話が伝わらない、言いたいことが分かってもらえないと、フラストレーションを感じることはありませんか。職場では「物事を分かりやすく説明する」ということが求められますが、伝え方のルールさえ身に付ければ、誰でも説明上手になれるのです。

分かりやすく説明するために必要な3つの力とは?

自分の意見をまとめられない、分かりやすく伝えられないと課題に感じている人が多いようです。調査によると、実に8割以上もの人が「説明が苦手」と感じているという結果もあります。

物事を分かりやすく説明するためには、3つの力が必要です。その3つとは、

1. 整理する力(相手が理解しやすいように情報を整理整頓する力)
2. かみ砕く力(相手が分かる言葉で伝える力)
3. 興味を引く力(相手が積極的に聞きたくなるように情報を編集する力)
です。

職場でのコミュニケーションでは、まず「1.整理する力」が必要です。上司に報告する時、部下に指導する時、情報を整理して伝えなければいけません。

職場で上司に報告をしていたら相手が何だかイライラし始めた、そんな経験はありませんか。原因はあなたの説明の仕方にあるかもしれません。

この「整理する力」を身に付けるためには、何をすればいいのでしょうか? 一般的には、「ロジカル・シンキング(ロジカル・コミュニケーション)」を身に付ければいいと言われます。確かにそれも1つの案です。しかし、それほど難しいことをせずとも、「整理する力」は身に付きます。

多くの情報をコンパクトにまとめて、分かりやすくするためには、伝え方の絶対ルール「テンプレップの法則」を知るだけでOKです。

6つの要素を押さえるだけで伝わる説明に!

テンプレップの法則とは、説明の順序、「この順番で説明すれば、どんなことでも分かりやすくなる」という絶対ルールです。その順番とは、

【最初に】話のテーマ(Theme)を伝える
例:「これからお伝えするのは〇〇についてです」「○○について相談させてください」

【次に】言いたいことの数(Number)を伝える
例:「お伝えしたいことは〇個あります」「ポイントとしては2つです」

【3番目に】話の要点・結論(Point)を伝える
例:「結論から言いますと、お伝えしたいのは××ということです。」

【4番目に】そう言える理由(Reason)を結論の後に付け加える
例:「結論は●●です。なぜかというと……」

【5番目に】結論がイメージできる具体事例(Example)を示す
例:「実際にこんなことがありました」「具体的には、こういう事例があります」

【最後に】結論(Point)を念押しする
例:「以上より、○○についての結論は●●となります」

「テンプレップの法則」とは、

・Theme
・Number
・Point
・Reason
・Example
・Point

これらの6つの要素の頭文字「TNPREP」を取ったものです。この順番で伝えれば、聞き手は分かりやすく理解でき、また話し手は無駄な情報をダラダラと口にしてしまうこともなくなります。

そして特に、説明ベタな人が意識を向けるべきなのは、「テーマ」です。

社会人向けに説明力の研修をしていると、「何のことを話しているか分からないから伝わらない」というケースが驚くほど多いのです。また、一般的には「テーマを前置きせずに、いきなり本題もしくは個々の詳細に入ってしまう」のは、女性により多く見られる傾向と言えます。

せっかく重要な情報を伝えようと思っているのに、テーマを言わないだけで、分かりづらくなり、相手を困惑させたり、イライラさせたりしまうケースが多く、とてももったいなく感じます。

分かりやすく説明するためには、「テンプレップの法則」の順番で話すことが大切です。そして中でも最も重要なのが「テーマ」。「○○について説明します」と話の冒頭で必ず添えるように意識しましょう。

当たり前に話を聞いてもらえると思ってはいないか?

もう1つ、ぜひ知っておいてほしいことがあります。

通常、相手は、皆さんの話を聞く準備ができていないばかりか、その話を聞くこと自体に、合意していません。相手には相手の都合があります。相手がその時間にやろうと思っていたこともあるはずです。

つまり、相手は聞く準備ができておらず、「聞く姿勢」にもなっていないことが多々あります。そんな時に、いきなり話し始めるため、聞いてもらえないのです。ですので、何かを伝える前には、相手の合意をとることを考えます。

ではどうすればいいか? 「確認する」のです。

「これから○○について話したいのですが、よろしいでしょうか?」
「いま、営業戦略について相談させていただけますか?」

相手の携帯に電話をかけた時に、「今、よろしいでしょうか?」と尋ねる人は多いですね。それと同じ雰囲気で、テーマを伝えた後に、相手に確認をとる、合意をもらうべきです。

会議で発言する時も同じです。ビジネスでは、自分が求められていることについて伝えなければいけません。テーマを伝えればそれでいいということではなく、さらにそのテーマが求められているかの確認が必要です。「これから今回のトラブルについて、その背景からお伝えしたいのですが、テーマとして合致していますか?」という具合です。

この確認の段階を踏むことで、相手が求めていることとのすり合わせができ、「よく分からないことを、長々と話している人」になる危険性が下げられます。ぜひトライしてみてください。

木暮太一(こぐれ・たいち)
一般社団法人 教育コミュニケーション協会 代表。
学生時代から難しいことを簡単に説明することに定評があり、大学時代に自作で作った経済学の解説本が学内で爆発的にヒット。独自に磨いてきた「わかりやすく説明する」ノウハウに基づき、2013年に教育コミュニケーション協会を設立、「説明力養成講座」「マーケティング説明力養成講座」「キッズ作文トレーナー養成講座」で教え始める。現在、経済ジャーナリストとしてテレビ等メディアでの経済ニュース解説を行うほか、企業・大学・団体向けに多くの講演活動を行っている。