仕事、家庭生活、お金、親子関係……、さまざまなお悩みに、100冊以上の著作を誇る作家の本田健さんと、PRESIDENT WOMAN Onlineの連載「WOMAN千夜一夜物語」でおなじみのコラムニスト河崎環さんが回答する人生相談、連載第13回は「上司の言い間違い」に関するご相談です。
上司の言い間違いが多く、困っています。「シミュレーション」を「シュミレーション」、「コピペ(コピー&ペースト)」を「コペピ」といった具合です。何度も耳にするので、たまたま間違えたのではなく覚え間違いをしていると思います。いちいち指摘するのも差し出がましいので控えていますが、一緒に客先に出向くことも多く、上司が口を開く度にひやひやします。指摘した方がいいのでしょうか? また上手な伝え方がありましたら教えてください。
「周りをハッピーにする言い間違い」として距離を縮める
【本田健さんの回答】
おもしろい上司をお持ちですね。不謹慎ながら、思わず笑ってしまいました。私のメンターも、80代なので、ダウンロードを「ダウウンドーロ」と言ったりしてしまいます。私の場合は、人間関係ができているので、大笑いして、その間違いを楽しみます。指摘されたメンターも、その間違いがご自分でも楽しかったようで、2度一緒に笑っていました。
そういうおもしろい間違いは、本人に余裕があれば、笑えるツボで、人間関係がぐっと近くなるきっかけになります。
笑いに関して、私が発見した(というとちょっと大げさですが)人間の心理があります。それは、馬鹿にされて笑われると感じた場合は、そのことに対して不快だったり、怒りを覚えたりします。でも、同じことでも、周りから笑いを取れた、人気者になれたと感じられると、誇らしく、ちょっと得意げな気分になってしまうのです。
あなたが、上司の間違いをダメで恥ずかしいことのように指摘しまうと、相手は怒るか、根に持つ可能性があります。でも、それが楽しい間違いで、周りを喜ばせている、リラックスさせている、かわいくてウケていると感じさせることができたら、「自分って人気者?」と美しく勘違いしてくれます。
そのあたりを上手にやることができれば、お客さんともいいコミュニケーションをとるきっかけになるでしょう。あなたと、上司との距離が縮まるのは間違いありません。すべては、あなたが上司のことを尊敬している、ユーモアのある人だと心から思えるかにかかっています。
それだけ言い間違ってしまう人なので、たぶん、勘違いしてくれるのではないでしょうか(笑)。失敗すると、地雷を踏んで、関係修復が難しくなります。私の言ったことをコピペせずに、自分の言葉で語ってくださいね!
作家。神戸生まれ。経営コンサルタント、投資家を経て、29歳で育児セミリタイヤ生活に入る。4年の育児生活中に作家になるビジョンを得て、執筆活動をスタートする。「お金と幸せ」をテーマにした1000人規模の講演会、セミナーを全国で開催。インターネットラジオ「本田健の人生相談~Dear Ken~」は2000万ダウンロードを記録。
代表作『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房刊)など、これまでに著書は100冊以上、累計発行部数は680万部を突破。
【本田 健 公式サイト】http://www.aiueoffice.com/
さりげなく、もしくは砕けた雰囲気でかわいく伝える
【河崎環さんの回答】
なんて愛らしい上司なのでしょうか。「シュミレーション」はオジサン世代の言い間違いあるあるの代表格ですが、「コペピ」は新しい。オリジナルです。なんともキュートな語感に、むしろ何かの才能を感じます。でも部下としては愛らしいなんて余裕をかましているわけにもいきませんよねぇ。上司のプライドの高さですとか、性格にもよるのですが、そこは上司もいい大人なのですから、正確に話ができないと取引先からの評価が下がってしまい、本人にも不利です。「あの社の◯◯さん、天然だよね(笑)」というのならまだ好意的ですが、仕事ができない印象を与えてしまうのは部下としても避けたいですね。
「指摘するのは差し出がましいので控えている」とのことですが、私なら自分の発言機会に「コピペ」とさりげなく言い直して、上司が気づくかどうかを見ます。たぶんその上司は気づかない性格なのでここまで来てしまったのでしょうが、少なくとも取引先には「この上司は天然であり、部下はちゃんとそれを把握しフォローできている」との印象を与えることはできますね。そして、あまりに目に(耳に?)余るようなら、砕けた雰囲気の時にでも「そういえば部長、差し出がましいようですがコペピ、ではなくて正しくはコピペ、です。ずっと気にはなっていたのですが、申し上げるほどのことじゃないかしらと……」と、チャーミングに伝えると、「えっ? ヤダ~!(衝撃)」とすんなり聞いてもらえるかもしれませんよ。
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。