女性を本気で伸ばしたい会社と口先だけの会社は、どこが違うのでしょうか。どうすれば見極められるのでしょうか。
「女性管理職比率」や「役員比率」だけでは見えてこない、企業の“本気度”がわかる独自の格付け方法を編み出しました。

入るのは簡単、生き残りが難しい!

※サバイバル型とは? 格付けのA~Cの定義とは?
【あなたが働く企業はどのタイプ? 6つのタイプ別「企業の特徴」http://woman.president.jp/articles/-/788】を参照

このタイプは、女性が多く、総合職採用でも女性を多く採用している会社となります。ただし、3年定着率は良くなく、勤続年数も短い。つまり、途中で大量に辞めてしまいます。しかし、なんとかそこを乗り切ると、役職者になっている女性は多い。そこで「生存競争=サバイバル型」と名づけました。

表を見て、ひと目でわかるのが、サービス・小売業が多いこと。実に、23社のうちの18社がサービス・小売業です。残りの5社を見ても、マスコミに分類された学研は、最近では出版よりも個別塾経営に比重を移しており、サービス業に近いでしょう。

●なぜ、サービス・小売業が多いのか

同様にエイベックスも放送や新聞ではなく、エンタメ系が主なので、マスコミよりもサービス業といえそうです。商社・卸のサンゲツも、その主商品はインテリアコーディネート素材であり、小売り的要素が強いでしょう。そう考えると、広い意味での「サービス・小売」に23社のうちの21社が組み込まれてしまうことになります。

さて、ではなぜ、サービス・小売業はこのタイプの企業が多いのでしょう。

それは、キャリアの入り口は、現場仕事=店舗(もしくは個人顧客担当)となる場合が多いから。そこでまず、デスクワーク主体の仕事を夢見ていた人たちは心砕けることになります。

●学歴がさえない人も実力次第で上へ

こうした個人顧客相手の仕事は、学歴や学力ではどうにもならないところがあります。なぜ、私は売れない……こうした挫折感を味わうのです。

また、アルバイトやパートとして働く経験も年齢も上の人間を、「正社員」として指揮することに疲れてしまう人も多い。さらに、実績が数字に表れます。ノルマに縛られ、前任者と比較され……。こうしたことで、敗退してしまう人が多いのです。

ただ、実績がものいうこの世界では、学歴や職歴でさえない人でも、実力次第で上を目指せる可能性は大でしょう。

社員が告白! データには出ない本当の話

●10年で半数が辞めていく会社

国内外でブライダル事業を展開するワタベウェディングは、女性比率約70%、役職者の女性比率が40%を超える女性王国。だが、入社3年後の定着率73%、勤続年数は6~7年という数字が示すように生存競争は厳しい。

30代前半の女性社員Aさんも「新卒入社の同期は約30人ですが、3年後に10人程度が辞め、30歳前後には半分程度になっていた」と語る。なぜ早期に辞めるのか。要因の一つは昇進レースにあると言う。

「入社すると最初は店舗に配属され、3年目までにほぼ全員の社内資格が1ランク上がります。しかしその後は店舗営業での実績を基に、店長になる人、海外支店に栄転する人など明暗が分かれます。入社5~6年もすると、リーダーになれる人とそうでない人との差がはっきりします。その時点で諦めて辞める人が出てきます。図太く居座る人もいますが」

30歳前後の分岐点で、退社を決意するに至るもう一つの要因はハードワークを含めた将来への不安だ。

「休日出勤は当然としても、拘束時間が長く、終電に間に合わないので駅まで走っていくような日々もあります。本当に接客や今の仕事が心から好きだと思えなければ勤まらないし、誰もがこの仕事を一生やっていけるのかどうか考えるのが30歳前後です。女性が多いので結婚して子どもをつくりたいという人もいる。以前は子どもができると定時に帰れる管理部門などに異動できましたが、今はそうした部署は先輩女性たちで満杯になっている。そうなると店舗でサポートを受けながら働くしかありませんが、どうしても限界があります」

●猛者タイプの女性上司が多い

一方、若い時期に責任ある仕事を任せられるので店長やリーダーの肩書を武器に転職する人も30歳前後に多いという。30歳を超えて続けている人は今の仕事が好きだという人が多いが、次なるハードルも待ち受けている。上司の厳しい要求に応えなければいけないのである。

「女性が主の会社なので、男性上司よりも女性上司が仕事に厳しい。むしろ男性は女性の機嫌をとることが多く、リーダーシップは完全に女性が握っています。厳しさに耐えられずに精神を病んで辞めていく人もいるぐらいで、会社もそれを問題視しています」

上級幹部の女性ほど結婚していない人が多いという。

「結婚し、子どもがいる人でも祖父母が近くにいるとか環境に恵まれていないと昇進は難しいですね。子どもを持つ管理職の女性が地方に転勤する際に祖父母も一緒に連れていったという話もあるくらいです」

●本部社員は毎日ノー残業デー

同じく女性従業員比率は半数近いが定着率が低いのが良品計画。だが、40代の男性社員Bさんは、本部と店舗で分けて考えるべきだという。

「うちはアルバイトや契約社員をパートナー社員と呼んでいるので、これはこの人たちも含めた数字ではないでしょうか。本部社員の離職率は5%以内と聞いていますが、店舗では30%を超えるかもしれません。また、正社員にあたる本社員は新卒入社だけではなく、パートナー社員から登用される人も結構います」

ただし、パートナーから本社員、さらに昇進していくにはいくつかのハードルがある。スキル・能力ごとに1~6のランクがあり、5~6になると登用試験の対象者になる。筆記と面接を経て毎年80人前後が本社員に登用されている。また、アルバイト出身の宣伝担当役員もいる。

「アルバイトからはい上がるには競争も厳しいですが、男女の区別なく実力があれば昇進できます。管理職になるには試験もありますが、店長を含めた3割強が女性ですし、海外でもアメリカ法人の社長は女性。イタリアの社長を務めた女性もいます」

新卒で落ちてアルバイトで入り、管理職になった女性もいるという。子育て世代も多いが、仕事との両立支援策にも力を入れている。本部社員になると毎日ノー残業デーが実施され、定時に帰ることが可能だ。