「電力自由化」って、よくわからない!

4月1日、家庭向け電力の自由化がスタートしました。このところ、携帯電話会社やガス会社、石油会社など、さまざまな会社が割引サービスをさかんに宣伝していますね。みなさんはもう、新しい契約を済ませたでしょうか?

わが家はどうかというと、実はまだ、手つかずの状態です。だって、なんだかピンとこないんですもん……電気って目に見えないし……なぜ電話会社やガス会社から電気を買えるの?

「電話線から電気が来るの?」と言ったら、理科系の夫に思いっきりバカにされました。そうは言っても、電気代が安くなるのは見逃せません。それに、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーも選べると聞けば、やはり魅力を感じます。

そこで、電気オンチの私も意を決して、電力自由化で何がどう変わるのか、調べてみることにしました。

自由化はとっくに始まっていた

そもそも、電力の自由化っていったいどういうことなんでしょう?

まずは、電気がどうやってわが家にやってくるのか、順番を考えてみました。電気は火力発電所や水力発電所、原子力発電所などの発電所でつくられ、そこから送電線で運ばれて、私たちはこの電気を購入しています。つまり、(1)発電(=生産)(2)送配電(=流通)(3)小売り(=販売)の3つのステップを経て私たちに電気が届く、ということです。

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家庭に電力が届くしくみ

電気については長い間ずっと、この生産・流通・販売のすべてを、東京電力や関西電力といった各地域にある従来の電力会社が独占していました。電力自由化は、その独占状態が崩れていくということです。電力事業は発電・送電・小売りの3つに分かれ、段階的に自由化されています。

発電については1995年から自由化が始まり、ガス会社や石油会社などのように、独自に発電所を持っている会社もたくさんあります。小売りについては大規模工場やデパートなど大口向けが2000年に自由化され、企業間ではすでに電力の売買が行われています。また、証券取引所のような電力の取引所も存在します。電力自由化は、とっくに始まっていたんですね。

4月1日からの自由化では、私たち一般家庭に向けた電気の小売りが、電力会社以外にも解禁されました。そこで、すでに発電所を持つ会社を始め、携帯電話会社や住宅メーカー、コンビニなど多くの企業が電気の小売りに名乗りを挙げています。私たちは、こうした新電力会社の提案する料金プランを見て、契約する会社を自由に選ぶことができるようになりました。電力会社が競争すれば、電力料金も安くなることが期待されています。

では、こうした新電力会社は、どんな電気を販売するのでしょうか? これは、大きく2つに分かれそうです。発電所を持つ会社は自前の電気を販売し、発電所を持っていない会社は他社から電気を買ってきて販売します。もし自前の発電所で電力が足りない場合は、その分を他社から買って補うことになるでしょう。

電気はどうやってわが家に届く?

さて、電気は電線を通って私たちに届きます。でも、新電力会社は、電柱も電線も持っていません。では、電気はどうやって家まで届くのでしょう?

送電については、今ある設備を利用して、使用料を払うしくみです。従来の電力会社は今後、発電・送電・小売りの3つに分かれますが、このうち送電会社が電柱や電線などの設備を持ち、保守・点検も担当して、使用料を受け取ります。このため、どの電力会社と契約しても、電気は今までと同じ電線を通って、わが家に届きます。この設備使用料はもちろん、私たちの払う電気料金に含まれます。

電力使用量を測る電気メーターは順次、無料で検針不要のスマートメーターに切り替わります。これも、送電会社の設備の一部。新電力会社は送電会社から各家庭の使用量の情報をもらって、利用者に料金を請求します。

発電会社から届けられる電気は、必ず電線を経由します。そこで、送電会社は発電所でつくられる電気の量や使われる電気の量を常に把握して、コントロールする役割を担います。たとえば夏場に電力が足りなくなりそうなとき、発電所に指示して発電量を増やすのは送電会社の仕事です。また、もし新電力会社が必要な電気を集められず不足することがあれば、送電会社が補うと決められています。このため、新電力会社と契約したら電気が足りなくなって停電になる、という事態は起きません。

原子力を使わない電気を選ぶことはできる?

原子力発電は使いたくない、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーを選びたい、という人もいるでしょう。私だって、できればそうしたいと思います。

電力自由化では、そんな選択も可能になります。電力会社によっては、発電の方法や構成割合(電源構成)を公表しているところもあるので、それを見て判断すればいいでしょう。

ただし、太陽光発電でつくられた電気がそのままわが家に届く、ということではありません。どこでつくられた電気も、送電会社に集められて均一化され、みんな一緒に電線を通って運ばれます。どの電力会社と契約しようと、使う電気はみな同じ、ということ。ただ、電気料金は使った分だけ、契約した電力会社に払います。もし再生可能エネルギーを買う人が増えれば、再生可能エネルギーの生産が伸びることになるでしょう。電気料金の安さだけではなく、そんな点に注目して契約先を選ぶことも可能になった、ということです。

これから電力会社をどう選ぶか

では、わが家ではどうするか? 電気料金については価格ドットコムなどの比較サイトでシミュレーションできるので、さっそく試してみました。契約アンペアは50A、プランは従量電灯B、2月の電気使用量は450kWh。家族2人で、使用量は平均よりちょっぴり少なめです。

結果は、最も割安なプランで月平均800円ほど安くなり、最も割高なプランでは月平均3000円ほど高くなるということ。あらら、あんまりトクじゃない!?

「従量電灯B」は一般的なプランですが、基本料金のほか、使った電力量による料金が3段階に分かれていて、使用量が多いほど1kWh当たりの単価が上がるしくみです。このため、使用量が少ない家庭では、割安効果があまり期待できないようです。

また、この比較では、携帯電話会社のプランは軒並み、料金が割高になりました。携帯電話会社やガス会社などは、電気料金そのものより、電気+携帯電話+ネット、電気+ガス、といったセットプランで判断するとよさそうです。また、契約期間2年といった縛りがある場合もあるので、条件をよく確認することは欠かせません。

わが家が今、契約している東京電力のプランや料金は6月に改定される予定です。判断はとりあえずそれを待ってから。今後は、新電力会社の評判や新しいプランも出てくるでしょう。当面は、様子見で行くつもりです。

マネージャーナリスト 有山典子(ありやま・みちこ)
証券系シンクタンク勤務後、専業主婦を経て出版社に再就職。ビジネス書籍や経済誌の編集に携わる。マネー誌「マネープラス」「マネージャパン」編集長を経て独立、フリーでビジネス誌や単行本の編集・執筆を行っている。ファイナンシャルプランナーの資格も持つ。