仕事、家庭生活、お金、親子関係……、さまざまなお悩みに、100冊以上の著作を誇る作家の本田健さんと、PRESIDENT WOMAN Onlineの連載「WOMAN千夜一夜物語」でおなじみのコラムニスト河崎環さんが回答する人生相談、連載第16回は「人のアイデアの扱い方」に関するご相談です

【今回のご相談】
人のアイデアを盗む同僚に腹が立ちます。私は人のアイデアを自分の仕事に使う場合は、「○○さんにアイデアをいただきました」など、言葉を添えるようにしています。しかしそうしていると周囲から「仕事ができない人」と見られてしまうのではないかと不安です。アイデアを盗むのと、出典元を明らかにするのとでは、どちらがよいと思いますか?
人の成果物を見たり、発表を聞いたりして、「あれ? 最初に言い出したの、私なのに……」とモヤッとした気持ちになったことはありませんか。では、人のアイデアを使うという逆の立場になった時、あなたはどのように振る舞いますか?(イラスト=伊野孝行)

神様は見ている。だからアイデアをたくさん出そう!

【本田健さんの回答】

人のアイデアを盗む人は、すぐにバレます。なぜなら、この情報があふれている世界では、みんなが見ているからです。例えば、会社で、同じ課のデスクから備品を盗み続ける人がいるとイメージしてみてください。最初は、ボールペンが数本なくなったくらいで大騒ぎする人はいないでしょうが、ずっとなくなり続けると、さすがに「おかしい!」ということになります。

周りの人のアイデアを盗んでいるあなたの同僚も、何回かうまくいったから味を占めているかもしれませんが、アイデアを盗まれた方は、絶対に忘れていません。そういうことを繰り返していては、その人にいい情報をもっていこうという人はいなくなりますし、疎まれることになります。

そこまで、人は馬鹿ではありません。なので、あなたが他の人からアイデアを借りたと言うことは、とっても素晴らしいと思います。なぜなら、日本人は特に、人のアイデアを盗ることは恥ずかしいと感じる人が多く、他人に花を持たせられる人のことを尊敬するからです。そして、アイデアを盗まれても気にしないくらい、アイデアを量産できる人になってください。余裕を持っている人が、最終的に評価されます。

私が、『●代にしておきたい17のこと』というシリーズで書籍を出版して、爆発的に売れ出した時、同じようなタイトルの書籍がたくさん出版されました。しばらくして、ある雑誌のインタビューで、「本田さんのアイデアを盗んで売れている人がたくさんいますが、どう思いますか?」と聞かれました。

私は、「盗むなんてとんでもない。ヒットする書籍のアイデアを出版界にさしあげたと思っています。それで、何百万冊と本が売れるなら、貢献できたということでとてもうれしいです」と答えました。実際にそう思っていたことを答えただけですが、身にあまる賞賛をいっぱいいただきました。

そして、このシリーズは200万部近くのベストセラーになったのです。まねして同じようなタイトルの書籍を出した著者はたくさんいましたが、誰も、50万部には届きませんでした。やはり、アイデアの神様は、そのアイデアを世の中に出した人にちゃんと微笑むようになっているのです。

ぜひ、アイデアをたくさん出して、それを周りの人から聞いたくらいに言ってあげましょう。みんなあなたのことを好きになり、尊敬してくれるでしょう。

男性回答者プロフィール:本田健(ほんだ・けん)
作家。神戸生まれ。経営コンサルタント、投資家を経て、29歳で育児セミリタイヤ生活に入る。4年の育児生活中に作家になるビジョンを得て、執筆活動をスタートする。「お金と幸せ」をテーマにした1000人規模の講演会、セミナーを全国で開催。インターネットラジオ「本田健の人生相談~Dear Ken~」は2000万ダウンロードを記録。
代表作『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房刊)など、これまでに著書は100冊以上、累計発行部数は680万部を突破。
【本田 健 公式サイト】http://www.aiueoffice.com/

「出典明示&付加価値オン」でデキる女に

【河崎環さんの回答】

アイデアは盗んじゃダメです(笑)。ただ、ニュース記事や論文ならいざ知らず、企画書やクリエイティブな場での発言などで「それ聞いたこと・見たことある」がどこまで許されるのかは、グレーゾーンのまま。なぜなら、引き出しの多い一流の仕事人なら特に、世のさまざまなアイデア、これまでの文化的文脈などは自身の教養体系の中にビルトインされており、それらは自分のフィルターを通し、自分自身の言葉として発されているからです。

その昔、あるミュージシャンの歌詞にベテラン漫画家が「盗作だ」と物申す件がありました。ミュージシャンは「盗作だという意識はなかった。どこかで耳にし、心の中に残っていたフレーズだったのかもしれない」と謝罪していましたが、その通りなのだと思います。今の世の中、ひとは生きてきた道筋でさまざまなソースから情報やアイデアを学び、自分の中に溶け込ませてまた発信する。その時に、元アイデアの引用そのままになっていることの方が、クリエイティブな場面では問題なのです。あなたならではの言い換えや視点のシフト、他の何かと組み合わせるなどの付加価値をのせているかどうか、そこにあなたの仕事の価値があります。

「誰々さんにアイデアをいただきました」と出典を明らかにし、さらに必ず自分らしい付加価値をのせるのが、デキる女の仕事。また、誰の手柄ということにこだわらず、同僚みんなとチームで勝ちを取りに行くという発想も、とても大事ですよ。

女性回答者プロフィール:河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。