シミ、シワ、たるみ……、加齢に伴う容姿の衰えは、女性から「自信」という名の輝きをも奪います。しかしそんな老化の恐怖をものともしないのがフランス女性。「ありのままの自分」に対する自信と、美しくあり続けるためのエネルギーはどこから来るのでしょうか。フランス人を母方の祖母に持つアメリカ人女性、ジェイミー・キャット・キャランが、その秘密を探ります。

「衰え」が怖い

わたしたちは年齢を重ねるにつれ、自分が世の中のスポットライトから外れて、どんどん老けこんでいくような感覚に襲われます。その恐怖に追われるように、もっと何かをしなければと思います。もっとマスカラと口紅を塗らなくては。もっと、もっと。そして鏡を見ては衰えていく恐怖におびえるのです。

「いつまでも若々しくありたい」という思いが強い日本女性。一方、フランス女性の加齢に対する考え方とは?

アメリカは、年齢を重ねることにあまり価値を置かない国。22歳でブロンドで、不自然なほどおっぱいが大きくて、体は14歳の少女のようにガリガリに痩せているのがもてはやされるお国柄なのです。

それとも、わたしたちはメディアにあおられて自信をなくしているのかもしれません。10キロ痩せなさい、豊胸手術を受けなさい、ワードローブの改造も必要、ボトックス注射で額のシワを消して、デリケートゾーンは外科的手法で若返らせる――こんなことを聞かされつづけているうちに、嫌気がさしてしまったのかもしれません。

もういいわ、わたしは完全なナチュラル志向でいく。もう自分を変えようとするのはやめた、流れに身を任せるわ――それ自体は悪いことではありません。ボディケアをやめてしまうとか、髪をバッサリ短く切って手入れをしないとか、老けこんでもまったく気にしないとか、着ているのはいつもスウェット、という意味でなければの話ですが。

年齢も美しさの一部

美の概念を取り戻せるかどうかは女性自身にかかっています。わたしたちはここに存在していて、そして美しいのだということ、肌の色も年齢も、体格や体型もそれぞれ違っていて、それがいいのだということを、広告主やハリウッドやファッション雑誌にアピールできるかどうか。これはとても重要なことです。わたしたちのラブ・ライフは危機にひんしています。

あなたが愛やロマンスに適した人材かどうかを、世間に決めてもらっていいのですか?

ある年齢を超えたら、セックスよりも便秘解消サプリメントの心配をしなさいという意見に耳をかたむけるつもりですか?

そんなのフランス流ではありません。フランス政府が公開した、セクシュアリティに関する600ページもの新報告書によると、50歳超の女性の90%が、現在も性生活があると答えています(また、30~49歳の女性の性交渉相手の平均人数は5.1。ちなみに男性は12.9)。

フランス女性はラブ・ライフについては量より質を大切にし、中年になっても強い性欲を保っていることがこの調査からわかります。

年齢を重ねた女性はフランスじゅうどこにでもいますが、特にパリではその存在が目立ちます。素敵なブーツに、ミステリアスなサングラスをかけていたりします。スリムだけど、いわゆる〈色っぽい体つき〉。ブーツに合わせて、ミニスカートをはいていることも多く、胸の谷間を見せていることだってあります。

60代であっても、その姿にはエネルギーがあふれています。そう、年齢も彼女の美しさの一部なのです。

たとえば、そのはかなさ、年齢からくる賢明さ、経験豊富な女性にしか出せない色っぽさ。カトリーヌ・ドヌーヴをご覧なさい。長い人生を生き、愛してきた人しか得られない美しさが、彼女の姿態に刻みこまれています。

男性からの視線は「大人の証」

10代、20代のフランス女子もまた美しい。プロのホステスにも、カフェで働く女性にもスタイルがあり、優雅さと生意気さを兼ね備えています。〈生意気な態度〉は〈傲慢〉と誤解されがちですが、実は自分の価値がよくわかっているという自信のあらわれなのです。

フランスでは、女性の顔や体のラインの美しさを表現し、ほめたたえたものを、あちこちで見かけます。銅像や記念碑や広告、郵便切手など。少女たちの自尊心は、こうして育まれていくのでしょう。

フランス人男性もまた自己主張が強く、ほめ上手で、軽口が得意な人が多いようです。アメリカ人ほど性差別の訴訟などを気にしませんし、女性はほめられるのが好きだとよくわかっています。こうして男性から毎日のように遠慮なくほめられ注目されて、フランス女性はどんどん魅力的になっていくのです。そんなことがあるかしらと思うかもしれませんが、本当です。フランス女性が服装に気をつかい、ボディケアを念入りに行うのは、もちろん自分の幸福感を高めるためですが、同時に男性の称賛を浴びたいからでもあるのです。

彼女は家から一歩外に出た瞬間から、すべての目が自分を見ていることを自覚しています。だからバレリーナのように顔を上げ、胸を張って歩くのです。

フランス女性は小さな頃から、注目されることが一般的に害のないものだということを学びます。男性からの視線を感じるのは、男女がたがいにほめ合う、大人の社会の一員になった証なのです。

とりわけ、服を念入りに選びます。わずかにセクシーさを感じさせるおしゃれな服装をしますが、度を超すことはありません。見せびらかすのは、体の一部だけ。たとえば脚を見せるのだったらミニスカートにブーツを履き、そのぶん上半身はだぼっとしたセーターで体の線が出ないようにします。注目は浴びたいけれど、妙な注目はご免ですから。

フランス女性は男性を喜ばせることが好きです。ショッキングな響きでしょうか?

でも同時に、フランス男性もまた、女性を喜ばせるのが好きなのです!

※本連載は書籍『セクシーに生きる ――年を重ねるほどに、フランス女性が輝きを増す秘密』(ジェイミー・キャット・キャラン著、プレジデント社刊)からの抜粋です。

ジェイミー・キャット・キャラン
アメリカ生まれ。フランス人である母方の祖母のもとで育ったアメリカ人女性。書籍『セクシーに生きる』(プレジデント社)(http://presidentstore.jp/books/products/detail.php?product_id=1067)は、リアルな告白エッセイとして高い評価を得、たちまちベストセラーとなり、10カ国以上で翻訳されている。ニューヨークタイムズ紙をはじめ多くの新聞雑誌に恋愛指南コラムを執筆するほか、ニューヨーク大学、エール大学、 UCLAでライティングの講座をもつなど、著作以外の活動も活発に行っている。マサチューセッツ在住、気象科学者の夫とともに暮らす。http://www.jamiecatcallan.com