リーダーや管理職などの立場で働くようになると、非常に大事なのが「後輩とどう接するか」。女性の上司にとって、男性よりもむしろ女性の部下の方がやりづらいという声も聞きます。本記事では働く女性上司にヒアリングし、実際に「効果があった一言」を集めました。

2014年6月に政府が示した新しい成長戦略の中で「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上」という目標が掲げられました。2014年時点で11%と、他の先進国に比べるとまだまだ低い日本の女性管理職比率ですが、今後は後輩を指導する立場に置かれる働く女性が急増すると予測されます。

女性の上司が後輩を指導するシーンを考えた場合、意外と挙げられるのが「女性同士の方が、かえって指導が難しい」という声。同性同士気持ちをくめる部分が多い分、考え過ぎてしまい、返って指導しにくい側面があるのだとか。とくに仕事で大失敗をした際などに、どのように女性の後輩を励ましたらいいものか……と悩んでいる人が少なくないようです。そこで今回は、女性の後輩を励ましたときに実際に効果的だった一言を働く女性に聞いてみました。

Case.1 「仕事ってこういうものよ」

「新人の女性が一度、取引先にも影響する締め切りに間に合わなくなりそうな事態に。発覚した瞬間は厳しく叱って、リカバリーのためにすぐ部員一同で仕事を手伝いました。最終的には完成度の高いものを無事納品することができ、『大変だったけど頑張ったね。でもね、仕事って本来こういうものよ。私も新人の頃は失敗も多かったけど、少しずつできるようになったんだよ』と声をかけた瞬間、彼女が泣き出してしまいました。厳しい言葉だったけれど、初めて自分を同じ職場の仲間として認めてもらえた気がして、甘えた心が払拭(ふっしょく)されたそうです」(37歳/出版)

女性の先輩にも自分と同じような時期があったと知ることは、後輩にとっても大きな勇気となるはずです。また仕事の厳しさを冷静に伝える一言は、頭ごなしの罵倒よりもよっぽど胸に刺さるものなのかも!

Case.2 「一見華やかそうにみえるけど……」

「海外出張や華やかな現場を任せられることの多い女性の後輩。社内の男女問わず、少なからずやっかみを受けているようで少し気になっていました。ある日、深夜の残業中に女子トイレで偶然会ったときに『華やかそうにみえるけど、◯◯するって大変だよね。無理はしないようにね』とふと話したら、他の人からはそんなことを言われたことがなかったようで、驚きまじりに感謝してくれました」(35歳/ITコンサル)

「ダメな子ほどかわいい」と言いますが、上司の目から見ると、失敗しがちな後輩ほど目が行きやすいもの。一見“勝ち組”に見える、優秀な後輩の背後にある悩みや努力についても、フォローしたいものですね。

Case.4 「3年も頑張らなくていい」

「女性の部下から転職願望を打ち明けられたときに、『石の上にも3年と言うけれど、今の時代は変化のスピードが速いから、3年も頑張らなくていいんじゃない?』とつい言ってしまいました。上司としてはふさわしい言葉ではなかったのかもしれませんが、女性は出産や育児の可能性もあるから、短期的なキャリアプランを築くのもいいのではないか? というのが私の意見。それを伝えたら肩の力が抜けたのか、3年以上経った今でも彼女は同じ職場で働いてくれています(笑)」(30歳/公務員・児童施設職員)

人生を賭けて後輩が悩んでいるときは、上司や部下という垣根を越えて、同じ働く女性としての本音をぶつけてみるのも一案でしょう。

Case.5 「人事部に一緒に相談しよう」

「ある男性上司から、あからさまなパワーハラスメントを受けていた女性の後輩。とても消耗しているのに、しっかり者だから『自分にも非があるのではないか?』と不満をはっきり自分から口に出すことがありませんでした。『それはもう人事部に相談するレベルだよ。もしもよかったら一緒に行くよ?』と、パワハラを訴えることを勧めました。そう言って初めて自分の置かれている状況を認識できたようです。自分で人事部に相談に行き、配置転換してもらうことになりました」(27歳/マスコミ)

女性は困難に耐えることを受け入れがちという話もあります。シリアスな状況に陥っている女性の後輩には、「人事部に相談するレベル」など客観的な指標を伝えてあげることも、現状から抜け出す一助になるかもしれません。

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キャリアは違うとはいえ、同性同士だからこそ心の奥深くで理解し合える要素が多いもの。後輩女性を励ますときも本音ベースで話すことで、後輩女性との信頼関係をさらに深めていきましょう。

皆本 類
出版社勤務を経てフリーのライターに。広告案件や企業のオウンドメディアを中心に、女性向けコンテンツ作成を担当。おひとりさま向けウェブマガジンの編集のほか、猫やウェディングに関する雑誌に記事執筆も。