使わなくなったブラジャーの捨て方に迷った経験はありませんか。そんな悩みを解決する取り組みを下着メーカーのワコールが行っています。その名も「ブラ・リサイクルキャンペーン」。着けなくなったブラジャーを専用のバッグに入れてワコールの店頭に持って行くと、地球環境に優しい固形燃料にリサイクルされるというエコな活動です。キャンペーンを行う目的、ブラジャーの捨て時について、ワコールで広報を務める金岡茉莉子さんにお話を聞きました。

捨てられない気持ちに応えたい

――ブラジャーをリサイクルするという発想はどこから生まれたのですか?

【金岡茉莉子さん(以下、金岡)】3年程前に弊社が行った調査によりますと、2人に1人はブラジャーを捨てることにためらいを感じているという結果があります。ブラジャーは非常にパーソナルでデリケートなものなので捨てにくい、どのように処分したら良いのか分からないという声が以前から寄せられていました。

ブラジャーの処分方法に困っている人は多い。ワコールが実施したアンケートには「切り刻むのは心苦しいので、紙袋などに入れて捨てています」「ワイヤー部分や金具など燃えないゴミと、燃えるゴミとに細かく分けて、布の部分はハサミで切り刻んでから捨てています」「いつもどうやって捨てたらいいのか悩んでしまいますが、結局ほかの燃えるごみと一緒に混ぜてしまいます」などの声が寄せられた。(出典:ワコール「ブラパン」、集計期間 2013年1月1日から1月31日まで。総計 4440人、MyWacoalアンケート)

捨てるとしても、ホック部分やワイヤーが金属でできているため、自治体のゴミの分別に厳密に従おうとすると分解しなければなりません。ゴミの分別が大変ということと、心理的に捨てにくいという女性の気持ちに応える形で、ブラ・リサイクルキャンペーンは生まれました。

この取り組みは2008年から毎年行っており、今回のキャンペーンで9回目となります。これまではブラジャーの日である2月12日から、エコの日である4月22日までの約2カ月間を回収期間としていたのですが、キャンペーンに参加されたお客様からの「年末年始の大掃除や衣替えの時期にブラジャーを持って行きたい」というご意見を元に、今回の回収期間は2015年11月1日から2016年3月31日までと長くなりました。弊社以外のブラジャーも受け付けております。

ブラ・リサイクルバッグでプライバシーも守る

――ブラジャーを専用のバッグに入れて店鋪に持って行く形で、回収を行っていますが、他の袋ではダメですか。

【金岡】はい。受け付けられるのは店舗で配布しているブラ・リサイクルバッグのみとなります。リサイクルバッグごと機械で破砕(はさい)されて、RPFという固形燃料に加工されるためです。回収から燃料になるまで一度も開封することがないので、プライバシーも守られます。

キャンペーンは百貨店やチェーンストア、専門店や小売店舗など、ワコールの商品を取り扱う店鋪で実施しています。お近くの店鋪で専用バッグを受け取り、ブラジャーを入れて持ってきていただくと、店鋪からワコール流通センターに運ばれ、その後処理工場に送られます。ブラジャーからできたRPFは製紙工場などで燃料として使われます。RPFは、石炭に比べ二酸化炭素の排出量が少ないということで、今注目されている燃料です。

――捨てにくいため、たんすにストックされがちな使わなくなったブラジャーも、このようなキャンペーンがあると、気持ちよく処分できますね。現在は、店鋪での受け付けのみですが、郵送では受け付けてもらえないのでしょうか。

【金岡】廃棄物処理法が関係しているのです。古いブラジャーをそのまま回収すると一般廃棄物という扱いになってしまい、産業廃棄物処理業の認可でRPFに加工してもらうことができません。しかし52円切手などの有価物と交換すると一般廃棄物ではなくなるのです。このキャンペーンでは、ブラ・リサイクルバックを1袋ごとに、52円切手1枚をお渡ししています。一般廃棄物として引き取るのではなく、古着を52円と交換している形ですね。郵送ですと、切手をお渡しすることができないため、店舗での受付のみとなっています。

ちなみに、切手はオリジナルデザインのもので、毎年デザインが変わりまして、今年はブラ・リサイクルバッグと同じ、かわいらしい動物のデザインです(※なくなり次第、通常の切手のお渡しとなります)。

――ブラ・リサイクルキャンペーンに参加した人からはどのような感想が寄せられていますか?

