市場が不安定でも投資はできる

8月の中旬まで2万円を超えていた日経平均が、8月の終わりには1万7000円台、そして10月後半には1万9000円台に。株価が大きく動く様子をみて、投資ってやっぱり怖い……と思った人もいるのではないでしょうか。

中国経済の行方が不安視されていたり、アメリカの利上げが近いと予想されたりと、しばらくの間、投資環境は不安定になりそうという見方が強い状況です。

投資では「安く買って高く売る」ことで利益が出ますから、下がっているときに買えば利益が出やすいといえます。

とはいえ、「もっと下がるのでは……?」という不安があると、投資に踏み切れないですよね。

ではどうすればいいか。方法は2つあります。

時間分散を図る

一つは、「時間分散を図ること」。

たとえば30万円を投資する場合、一度に30万円を投資するのではなく、3万円ずつ10回に分けて投資するなど、購入時期を分散させます。そうすることで、高値でたくさん買ってしまう失敗を避けやすくなります。

たとえば株価が1万8000円のときに投資して、その後どんどん下がっていくとしたら不安で仕方ないですが、1万8000円のときに少し買って、1万7000円のときにも少し買って……としていけば、安く買えた分もあることで、利益が出る可能性が広がります。

時間分散の効果を得るには積立投資が便利です。ネット証券や銀行などでは「投資信託」の積立購入ができ、手間なく、毎月一定の額で継続的に購入することができます。

資産分散を図る

もう一つは、「資産分散を図ること」です。

株式と債券、国内と海外など、種類が異なる資産や、エリアを分けて投資すると、「この資産(エリア)は下がったけれど、別の資産(エリア)が上がった」、または「この資産は大きく下がったけれど別の資産は下げが小さかった」という状況が期待でき、資産全体の値下がりを抑える効果が得やすくなります。

資産分散を図るにも、「投資信託」が便利です。

一部のネット証券では500円(カブドットコム証券)、1000円(マネックス証券)といった額から投資信託の積立購入ができるため、複数の投信を組み合わせて積み立てることもできますが、「もっと手軽に分散投資をしたい」という人なら、「バランス型ファンド」を検討するといいでしょう。

バランス型ファンドとは、複数の資産、エリアに幅広く分散投資される投資信託で、1本で手軽に分散投資ができます。

「どこの、どんな資産に投資するか」は個別のファンドによって異なります。

資産は株式、債券、REITが多く、一部コモディティーにも投資するファンドもあります。エリアは国内と先進国、新興国を含むタイプがあります。

REITとは、不動産に投資して主に賃料を収益とする金融商品のこと。コモディティーとは、貴金属、穀物、エネルギーなどの商品に投資する金融商品です。

いずれも株式や債券とは異なる値動きをする性質があるため、併せ持つことで分散効果が期待できる、というわけです。

バランス型ファンドにもさまざまなタイプ

もうひとつ、ファンドによって異なるのが、「各資産にどんな比率で投資するか」です。

大きく分けると……

◆各資産に同じ比率で投資
国内の株式、債券、先進国の株式、債券に25%ずつ、など。シンプルで分かりやすい。一般的にコストも低め。

◆過去の値動きなどを参考に最適と考えられる比率で投資
リスクを抑えながらリターンが得られるように比率が調整されているのが一般的。状況に応じて、一定の範囲で比率が調整されるタイプもある。

◆先々の値動きを予測して臨機応変に比率を調整
各資産の値動きを予測して比率を決定。先行きが不透明な局面では、株式や債券、REITなどへの投資を控え、一時的に資産のほとんどを預金などで管理する大胆なコントロールを行うタイプも増えている。値下がりを抑える効果が期待できる反面、値上がりが抑えられる可能性も。

◆複数のタイプを用意
安定型(債券や国内が多め)、成長型(株式、海外が多め)、安定成長型(安定型と成長型の中間)など、何タイプかが用意されており、無手数料で乗り換えられる。はじめは成長型、お金を使う(解約する)時期が近づいてきたら安定型にするなど、リスク許容度に応じて切り替えるといい。

……といった種類があります。

残念ながら、どの種類がいいとは言い切れません。過去の値動きをベースにしても同じようにうまくいくとは限りませんし、将来予測をするといっても確実に当たるわけではないからです。

等分に分けるものの方が分かりやすくていい、という人もいます。

値下がりしないとは限らない

しっかり認識しておきたいのは、「分散したからといって絶対に値下がりしないわけではない」ということです。

以前は日本の株価が下がれば外国債券の価格が上がるといった分散効果が認められましたが、近年では世界中の株価が同時に値下がりする、株も債券も値下がりする、といったことが起きやすくなっています。そのため、バランス型ファンドも値下がりすることがあります。

しかし、株だけを持つより、債券やREITを併せ持っていた方が値下がりの幅を抑えられる効果が期待できますし、値下がりが怖いからと債券や国内にだけ投資するより、株式や海外の資産を加えた方が、お金が増えるチャンスがあります。

ざっくり言うと、値下がりは抑えながら、適度にリターンも狙う、というのがバランス型ファンドなのです。

日本株に投資するファンド、外国債券に投資するファンドなど、複数を組み合わせてリスク許容度などに応じて比率を決めるのもいい方法で、一般的にコストも抑えられますが、仕事が忙しい、子育てが大変、という人には1本で分散投資ができるバランス型ファンドには一定の魅力があると思います。

フリーライター 高橋晴美(たかはし・はるみ)
1989年よりライターとして活動。資産形成、投資信託、住宅ローン、保険、経済学などが主な執筆テーマ。