20代、30代が抱える漠然としたお金にまつわる不安。筆者、ライフネット生命保険・代表取締役会長兼CEOの出口治明さんは本書で、自身の人生哲学を織り交ぜながら、貯めるだけのお金術ではなく、自分への投資も考えたお金との積極的なつきあい方を諭します。本書を足がかりに「お金」について考え始めませんか?

『働く君に伝えたい「お金」の教養』は、ライフネット生命会長の出口治明さんが20代から30代の若者向けに、お金との積極的なつきあい方を対話形式で説いた本です。本を企画し、出口さんに問いを投げたのは、20代の書籍編集者・天野潤平さん。結婚や子育て、介護や年金など、先行き不透明な不安を抱えていた天野さんは、常々考えていた「お金」にまつわる思いを、本書で出口さんにぶつけました。

ライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長兼CEO 出口治明さん 

出口さんといえば、生命保険界に革命をもたらした、言わずと知れたお金のプロ。「同じお金を使って同じ経験を積むのなら、少しでも若いほうがいい」と言う出口さんは、自分自身の経験を踏まえ、若者の等身大の不安や疑問に答えていきます。

出口さんの人生哲学がちりばめられた言葉には、20代、30代のみならず、大人世代もドキリとする「お金」の真髄が隠されています。

本記事ではまず、担当編集者・天野さんが本書の生まれたいきさつを紹介。続いて出口さん自身が、PRESIDENT WOMAN Online読者のために「お金」にまつわるメッセージを伝えます。

20代の私が持つ「不安」から生まれた“お金づきあい”の本
担当編集者:ポプラ社  企画編集部 天野潤平さん

「いまの収入では結婚できても子どもは持てないかもかもしれない」
「将来、年金ってあてになるの?」
「定年までにいくら貯めておけば安心なのだろう」
「投資の本をよく見かけるけど、はじめたほうがいいのかな」
「保険って複雑そう。そもそも入る必要あるの?」

本書は、20代の私が持つ「不安」から生まれました。ライフネット生命の出口会長の知見の広さと深さはこれまでの著書を通して知っていましたし、若者のために還暦で生命保険会社を起業した行動力には尊敬の念を抱いておりました。出口さんなら若者のフトコロ事情にも詳しいし、歴史と世界、両軸からお金を語ってくれる。不安も解消されて、一生お金に困らない知恵も手に入る。本もできるし一石二鳥、いや一石三鳥だ!

『働く君に伝えたい「お金」の教養』(出口治明著/ポプラ社刊)

……と、半ばよこしまな気持ちからこの企画は始まりました。ときには「出口さんは逃げ切り世代だからそんなことが言えるんです」と、無礼なことを口走ったこともありましたが、それでも笑顔を絶やさず、データとファクトをもって徹底的に不安を叩き潰してくれました。本書は、出口さんから教わったお金の不安に対抗するための答えを、対話形式で、5つの講義としてまとめています。受講科目は「知る」「使う」「貯める」「殖やす」「稼ぐ」。読み進めるたびに、「お金」の教養がしっかり身についていく構成になっています。

本書をつくるまで、私はなんとなくお金を垂れ流し、「このままでいいのかな」と、なんとなく不安になっていました。でも、出口さんの講義を受けた今だからこそ言えるのは、「このままでいいわけがない!」ということ。今、真剣にお金に向き合っておかないと、残りの人生絶対に後悔する。なぜなら、第2講「使う」編にあるとおり、「お金の使い方を考えることは、自分が何を楽しいと思い何を大切にし、どんな人間になりたいかを自問自答すること」だから。

私たちは、お金の定義など、テスト用の知識は教わりますが、肝心の「お金づきあい」については教わらないまま大人になります。出口さんはそんな私たちに、困難な社会で生き抜くために必要な武器=「お金リテラシー」を授けてくれています。

「お金づきあい」は社会人にとって必修科目。今のうちに身につけておきましょう。

20代、30代の若者に、僕が一番伝えたいメッセージ
ライフネット生命保険 代表取締役会長兼CEO 出口治明さん

「保険料を半分にするから、安心して赤ちゃんを産み育ててほしい」
「若い人が心おきなく人生にチャレンジできるよう、安くて、分りやすくて、便利な生命保険をつくりたい」

僕はそんな思いを持ち、いわゆる「定年」とされる還暦を過ぎてから、ライフネット生命保険を開業しました。開業後は、意識的に若い世代の声を聞くべく、SNSでメールアドレスを公開し、講演に呼ばれれば都合がつく限り足を運び、次世代の「生の声」に耳を傾けてきました。

そんなある日のこと。1人の若者が僕のもとを訪ねてきました。彼はまだ20代、希望に満ちた年代のはずなのに、ずいぶん深刻な顔をしています。聞けば、将来やお金のことが不安なのだそうです。

・今の日本は少子高齢化で人口が減り続けていて、経済が急成長する気配がない。
・平均寿命が延びているので、退職して給与がもらえなくなってからの人生も長い。
・年金支給年令は引き上げられているし、正社員でも一生安泰とは言えなくなった。

要素だけを並べれば、彼が不安になるのも仕方がないように思えます。多くの若者も、ある程度彼と似たような不安を共有しているのではないでしょうか。

でも、僕は思ったのです。若者たちは、「こんな時代に生まれたから仕方がない」と、不安に怯えながらこの先ずっと生きていかなければならないのだろうか。そんなわけがない、と。

こうして、20代、30代の若者が、お金の不安から脱し、楽しく自由に生きていけるようにとの思いを込めて「お金の講義」が始まりました。

出口流「お金づきあい」2つのポイントを大公開

では、この講義では何が学べるのでしょう。貯蓄の目安や投資すべき銘柄を知ることは、ある程度実生活で役には立ちます。しかし、その知識は他には応用が効きません。ですので、この講義では小手先のノウハウの習得をゴールには掲げませんでした。

では、若者に本当に必要な知恵とは何か。それは、みなさんがオジサンやオバサンになっても使える、一生モノの「お金リテラシー」であり、年収200万円でも1000万円でも考え方を変える必要のない、不変の「お金の原理原則」です。

本書では、お金をとっかかりにして、政治、経済、歴史、国際社会など、多角的なテーマを取り上げています。社会や時代が変われば、お金の常識も変わるからです。高度成長時代とは違う日本の現状を正確に把握して初めて、今を生きるみなさんにとっての「お金づきあい」というものが見えてくるのです。

講義のゴールは2つ。

(1)お金のことで死ぬまで不安に思うことなく、楽しく生きていけるようになること。
(2)お金に支配されることなく、お金を支配できるようになること。

それを達成するために、5つの受講科目を設けました。一歩一歩、学んでいきましょう。そして、分らない点、質問したい点があれば、気軽に僕のアドレスまで連絡をください(宛先:hal.deguchi.d@gmail.com)。

みなさんにはこの先60年、70年と続く人生の最後の最後まで、自由に、楽しく、果敢にチャレンジしながら生きてほしい。この本には、これからの日本をつくる20代、30代の若者に、僕が一番伝えたいメッセージが詰まっています。