何であの子が私より先に結婚!?

20代も終わりに近づくと、届く数が一気に増える結婚式の招待状。その招待状の宛名を見て、「あの地味だった子が結婚!?」「あの性格に裏表がある女! どうやって相手を捕まえたんだろう……」と、心がざわついた経験はありませんか。

自分より見た目もパッとしないし、性格もさほどよくなかった子が、30歳までに素敵な男性と結婚していく。その花嫁姿を目の当たりにして、「おめでとう」と心からは祝福しきれないのが女心です。数万円の御祝儀まで持って行かれます。婚活に苦戦しているアラサー、アラフォー女性にとって、これほどの苦行はありません。

でも、どうして自分より先に「あの子」が結婚できてしまったのでしょうか。

結婚は性格の善しあしでは決まらない

人の悪口ばかり言っている同僚、電車の順番待ちに割り込むおばさん……、そんな彼女たちの薬指に輝く結婚指輪。それを見るたびに「なぜあの人が結婚できて、私は結婚できないの……」と落ち込んだり、腹を立てたりしていませんか。「結婚は性格の善しあしでは決まらない」、では何が関係するのでしょうか?

結婚できないと悩む女性のほとんどが「この歳になってもお相手候補すらいないのは、私の人格のせいではないだろうか?」と考えます。しかし、それは違います。ご近所を見てください。結婚している人は全員素敵な人ですか? 職場を見てください。結婚している嫌な女はゴロゴロしています。

なぜ彼女たちが結婚できているのか。それは相手の「心」を動かすことができたからです。

「私が人の心を動かせない人間だと言うのですか!? 仕事ではマネジメントしたり、リーダーシップを発揮したり、周りのモチベーションを高める努力をしています」「私は営業ではトップの成績を収めています。お客様の心を動かすことができるからこその結果です」と、根拠や実績をもって反論したくなる気持ちも分かります。

確かに、仕事上は相手の「心」を動かしているのかもしれません。しかし、これは相手を結婚へと向かわせる「心」の動かし方とは違うのです。

仕事で人を動かす「論理」の力が、婚活ではマイナスに

リーダーシップ、営業、マネジメント……、仕事で人を動かす力になるのは、論理です。つまり、いかに論理的に多くの人を納得させることができるのかという点が重視されます。それは結果的に、自分の主張の優位性を相手に理解させることになります。時には自分以外の人の主張を後退させることにもなるのです。

婚活でこの力を発揮し過ぎると「この女性は、何でも自分が正しいと思っているんだな」と、男性から反感を買いやすくなります。女性が筋の通った主張をすればするほど、男性の主張がどんどん後退していくからです。そして、「女の言いなりになるなんて御免だ!」と、男性に思わせてしまうケースが少なくありません。仕事では絶対に必要な論理の力ですが、婚活ではこのようにマイナス方向に働く危険性があるのです。

では、早々に結婚を決めてきた「あの子」たちは、どうやって男性の心を動かしたのでしょうか。それは、非常にシンプルです。「具体的な話」をしていたのです。「具体的な話」とは? 少し極端な例を挙げますね。

「今日ね、部長に『やっとまっすぐにコピーを取れるようになったね』って褒められたの!」

……場面をイメージできましたか? ちょっとイラッとくる光景が目に浮かんだのではないでしょうか。あきれないでください。男性だって「コピー1つ満足に取れなかったのかよ」と感じる人もいます。しかし、世の中にはこのような話で心を動かされる男性もいるのです。「この子、コピーもまっすぐに取れないぐらい不器用なんだ。きっと職場ではつらいだろうな。……俺が嫁さんにもらってやるか」と、思い込み三段論法で結婚モードのスイッチが入る男性もいるわけです。

この話ですが、重要なのは「場面をイメージできる」というところ。話が具体的だと、相手の頭の中に絵が浮かびます。絵が浮かぶことで、相手の心が動き出します。恋は心の揺さぶりから始まるもの。そのきっかけをたくさん作るためにも、相手がイメージできる具体的な話が大切なのです。

ところが、バリキャリ女性はこんな話をしがちです。

「自社製品の優位性について、データを使って社内で自主プレゼンをしたの。その上でマーケティングの重要性を訴えたら、予算が付いて新規で調査を行えることになったの!」

……会社は動かせても、男性の心は動きません。こちらも極端な例を挙げましたが、絵が思い浮かばない話は、頭に入ってこないのです。頭に入ってこないということは心を動かす材料がないので、気持ちが盛り上がりません。これは「勤務先に対する守秘義務があるので、ボカして話しているから絵が思い浮かばないんだ!」というようなことではありません。また仕事の話をするのが悪い、と言っているわけでもありません。仕事について熱心に語る姿に好意を抱く人もいるかもしれませんが、やはりすんなりと絵が思い浮かばない話は、聞き流されがちになるものです。

婚活における論理の上手な使い方

婚活中には論理がマイナスに作用しやすいと言いましたが、論理は決して悪者ではありません。使いどころはいろいろあります。例えば、相手の長所を褒める際、その理由を添えるために論理を用いるのです。「あなたはお箸の使い方が上手よね。(なぜならば、それは)きっとお母様が大切に育てられたからなのでしょうね」と、まだ会ったことのない相手の母親を褒めることもできます。論理の力を使って推測すれば、今、目の前にあるものを引き合いに、無理なく見たことのないものを肯定したり褒めたりできるのです。このように、論理の力は「私はあなたの長所に気付いています」ということを伝えるときに使ってみましょう。根拠なく褒められることをいぶかしく思う男性も、この方法なら素直に受け止めることができます。

まっすぐにコピーを取れるようになって褒められた話も、自主プレゼンの話も、どちらも極端な例ですが、相手に話題を“ふる”ときには、中学生でもその光景が頭に浮かぶぐらいに分かりやすく具体的に話すということを心がけてみてください。バリキャリの皆さんは、論理的であることが是とされる仕事モードを引きずったまま、婚活の場で話をしてしまいがちです。しんどかった婚活がこの心がけだけでかなり楽になりますよ!

大西明美

婚活アドバイザー。結婚相談所を経営。1977年大阪府生まれ。東京都文京区在住。過去20年で延べ4万3000件の恋愛を研究してきた婚活指導の第一人者。小中学校ではイジメを受け友達がいなかったため、周囲の人間関係を観察することを目的にして登校を続ける。特に恋愛に注目してコミュニケーションを学ぶ。高校生のとき、初めてできた友人に恋愛相談を持ちかけられ、日頃鍛えた人間観察眼を生かしたアドバイスを行い、無事に解決。それをきっかけに恋愛相談が立て続けに舞い込むようになる。婚活指導を通して、5年間で200組以上のカップルを成婚へと導いている。著書に『となりの婚活女子は、今日も迷走中』(かんき出版)がある。