恋ショコラティエ』。チョレートの知識を深めるとともに、主人公・爽太とその1つ年上で小悪魔的な『サエコさん』らのやり取りを面白く読みました。

ただ、ちょっとうがった読み方かもしれませんが、若い頃って恋愛においてこういう“から騒ぎ”をやってしまいがちだよなぁとも思って。それよりも、初めは好きな人を振り向かせたいという下心から始めた仕事に、徐々に本気でのめり込んでいく爽太の姿の方が印象的でした。

天職に出合うきっかけって、そんなものかもしれないなぁと、特に仕事に関して考えさせられることがたくさんあったマンガでしたね」(47歳/マナー講師)

少女マンガの一大テーマが「恋愛」。その名残から、成人以降の女性を主要読者に想定したマンガであっても、恋愛が中心的に描かれることはやっぱり多いものです。

ただ、華やかな恋愛模様の裏で、仕事や子育てなど、大人になってリアリティを増す事柄についても触れているマンガは、年齢を問わず女性に支持されるようです。作者は水城せとなさん。

家族全員で読んでます! 『孤独のグルメ』

『孤独のグルメ』久住昌之・谷口ジロー(扶桑社)。初版は1997年。雑誌「SPA!」で不定期連載しており、2015年に2巻が発売された。

「夫、大学生の息子、私でここ数年一緒に読んでいるのが、久住昌之さんの『孤独のグルメ』です。主人公の中年男性が仕事の合間に立ち寄った店で食事をする様子を描くグルメマンガですが、大衆的な町の食堂など、同年代だからこそ分かる気がする渋いチョイスがたまらないです。

もともとは、食べること大好きな夫が単行本を買っていたのですが、テレビドラマ化されて話題になってから私も息子も読むようになるように。東京の店が取り上げられることが多いので、家族3人で舞台となった店に行ったこともあります。

家族3人ともそれぞれに忙しいのですが、夫から出張で見つけた地方の名店や、息子から大学の近くにあるレトロな喫茶店を聞いたりして、それぞれの『孤独のグルメ』を教え合っています」(49歳/マスコミ)

基本的にマンガは1人で読むものですが、家族で1つのマンガを共有し、パートナーや子供とともに楽しむのも素敵なこと。その点、グルメマンガは誰でも身近な「食」がテーマなので、家族で楽しむにはもってこいかもしれません。『孤独のグルメ』の場合は実在するお店が登場するので、実際にお店に行ってみたり、マンガに載っている料理を作ってみたりと楽しみ方もいろいろです。

『孤独のグルメ』ドラマ版は現在Season5まで放映された(テレビ東京系)。人気は海外に飛び火し、台湾でもリメイクされている。

キャリアもプライベートも責任が増して忙しい40代。マンガとの出合ったきっかけも、子供に教えてもらったり、テレビでドラマを見たり、と偶然によるところが多いようです。しかし一度素敵なマンガと出会ったら、これまでの人生経験を生かし、その魅力を多面的に味わう“余裕”があるように感じました。

歳を重ねるごとに微妙に変わっていくマンガ体験。あなたは今、どんなマンガが好きですか?

皆本 類
出版社勤務を経てフリーのライターに。広告案件や企業のオウンドメディアを中心に、女性向けコンテンツ作成を担当。おひとりさま向けウェブマガジンの編集のほか、猫やウェディングに関する雑誌に記事執筆も。