相手と打ち解けた雰囲気で話せるだけではなく、もう一歩踏み込んで、心の奥にあるバリアを壊したい。本物の信頼を得る方法が、あったらいいのに。

夢に見るくらい、相手の情報を集める

新卒で総合職として入行以来、地方を含めて数々の支社や本部を経験してきた南里彩子さん。自分より年齢もキャリアも上の経営者たちに提案し、納得してもらい、融資へと話をもっていくには「相手と真摯(しんし)に向き合って、誠実さをわかってもらうことが重要」と言う。

同行で3人いる女性支社長の一人、南里彩子さん。本部とのやりとりや部下への指示をこなす毎日。1日に2、3社の法人顧客のもとを訪問。

「先方に出向くまでにどれだけ相手を知っておくか。すべてはそこにかかっています。会社関係の資料はもちろん、ホームページや新聞、雑誌の記事は必ずチェック。そこから自分との共通点を見つけていきます。時には工場、店舗など現場の見学をさせてもらうことも。面会の日ギリギリまで、情報を集めています」

ここで大事なのが、話すタイミング。会ってすぐ、矢継ぎ早に自分が知っていることを披露するわけではない。

「持っている情報は、一度心の中で風呂敷に包みます。相手の方のスタイルや話される内容によって、タイミングを見ながら『そういえば!』と話を進めています」

もうひとつ、南里さんが新入社員時代から貫き通してきたのは「無駄な背伸びをしないこと」だ。わからないことはわからないと素直に言い、次回までに回答を用意。企業のトップを前にしても萎縮せずに堂々とふるまう姿に、部下たちも厚い信頼を寄せる。


 ■好きなことば 
「自分はそれ以上でも以下でもない。だから、背伸びもしないし卑下もしない」

 ■リラックスするとき 
土曜の夜に家族でまったりと過ごす時間。娘たちの学校での様子を聞く。

 ■朝ごはん 
娘のお弁当作りで余ったおかずに、ごはんとみそ汁。朝は和食派。

 ■好きなくつ 
20年ほど「銀座かねまつ」を愛用。色は、黒、ベージュ、グレー。


三菱東京UFJ銀行 南里彩子
成城支社支社長。1992年旧三菱銀行に入行。470人の総合職の中で女性は8人。大企業、公共法人などの営業を担当。2006年より女性活躍推進室の立ち上げに携わる。新宿新都心支社副支社長を経て、14年から現職。2児の母。46歳。

撮影=キッチンミノル