リンカーンは「男は40を過ぎたら自分の顔に責任を持て」と言ったそうだが、女だって40歳ともなれば顔に生き様が出てくるものだ。今年話題になった有名女性政治家の「顔」に、“西の女帝”がダメだしをした言葉が胸に刺さった、という河崎さん。その言葉とは……?

みなさん、歯ぎしりの激しい女はお嫌いだろうか。私はどうもストレス(原稿〆切とか)や心配事(原稿〆切とか)があると無意識に歯ぎしりしてしまう性分らしく、寝ている間にゴリゴリやって、起きたら顎がダルい、なんて悲しい朝をたくさん迎える人生だ。歯医者に行ったところ「度重なる歯ぎしり」による歯のすり減り、および「加齢に伴う歯グキの衰えと後退」による知覚過敏を指摘され、最近は知覚過敏対応の歯磨きペーストが手放せない。いま20、30代の皆さん、加齢は肌や腹回りや尻だけでなく、髪にも歯にも骨にも来ますよ。今から心の準備をしておきましょう。

コラムニスト・河崎環さん

……と、そんな40女の加齢話などどうでもいいのである。しかし、40を過ぎると男も女も顔に責任を持てと言われるように、さすがに入れ物も40年モノともなると、表情ジワや、骨格、姿勢、発音などのクセによりさまざまな顔の歪みが出てくる。歪みやクセが長年蓄積して顔に表れた結果、その人の性格を顕著に映してしまうのであり、だから眉間の縦ジワは険があるから不幸顔とか、目尻の笑いジワはいいシワだから幸せ顔とか、まあいろいろ言うものだ。

私は歯ぎしりのせいか口元に力が入り、ほうれい線が腹話術の人形のようにクッキリするのを毎日化粧で埋めて誤魔化している。眉間のシワも縦にしっかり2本入り、芸風の口の悪さにさらに険を増す効果抜群なので、こっそり前髪で隠すようになった。そんなわけで、すでに意識の高い女性の皆さんには「いまさら?」と笑われそうだけれど、ようやく年齢相応に美容と健康に関心が高まり、最近は食事(特に飲酒)の改善や美容サプリにも手を出して、悪あがきを始めたところでございます。

……と、なぜ自虐全開で“顔”の話を始めたのかというと、今年活躍してメディアを飾るなどした、「今年の顔」たる女性たちを思い浮かべていたからだ。芸能人だけでなく、政財界やジャーナリズム、アカデミック分野などにも思い浮かぶ女性の顔が増えたのは、もしかして国を挙げての“女性が輝く社会2015キャンペーン”(正式にはそんなのないけれど)が奏功したからかもしれないな、などと思う。

今年、私がインタビューなど仕事上でお話をうかがったのは、30代前半で海外紙の「活躍する女性100人」に選ばれた若手女性起業家から、青年海外協力隊の初代隊員で、日本のNGO活動の礎を築いた80代女性、御年90歳で「アイドル」グループのリーダーとして全国で活躍し、日本の80~90代女性への先入観を気持ち良く裏切ってくれるチャーミングなおばあちゃんなど、年齢の幅も広ければ、活動分野も多岐にわたる女性たち。そしてどの女性の口調からも表情からも、自信や充足感、そして穏やかできれいな光が放たれているのが印象的だった。「同じ女としてカッコイイな」「歳を取るのも悪くない」、そう思わされる女性たちの生きざまに、取材後はいつも力をもらって帰途につくのだった。

そう、女も年齢を重ねれば顔に力量が出る。その人の人生が顔に表れてくる。今年メディアを飾った女性をめぐるさまざまな報道のなかで、1つハッとしたものがある。

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読売テレビの人気番組「上沼・高田のクギズケ!」に、上西小百合議員が出演した。

「力量っていうのかな。誰かを助けるんだという容姿を持っていない。あなたは誰かに助けられる容姿よ。そこを改めてもらいたいの」。とある関西のベテラン女性司会者が、浪花のエリカ様と呼ばれる女性衆議院議員に対して番組中で激怒し、辞職勧告をしたという記事だった。「私は、今はちょっとお辞めになった方がいいと思います。また何かを身に付けて、お出になるべきやと思うんですね。それじゃないとちょっと卑怯ですよ。当たり前のように、自分は正しいと思い過ぎています。その高慢ちきが顔に出ています」。

その女性司会者ほどの百戦錬磨の闘士はちょっと他に見当たらないだけに、彼女の「誰かを助ける容姿、誰かに助けられる容姿」という言葉は胸に刺さった。あれくらい人間(じんかん)に生きて世にもまれると、顔を見た瞬間に分かるもの、伝わってくるものがそれはあるだろう。私はどうだろう、誰かを助けられる容姿になっているだろうか。確かに骨格はデカイし安定感あるし、背中も広いよ。でも高いところに手が届くとか、家に害虫が出ても結構泰然として退治するとか、そういうことじゃないんだろうなぁ、「誰かを助ける」って。

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「浪花のエリカ様」こと、上西小百合議員は1983年生まれの32歳。

浪花のエリカ様は、まだ30代に入ったばかり。これからの活動次第でいくらでも人間の顔は変わる。そう、女の顔は変わる。だから若き日の容色の良さはいつか褪せ、さすがに40くらいにもなると、どんな生き方をしてきたか、どんな考えを持ち、どんな1日24時間×365日を積み上げてきたかが、全部如実に顔に出るのだ。きゃあ怖いわ、ストレスで歯ぎしりしてほうれい線や眉間のシワを深く刻んでる場合ではないわ……。

 

そういえば私のプロフィール写真は「看板に偽りあり」。本連載で使っているものは撮影からもう4年経つし、他のメディアで使っているものなどは、なんと8年も前のものまである。そろそろちゃんと自分の現状を正直に映したプロフィール写真を準備しなきゃいけないなあ。皆さまもぜひ、このお休みにご自分の顔をじっくり鏡でご覧になって旧年を振り返り、そしてよい新年をお迎えください。

さすがに40くらいにもなると、どんな生き方をしてきたか、どんな1日24時間×365日を積み上げてきたかが、全部如実に顔に出る。
河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。PRESIDENT WOMAN Onlineでは『本田健と河崎環の「人生曼荼羅」』も好評連載中。