職場でのセクハラ(性的いやがらせ)が放置される企業はさすがに減ってきています。しかし最近問題になりつつあるのが、「女性から男性へのセクハラ」。実際に困っているという男性の声を集めました――。

「性的いやがらせ」を意味するセクシュアル・ハラスメント(sexual harassment)。「セクハラ」という通称も浸透していった1990年代、それまで日本の職場で何気なく行われてきた、相手を不快にさせる性的な言動について意識を改めようと機運が高まりました。とくに、1997年の男女雇用機会均等法の改正で性的ないやがらせへの配慮についての記載が盛り込まれ、職場でのセクハラが法的にも問題視されるように。

そのかいもあってか、最近では男性から女性への表立ったセクハラ行為は減ってきた印象があります。その一方で考えたいのが、女性から男性へのセクハラ。「セクハラ」という言葉は男性から女性にするもの……という印象が強いからか、女性は自分のセクハラに気付いていないこともあるかもしれません。知らない間にセクハラ加害者にならないために、女性から男性へのセクハラについて、東京都内で働く男性に聞いてみました。

女性から男性へのセクハラ。意識せずにやってしまっていませんか……?

Case1. 仕事と恋愛をやたらと結びつける

「仕事でミスをすると(女性上司から)『だから彼女に振られるんだよー』と言われたり、仕事を定時であがると『今日はデート?』とその日の服装など含めて詮索されたりすることがあって辟易(へきえき)します。フリーだと答えると社内の未婚女性との交際を無理に勧められたり、『いつ結婚するの?』と何度も聞かれたりすることも多いです。僕が女性に同じことをしたら、きっとセクハラだって言われると思うんですよね」(31歳/通信)

職場におけるコミュニケーションの一環として、上記に近い言葉を男性にかけてしまった経験がある女性もいるのでは? でも、自分自身に置き換えて考えてみたら、この男性が煩わしく思う気持ちはいくらか分かることでしょう。仕事というオフィシャルなことと、恋愛というプライベートは別物。これらを結びつけることは男女関係なくマナーとして避けた方がベターです。

Case2. お腹をつまんで「最近、太った?」

「ランチ中や飲み会などフランクな席でのことですが、同僚の女性におなかの辺りをつままれて『最近、太ったんじゃない?』などと言われることが。その場では笑っていますが、あんまりしつこかったりすると腹が立ちますね。体形のことを言われるのって、誰だって嫌じゃないですか。自分がされたらどう思うか、ちょっと考えてほしい」(28歳/人材派遣)

その同僚女性としては、仲のいい同僚と思ってこその言葉なのかもしれませんが、相手が不快に思っているのだとしたら、それはれっきとしたセクハラです。また、「体を触る」ということは、相手との距離感を相当に詰めることであり、それは男性も嫌うことでもあるということ。改めて女性も認識しておきたいものですね。

Case.3 女性だけへのお土産

「部のリーダー的な女性上司が、出張帰りに『女の子だけにお菓子を買ってきたよ!』と大きな声で呼びかけていましたが、うちの部に男性は自分が1人だけ……。別にお菓子を食べたいわけでももちろんないですが、とてつもなく阻害されている感じがして、つらかったですね」(30歳/公務員・児童施設職員)

男性が多い職場では、少ない女性同士で親睦を深めるため「女子会」を開いたりすることはあります。ただ、女性が多い職場でそれをやってしまうと、男性に対する単なる“仲間はずれ”になってしまう可能性が。女性の社会進出の結果、男性の方が少ない部門も今後多く発生することを考えると、性別で区別するのはすべてにおいて得策ではありません。

Case4. 「当たり前のように」重い荷物を持たせる、たくさん食べさせる

「以前いた職場の女性は、『男だから力仕事』、『男だからいっぱい食べろ』という感覚の人が多く、その雰囲気にすごく疲れました。男だって腰が痛いときはあるし、食欲がないときだってある。“女だから○○するのが当たり前”ということを否定するのであれば、“男だから○○するのが当たり前”も否定されるべきだと思います」(27歳/IT広告)

女性だけが、お茶くみを任せられたり、宴会のときにお酌を強要されたりすることは次第に減ってきているようですが、無意識に男性だけに押し付けてしまっている役割は意外と多いのかもしれません。得意なことをお願いするのはいいですが、それが“当たり前”と思うことには要注意! 思わぬ男性へのセクハラの種が潜んでいるかもしれません。

よろこんで食べている男性ならいいのですが……

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女性から男性へのセクハラについては、まだ社会全体の意識が発展途上の段階です。まずは、「自分がされて嫌なことは相手にもしない」「男性だからといってセクハラを気にしないわけではない」という認識から始めて、女性も男性もセクハラからフリーな職場を目指していきたいですね。

皆本 類
出版社勤務を経てフリーのライターに。広告案件や企業のオウンドメディアを中心に、女性向けコンテンツ作成を担当。おひとりさま向けウェブマガジンの編集のほか、猫やウェディングに関する雑誌に記事執筆も。