アジアで英語を公用語とする国のひとつ、フィリピンでの英語留学がここ数年、ホットだという。有給休暇を利用して短期集中で学びたいビジネスパーソン、学校の長期休暇に一緒に学びたい親子……そんな人たちに朗報なフィリピン留学レポートを、フード&トラベルジャーナリストの江藤詩文さんがお届けします。

第1回「有給休暇で英語留学!フィリピンの英語学校体験記」で紹介した通り、フィリピンで日本人が最も多く渡航する留学先・セブ島では、日系の英語学校「QQ イングリッシュ」に在籍した。「QQ イングリッシュ」は、バイク便の会社が経営する一風変わった成り立ちの学校で、基本的な英会話を中心としたレッスンの他、ビジネスシーンに特化したり、「TOEIC」や「IELTS」といった試験対策にフォーカスするなど、さまざまなカリキュラムが用意されている。

効果を実感「カランメソッド」

【写真上】フィリピン人英語講師の大半は女性。授業は和やかな雰囲気で行われる。【写真下】「カランメソッド」を専門とする講師はティーチングスキルも高い。

中でも、実際に留学を経験した生徒たちが効果を実感していたのが、「カランメソッド」というイギリスで開発された方法だ。これは、講師が繰り返す質問に、生徒が間髪入れずにフォーマットにのっとったフルセンテンスの英文で即答するという反復トレーニング方法で、「QQ イングリッシュ」はカランスクールの正式認定校になっている。

私の場合は、日本語でさえも話すスピードがゆっくりしているので、講師が超ハイスピードで次々と繰り出す質問に、日本語で考えるスキもなく講師と同じ速度で答え続けなければならない1コマ50分間の授業は、まるで早口言葉のようで、慣れるまでは苦労した。担当講師によると、最終的にどんな英語を話したいか、明確なイメージを持つことが大切で、私のように仕事相手と話すことが多いなら、意思をフルセンテンスで伝えるほうがエレガントだという。

留学前までは、英語では「イエスかノーか」「AかBかCか」といった意思を明らかにして、正確に伝えることが大切だと考えていた。そのため、特に急かされたり即レスが必要な場合には、「イエス!(ノー!)」とか「Aで!」と言っていたのだ。そんな私の話し方を「率直かつ明快で伝わりやすい」と言ってくれる講師もいたが、カランメソッドでは、「ビジネスシーンでは子供っぽい」と厳しい指摘を受けた。

ビジネスも親子留学も。対応可能な2つの立地を検証

「QQ イングリッシュ」はセブ島内で、ビジネス街に位置する「ITパーク校」と、2015年4月にオープンした新校舎で、ビーチに面した「シーフロント校」の2つの拠点を構えている。

【写真上】「ITパーク校」のあるITパークのエントランス。【写真下】寮と一体型の「シーフロント校」。元リゾートホテルのプールサイドは居心地がよく、生徒たちの憩いの場になっている。

「ITパーク校」は、セキュリティ対策がなされた経済開発特区のITパーク内にあるため治安がよく、周囲には外資系企業が入居する高層ビルが並んでいる。学校はビル群の1つ、18階建ての7階から10階まで4フロアを占めている。セブ市の中心にあり、ショッピングモールや繁華街にも出掛けやすい。ITパーク校から寮までは、歩いて7分ほどだ。立地柄、生徒にはビジネスパーソンも多い。日本人の他、韓国、台湾、ロシア、イラン、ウクライナといった多国籍な生徒が留学していた。

ITパーク校限定プランとして、現役のプロ・エンジニアがWebサイトを構築するためのノウハウを英語で教える「IT留学」や、TOEICのスコアアップを保証する「TOEIC点数保証プラン」など、ユニークな企画がある。

一方、リゾートホテルをリノベーションした「シーフロント校」は、学校と寮が一体になっていて、敷地内だけで全てが完結する。ビーチに面した中庭には掃除の行き届いたプールがあり、生徒たちはプールサイドで思い思いにくつろぎながら勉強している。「女性のためのスクール」をコンセプトに、日本人女性が校長として常勤しているだけあって、細部まで清潔で目が行き届き、開放的でアットホームな雰囲気だ。敷地外に出る必要がなく、安全な環境でじっくり英語学習に取り組めるため、子どものいる家族向けに「親子留学プラン」も提案している。毎朝・夕には、有志の講師がリーダーになって、生徒と講師が一緒に「ズンバ」を踊るのも楽しい。

平日は50分×最大10コマの授業で英語漬け

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【写真左】ITパーク校で滞在したスタンダードな1人部屋。【写真右】シーフロント校のエグゼクティブルーム。バスルームには大きなバスタブもある。

