自分のことを受け入れてくれない人がいる。どうにもならない事実がある。そして、毎日不満ばかり言っている私に自己嫌悪……。ヘルプ!

取捨選択の目を養う

リクルートに入社した当初は、落ちこぼれ社員だった。1日中歩き回っても1件も契約が取れず、営業は向いていないと思い詰めたことも。

「商品の知名度がない、客が予算を持っていない。売れないのは、商品や環境のせいだ! とふてくされていました。でも、人のせいにするのはラクですが、それでは成長がないんですよね。制限があるからこそ人は工夫するのだと気付いてから、仕事がおもしろくなって、成績も上がっていきました」

太田彩子さん

予算がないクライアントばかり担当させられるのはなぜ? どうしてうちの会社は、この商品をいつまでも改良しないの? こうした悩みを抱えているビジネス・ウーマンも多いだろう。

「仕事って、自分の自由にならないことのほうが多い。でも、変わらない事実に目線を合わせていても、モヤモヤとフラストレーションがたまる一方」

客はこうすべきなのに、全く動こうとしない。上司ならこうあるべきなのに、怠慢だ。「~すべき」というマスト思考にがんじがらめになって、結局動けなくなってしまう。

「私は、自分ではどうにもならない部分はすっぱりあきらめていいと思う。その分、変えられるところに集中すれば、仕事は断然楽しくなります」

あきらめるというと、ネガティブで後ろ向きなイメージがあるが、太田さんの「あきらめる」は、強みを生かし、極めていくための前向きな選択だ。

「コミュニケーションでも、取捨選択は大切。たとえ正しいことでも、伝え方や話す順番を間違えてしまえば、思わぬ受け取られ方をしてしまうことだってあります。何を一番強く伝えていくのか。話す場面や相手の状況を考えることも大事ですね。相手の要望にマッチしないと判断すれば、無理に強く押さないという選択もできます」

仕事を心から楽しむために、そして限られた時間で最大限の成果を挙げるために、取捨選択の目を養いたい。

■コレを取ってアレを捨てよう!

Case01:必要とされているところに力を集中!
100人に会うと100人から契約を取りたいと思ってしまうもの。その意気込みは大切だけど、必要とされていない人にも力を分散して1万円ずつ契約をもぎ取るより、本当に必要としている10人を見極めて100万円ずつ取ったほうがいいでしょ!?

Case02:完璧を目指すより、実現できる着地点を探す
取引先から無理難題な10個の要求を突き付けられて四苦八苦。全部に対応して結局どれも中途半端になるより、「これだけは!」という絶対に譲れない3個だけを選び取って完璧にこなしましょう。そのほうが、結果的に相手を納得させられます。

Case03:時間のかけ方にメリハリをつける
時間には限りがあります。たとえば地域のお客さまを訪ねるときは、いつもよりゆっくり時間をかけてふれ合う。飛び込み営業は電話やメールに切り替えて効率的に行う、など、どこに時間をかけるべきか自分なりのルールをつくることが大事です。

 ■好きなことば 
「一番大きな敵は、自分の内側にある弱気だ」

 ■リラックスするとき 
登山が趣味。雄大な自然に包まれると、悩みがパーっと晴れていく。

 ■朝ごはん 
フルーツ、ヨーグルト、大豆のグラノーラ。コーヒーは「サザコーヒー」。

 ■好きなくつ 
「銀座かねまつ」。シューフィッターが足に合わせて調整してくれる。


CDG 太田彩子
取締役。リクルートで「Hot Pepper」の広告営業として活躍し、社内MVPを3度受賞。独立後、主に営業職の女性のキャリアを支援。営業女子のコミュニティー「営業部女子課」の代表理事も務める。2014年より現職。著書に『折れない営業女子になる7つのルール』(かんき出版)など。1児の母。39歳。