欧米に行くより距離が近く、予算も安く英語が学べるフィリピン短期英語留学をレポートしている本連載。今回は企業派遣で4週間セブ島に留学した、39歳の女性に話を聞きました。
英語を社内公用語化する企業が増えている。とはいえ、英語が得意な日本人はま だまだ少数派。そうした企業では英語のレッスンやテストを社内で受けられるようにするなど、社員へのサポートを行っているが、中には社員を海外に短期留学させる企業もある。
今回から2回にわたり、働きながらフィリピン英語留学を体験した女性の留学生活の様子を詳しく紹介する。どんなカリキュラムで勉強し、どんなメリットがあったのか。授業以外の過ごし方や、そしてなにより、気になる英語力はどれくらい伸びたのか……?
「QQ イングリッシュ」 ITパーク校に4週間留学
■IT系ベンチャー企業勤務(東京)39歳・独身、伊藤知香さんの場合
ソフトウェアの開発とクラウドサービスを提供するベンチャー企業の管理部経理担当副部長として、約9年間働いてきた伊藤知香さん。伊藤さんが勤務する企業は、「グローバルなプログラミング言語を使いこなすには英語の取得が必須」という理由で、2016年秋をめどに“社内総英語化”を目標に掲げ、2年前から全社を挙げて社員の英語力向上に取り組んできた。
海外からの留学生をインターンシップで受け入れたり、新規採用に当たって英語力を条件にした結果、英語を流暢に操る新入社員と、英語が苦手な古参社員に分かれてしまったそうだ。
「帰国子女の社長がTOEICで990点(満点)を取るほど英語が堪能なこともあり、社長自らが社員の英語力アップに積極的に取り組みました。まずは数年前から、会社が費用を負担するかたちでオンライン英会話の受講が推奨され、1年半ほど前から、社員をフィリピン英語留学に派遣し始めました」
エンジニアを皮切りに、開発部門の社員が1人ずつ順番に4週間ずつ留学したところ、開発部では英語オンリーでコミュニケーションが成り立つほど英語力が向上した。続いて各部署の部長・副部長クラスがひと通り留学したところで、バックオフィス部門にも英語が必要と判断され、副部長の伊藤さんに白羽の矢が立った。
平日は猛勉強。週末はスパで癒やし。オトナ留学を満喫
ところが、4年制大学で中国語を専攻した伊藤さんは、英語に苦手意識があったと言う。留学前に受験したTOEICのスコアは400点に届かなかった。「私には、国際関係の仕事に従事し、イタリア人男性と結婚して現在はガーナで働く妹がいます。妹を訪ねてスイスやイギリスへ行ったり、東南アジアを旅したり、海外旅行の経験はそれなりにありますが、英語にはずっとコンプレックスを感じていました」。多くの日本人がそう思うように、正しい文法と発音で話せなければ恥ずかしいと思い込んでいたのだ。
「そんな理由で、会社から派遣されて英語の勉強ができるというチャンスをもらえた時は、本当にありがたかったです」。留学先は、会社が業務提携している「QQ イングリッシュ」ITパーク校。当校の詳細は本連載第2回「ビジネスにも親子留学にも対応。セブ島で学ぶ英国発・英語教授法『カランメソッド』」に詳しいが、伊藤さんの会社では既に10名以上の社員が留学を経験していて、事前にリアルなクチコミ情報を収集できたので、留学するにあたって不安はほとんど感じなかったそうだ。
寮では1人部屋で生活し、授業は50分×8コマのコースを受講した。マンツーマン6コマとグループレッスン2コマで、マンツーマンの内容はカランメソッド(フルセンテンスの反復メソッド)が3コマと最新ニュース、トピックを設定した英会話、ビジネス英語。2~4人のグループレッスンは台湾人がクラスメイトだった。「反復が中心で、頭の中で日本語から英語に置き換えるヒマのないカランメソッドは私に合っていたので、途中から授業数を増やしました。先生との相性もよかったと思います」
寮に戻って毎晩の復習も欠かさなかった。「勉強を優先しつつも、大人の女性として体調を整えたり、リフレッシュする時間も大切にしていました」と伊藤さん。おいしいものを食べ歩くのが大好きなので、食事は学校のカフェテリアを利用するだけでなく、朝はスターバックス、ランチや夕食は外食にも気軽に出かけていた。市内の中心部に位置するITパーク校は、大型ショッピングモールにもアクセスしやすいのだ。
週末にはお気に入りのスパに行き、トリートメントで疲れを癒していた。「フィリピンは、おしゃれなレストランやスパがとてもリーズナブル。あまりお金をかけずにセレブ気分を味わいたいオトナ女子に、ぜひお薦めしたい留学先です」
リスニング力とコミュニケーション能力の向上は予想以上!
今回留学した成果は、「リスニング力のアップとコミュニケーション能力の向上に集約できる」と、伊藤さんは話す。実は、出発前にはフィリピン留学生活をこんなにエンジョイできるとは思っていなかった。「この年齢(39歳)ですし、きっと若い生徒さんには溶け込めない。英語も話せないから、現地の人とのコミュニケーションも難しいし、友達はできないはず。私は業務で行くのだから、勉学に専念して、週末は寮で勉強していようと、日本から大量に参考書を持ち込みました。量ってみたら12キロもあったんですよ(笑)」
けれどもこの予想は、いい意味で裏切られた。2週目を過ぎたあたりから、リスニングの力がついて相手の話が分かり、英語で会話できるようになると、韓国や台湾からの留学生とコミュニケーションが生まれた。
英語でコミュニケーションを取れるようになると、それが自信につながったのか、なぜか日本人とのコミュニケーションまで楽しくなるという、自分でもびっくりするような結果につながった。「20代の男の子、初対面の同世代の女性、40代の韓国人男性というグループでビーチリゾートへ週末トリップに出かけるなんて、日本にいたら想像もつかないシチュエーションです」。日本では出会えなかった異なる世代・業種の留学仲間とは、帰国後も交流が続いている。
4週間のセブ島短期留学+カランメソッドで、リスニング力とコミュニケーション能力に自信が持てるまでになった伊藤さん。広がった人脈と英語力を生かして、現在は次に活躍するステージを模索しているという。
次回は「QQ イングリッシュ」シーフロント校に4週間留学した、山本紀子さん(仮名)の例を紹介する。
年間150日ほど海外に滞在し、その土地に根ざしたフードカルチャーをメインに、独自の視点からやわからな語り口で綴られる紀行文を雑誌やウェブサイトに寄稿。これまで訪ずれた国は50カ国ほど。女性を中心とした地元の人たちとの交流から生まれる“ものがたり”のあるレポートに定評がある。旅と食にまつわる本のコレクターでもある。現在、朝日新聞デジタル&Wで「世界美食紀行」、産経ニュースほかで「江藤詩文の世界鉄道旅」を連載中。著書に電子書籍『ほろ酔い鉄子の世界鉄道~乗っ旅、食べ旅~』シリーズ全3巻(小学館)。
【世界美食紀行】http://www.asahi.com/and_w/sekaibisyoku_list.html
【江藤詩文の世界鉄道旅】http://www.sankei.com/premium/topics/premium-27164-t1.html