気になる費用だが、私は、グループレッスンを含まずマンツーマンレッスンのみを1日8時間受ける「スーペリアプラン」で1人部屋「エグゼクティブルーム」4週間という、もっともコストがかかるプランを選択した。宿泊費を含む授業料は19万9800円。これに入学金1万5000円、空港からのピックアップ3000円、食事代2万円(週5000円×4週間)、海外送金手数料3000円が掛かる。

また、私はITパーク校からシーフロント校に「転校」したが、学校を移る場合は手続き料として別途1万5000円が発生する。セブ現地では、「SSP」という就学するための国への申請費用が6500ペソ、IDカード発行料200ペソ、寮の電気代2000ペソ(週500ペソ×4週間)を支払った。(注・1ペソ=約2.6円。2015年11月現在)

シーフロント校のランチビュッフェ。3食ともビュッフェ式で、パンかご飯の主食、5~6種類のおかずから好みの3種類、他にスープ、フルーツ、ドリンクがつく。

シーフロント校での生活を例にとると、私の1日のタイムテーブルは、朝7時のズンバから始まり、朝食をとってシャワーを浴び、9時から午後1時まで50分×4コマのレッスン、1時間のランチ休憩を挟んで午後2時から6時まで再び50分×4コマのレッスン。夕食後の夜7時からは、自由参加のグループレッスンが50分×2コマ用意されている。つまり最大で10コマの授業を受講できるわけだ。

洗濯は、ランドリーコーナーに洗濯機が15台ほど並び、24時間いつでも自由に利用できる。有料でクリーニングサービスもある。掃除は、1人部屋の「エグゼクティブルーム」の場合、ハウスキーパーが毎日部屋を整えてくれた。生活用品など簡単な買い物は、徒歩5分ほどのスーパーマーケットへ。勉学に励むにはこれ以上ないほど、うってつけの環境が整っている。

そうは言ってもセブ島は、フィリピンを代表するリゾート地だ。街とリゾートがいいあんばいで共存している。せっかく留学するのだから、学校内にこもって、ひたすら英語学習に集中することもできるが、私の場合は、寮生活をエスケープして、島内で最高級のラグジュアリーホテル「シャングリ・ラ マクタン リゾート&スパ セブ」に外泊したり、飲み友達ができて、一緒に外食に出かけたり、バーでお酒を飲んだり。食べ歩きが仕事(と趣味)で、お酒なしでは生きられない都会好きなのに、ストイックな寮生活は大丈夫か。そんな出発前の心配は杞憂で、東京と大して変わらない自分なりのライフスタイルをキープすることも、意外と簡単だった。

ラグジュアリーホテルやおしゃれなレストランでは、もちろん「カランメソッド」で習ったフルセンテンスの正しい話し方で。大人の場合は、子供のようにすぐには習得できないと言われるけれど、これだけしつこく(笑)反復させられると、英語が口をついて出るものですね。

「QQ イングリッシュ」でうれしい、3つのポイント

【POINT1】

日本人スタッフやインターンの日本人がたくさんいて、何でも日本語で相談できるので、初心者には安心。
【POINT2】
シーフロント校では、学校のゲート付近の詰所に、非常勤医師が週3回・各2時間やって来て、簡単な健康相談ができる。症状が重い場合は、「ジャパニーズヘルプデスク」のある病院で、日本語で診察してもらえる。
【POINT3】
食堂は共有スペースで。日本人の同期入学者(バッチメイト)と、先生やレッスンの内容など情報交換を行う場となる。フィリピン人講師も同じ食堂で食事をとっているので、もっと英語を話したければ講師と雑談することもできる。
QQ イングリッシュの詳細はホームページで http://qqenglish.jp
※資料請求や留学申し込みはウェブサイトから。東京と大阪での留学説明会のほか、Skypeを使った留学相談も実施している。留学申し込みは留学開始希望週の前週の水曜日まで受け付け可能。

※次回の「オトナの海外留学 第3回」は1月20日の配信予定です。

江藤詩文/旅する文筆家
年間150日ほど海外に滞在し、その土地に根ざしたフードカルチャーをメインに、独自の視点からやわからな語り口で綴られる紀行文を雑誌やウェブサイトに寄稿。これまで訪ずれた国は50カ国ほど。女性を中心とした地元の人たちとの交流から生まれる“ものがたり”のあるレポートに定評がある。旅と食にまつわる本のコレクターでもある。現在、朝日新聞デジタル&Wで「世界美食紀行」、産経ニュースほかで「江藤詩文の世界鉄道旅」を連載中。著書に電子書籍『ほろ酔い鉄子の世界鉄道~乗っ旅、食べ旅~』シリーズ全3巻(小学館)。
【世界美食紀行】http://www.asahi.com/and_w/sekaibisyoku_list.html
【江藤詩文の世界鉄道旅】http://www.sankei.com/premium/topics/premium-27164-t1.html