【金岡】「捨てにくいブラジャーを引き取ってもらえてうれしい」「エコな活動に参加できてよかった」など、ポジティブな感想が多く寄せられています。    

 
【上】キャンペーン実施店舗で配布されるブラ・リサイクルバッグに、不要なブラジャーを入れて、店舗に持って行く。回収されたバッグは、ワコール流通センターから処理工場に送られ、RPFという燃料にリサイクルされる。キャンペーン実施店舗については、webサイトで確認できる。(http://www.wacoal.jp/braeco/)【左下】キャンペーン専用の「ブラ・リサイクルバッグ」。【右下】RPF。回収されたブラジャーは、小指の爪先ほどの大きさの固形燃料にリサイクルされる。(画像提供 ワコール)

ブラジャーの劣化と体型の変化を見極めて!

――捨て時が分からなかったり、少しくたびれていてもデザインが気に入っていたりして、同じブラジャーを使い続けている人もいるかと思います。プロから見ると、ブラジャーの捨て時とはいつですか。

【金岡】捨て時・替え時のポイントは2つあります。1つはワイヤーの変形や、調整してもストラップがズレるなど、ブラジャーそのものの劣化です。もう1つは体型の変化により、ブラジャーが合わなくなる場合です。こちらはご自身での判断が難しいことも多いです。ワコールの店舗ではビューティーアドバイザーが相談を受けておりますので、判断に迷うブラジャーがお手元にあれば、お持ちください。

――体型は知らないうちに変わるものなのですか?

【金岡】お肌と同じく、加齢によりバストもエイジングするということが、2010年に弊社の研究で明らかになりました。個人差もあるのですが、デコルテのボリュームが落ちた状態が、バストのエイジングのステップ1です。その後のステップとしては、バストの下の部分がたわみ、乳頭も下向きになり、最終的には外に流れ、バスト自体が下がります。これは誰にでも起こり、一度エイジングの段階が進んだバストは、それ以前の状態には戻りません。

バストは脂肪と乳腺と、それらをまとめるように支えるクーパー靭帯などからできています。筋肉でできていれば鍛えられますが、脂肪は鍛えられません。このバストのエイジングの大敵は揺れです。揺れることで、クーパー靭帯が切れたり伸びたりした結果、脂肪の重みでバストが下がってしまうのです。また、脂肪の重みだけでなく、年齢と共に皮膚が柔らかくなっていくことも原因です。

 
【左】バストのエイジングが進むステップを示した図。ステップ1の上胸がそげて、デコルテのボリュームが落ちる段階で、加齢による変化に気付く人が多いとのこと。【右】バストの構造。(画像提供 ワコール)

ブラジャーと一緒に思い出もお預かり

――何とかして、バストを美しく保つ方法はないのでしょうか。

ワコール 総合企画室 広報・宣伝部 金岡茉莉子さん

【金岡】体に合ったブラジャーを着けていただくことがケアになります。同じバストサイズでも、20代と40代とでは、合うブラジャーが違います。40代の人が20代向けのブラジャーを着けると、カップ上辺が浮いてしまいます。しかし、40代向けのブラジャーを着けると、ぴったりと収まります。弊社が2015年3月に行った調査によりますと、自分の体に合っているブラジャーを着けていた人は1割しかいませんでした。ブラジャーのサイズが合っている人は半数いたのですが、サイズが合っているだけで、脇肉がはみ出ている、ストラップが調節できていない、背中に段ができている、カップの中に胸が収まっていないなど……。

ブラ・リサイクルキャンペーンは捨てにくさを解消する目的もあるのですが、ブラジャーを見直していただき、今のご自身の体に合ったブラジャーを見つけていただくことも、目標にしています。

――ブラ・リサイクルキャンペーンに関する、今後の目標を教えてください。

【金岡】今回で9回目になるのですが、まだまだ浸透しているとは言えません。キャンペーン参加者に、どこでこのキャンペーンを知ったかを調査したところ、6割の方がホームページやお店で知ったとのことでした。このデータは、日頃からワコールの商品に触れている方が中心となっていますので、もっと多くの女性にこのサービスを知ってもらい、利用してほしいです。

ブラジャーは非常にパーソナルでデリケートなものであり、買ったときのことや身につけていたときの恋愛など、さまざまな思い出が詰まっています。その思い出も含めて、ワコールでお預かりし、「地球に貢献できる」という納得できるかたちでリサイクルさせていただくという、人の心に寄り添った活動にしていきたいと思います。

■ブラ・リサイクルキャンペーン(http://www.wacoal.jp/braeco/
※現在行われているキャンペーンの回収期間は、2016年3月31日まで。ワコール以外のブラジャーもリサイクル可能。