自分が知らないところで何かが動いているような感じがする。多くの人にとって、社内政治とはそんな不気味な存在かもしれません。百戦錬磨の経営者がスッキリ明快にアドバイスします。(アドバイスしてくれる人:ノンストレス社長 坂野尚子さん)

女性が身につけるべき政治力って?

まず、アピール力ですね。当社は男女合わせて360人ぐらい社員がいるんですけど、やはり男性はアピール力があるなと感じます。

Q:社内の暗黙のルールを知らなかったために失敗したことがある

「自分はこういうことをやっています、こんな力があります」と、とてもうまく表現する。個人差はありますし肌感覚ですが、男性の2人に1人は上司に実績や能力をアピールしているのでは。嫌みなくさらりと言葉で伝えてくれると、仕事を任せるほうも安心して任せられるんですよね。「何も言わなくても上司はきっとわかってくれる」「見ていてくれる」と期待するのは甘いかもしれません。

また過去の自分の失敗から言うと、清濁併せのむ力や状況を見極める力もとても大事だと思います。20代のアナウンサー時代、正攻法で相手にぶつかり、よく玉砕しました。これはおかしいと立ち向かったり、私だったらこうやると指示したり。今思うと未熟でした。当時、自分とは対照的にうまく相手と対話し、結果、思い通りに物事を進める同僚がいて、今思えばあれって政治力。自分の主張を一旦我慢し対話する。一歩引いて二歩進むほうが絶対得なんです。

米国でMBAを取り、管理職の道に進んでからは、取引先になめられないように自分から先に名刺を差し出す、ある程度、認められたら、優しさや気遣いといった女性カードを使うというふうに、良い意味で女性としての自分を意識していました。

坂野尚子さん「『頑張っていれば見ていてくれる』は甘いですよ!」

●政治力だけで出世した男はなぜやっかいか?
かつての職場に、社内政治だけで部門長になった人がいましたが、普段はふんぞり返り、役員が来訪したときだけ奔走する、典型的な「ヒラメ」でした。そういう人は上に気を使いますが部下を育てる気はなくやっかいです。ただ、そういう人が役員になる会社はどうかと思いますが。

●女性管理職30%時代のパワーバランスは?
宴会場に場を移して会議の続きをやるといった慣習は、育児や介護で時間に追われる女性管理職が増えることで消滅するでしょう。男性も育児や介護に参加せざるを得ない時代の流れもあり、ムダなことがなくなっていくはず。20%を超えた時点でおそらく変化を体感できますよ。

坂野尚子(ばんの・なおこ)
ノンストレス社長。国際基督教大学を卒業後、フジテレビアナウンサー、NY特派員を経て、コロンビア大学MBA修得。外資系コンサルを経て起業。1996年「ザ・クイック」(現ノンストレス)を設立。ネイルサロン「ネイルクイック」など74店舗経営。NYにも1店舗開店した。

構成=やまよし子 撮影=市来朋久 アンケート調査=NTTコム オンライン