これまで「女性らしさ」の代名詞として好まれてきたローズより、深呼吸を促し、ネガティブな感情と決別し、リラックスに導くフランキンセンスが最近人気なのだそう。癒やしだけでなく、どこか戦略性を感じませんか?

フランキンセンスが売れている、という現象が単なる一過性のものなのかどうかを判断するのは難しいですが、興味深いと感じるのはフランキンセンスが深い呼吸と関係していることです。(アロマセラピスト 山口由紀さん)

深い呼吸は意識と無意識をつなぎ、柔軟性を失った体や思考を緩めます。リラックスさせて活力を与え、一点に集中した状態へと導くのです。さらに新陳代謝を促す作用もあり、エイジングケアやスキンケアの効果がよくうたわれることも選ばれる理由かもしれません。

【写真上】山口由紀さん【写真下】エッセンシャルオイルボックスいっぱいの精油瓶(山口さん私物)。

オフィスの中で一日中PCに向かいデスクワークをする多くの女性の現状を考えると、キーボード操作で使うのは指先と腕のみで全身は長時間の硬直状態を強いられているわけですから、入力のスピードにつられて呼吸が浅くなりがち。人によっては無意識に息を詰めていることもあり、血行にも影響が出て代謝も悪くなってしまいます。すると、気分も不安定になって悪循環に陥ってしまう。こうした働く女性の環境とフランキンセンスの人気は無関係ではないかもしれません。

仕事の成果には心身の状態が大きく左右します。よりよい成果のために、戦略的にアロマを活用する、アロマストラテジーは潜在的にニーズがあると感じますね。たとえば、プロサッカー選手の長谷部誠さんは著書『心を整える。~勝利をたぐり寄せるための56の習慣』(幻冬舎文庫)の中で寝るまでの1時間の使い方に徹底的にこだわり、そのために実践していることとしてアロマオイルを首筋につけることを挙げています。また、なでしこジャパンのメンバーがコンディションを整えるのにアロマを活用していることはよく知られています。

好きな香りがネガティブな感情や混乱を鎮め、活気を取り戻す作用をもたらすことは彼らアスリートだけでなく、私達も体感していることでしょう。知らず知らずに疲労が蓄積すれば、対人関係に影響が出て、仕事の効率を下げてしまいます。いきいきと自分の力を十分に発揮できるように、戦略的にバイタリティーを上げ、創造力や実行力を高める。

その点でアロマはビジネスにも十分役立つと思います。

山口由紀
IFA認定アロマセラピストAEAJ認定アロマセラピスト/インストラクター。ホリスティックスクールニールズヤードレメディーズのアロマセラピー講師。セルフコンディショニング、コミュニケーション、医療、福祉、教育、芸術表現の場でアロマを活かすことを目指し活動中。

構成=砂塚美穂 撮影=ヒダキトモコ、川口 匠