世界60カ国で人材サービス事業を展開するアデコグループが、CSR活動の一環として行う「CEO for One Month」。これは次世代のリーダー育成を目的として、CEO業務を体験するというインターンシッププログラムです。100名を超える優秀な若者のエントリーの中から、日本代表として選ばれたのは、立命館大学3年生の久乗亜由美(くのり あゆみ)さん。2015年7月8日から1カ月間、アデコ株式会社の川崎健一郎社長に密着し、CEO業務を体験しました。
久乗さん、そして1カ月をともにした川崎社長に、日本でのCEO for One Monthを振り返ってもらいました。まずは久乗さんの単独インタビューからお届けします。

社長室には閉じこもらない!

世の中にインターンシップはたくさんありますが、数日程度のものが多く、1カ月という長期のものはほとんどありません。しかも、アデコグループという、世界最大の人材サービス企業。その日本のたった1人の枠に選ばれるとは思っていませんでした。決まったときはうれしくて、連絡を受けた電話口で「わーっ!」と叫んでしまいました。

久乗亜由美(くのり・あゆみ)さん。立命館大学経営学部3年生。特に人材業界に関心があったわけではなく、まだ就職活動の学年でもなかった彼女が、CEO for One Month に応募したのは、アジアビジネスへの関心と、海外で働いてみたいという気持ちに突き動かされたから。2015年度後期には上海への留学を予定している。

1カ月間、川崎社長に付いて、CEOの仕事を見せていただきました。社内ミーティングだけではなく、アジアのCEOやCFOが出席する会議にも同席しました。

各国のCEO for One Monthに選ばれた人は、それぞれがCEOとして、アデコの5年後を見据えた事業戦略を策定しなくてはなりません。私は事業の現場を知りませんし、市場環境もよく分かりません。そこで、営業担当の社員の方に現場の話を聞くところから始めました。そこを糸口に、川崎社長や役員の方にも話を聞き、事業戦略について考えていきました。そうした方々とお話するのは緊張しますが、聞きたいことはいっぱいあります! 1カ月限定とはいえ、せっかくCEOという肩書きと機会をいただいたので、使わないともったいない。普通の大学生なら会ってもらえないような役員の方でも、CEO for One Monthだからこそ、時間を取ってくださいます。個室のオフィスをもらっていたのですが、とにかく閉じこもらないようにしました。せっかくの“特権”ですので、フルに使いたいですから。

世界30カ国に、私と同じようなCEO for One Monthがいます。インターン期間の1カ月が終了した後に、この中から10人が選ばれ、スペインで行われるブートキャンプ(合宿)に行くことができます。そしてまたその中から1人が選ばれて、グループのCEO for One Monthとして1カ月間、グループCEOに付いて仕事を学ぶことができます。日本のアデコの社員の皆さんは、「日本のCEO for One Monthをブートキャンプに出そう」と、私をサポートし、応援してくださいました。とてもうれしい反面、「その応援に見合う実績を挙げなくては。10人の枠に選ばれなくては」というプレッシャーもありました。

大学の授業とは全然違う! 本物の事業戦略立案

インターンながら、CEO for One Monthには個室のオフィスが用意されていた。しかし久乗さんはそこに閉じこもることなく、社内外を飛び回った。

私は経営学部に籍を置いているので、授業の課題として事業戦略を作ったことはありましたが、アデコでCEOとして作る事業戦略は重みが全然違いました。大学での事業戦略はグループで作るので、皆で相談して決めればいい。でもCEOは、自分で決断しなくてはなりません。

私は決断力がないのです。人に話を聞くと、影響を受けて流されてしまいます。いろいろな情報のどこにフォーカスすればいいのかすら、なかなか決められませんでした。でも、日本や、アジアのアデコの役員の方から、「市場のトレンドをしっかりつかむ必要がある」「CEOは足下の細かい点よりも、全体像をイメージとして全社員に伝えなくてはならない」などのアドバイスをいただいたことが、とても役立ちました。それから、「20代なのだから、その年代ならではの視点が欲しい」とも言われました。

ひと夏のCEO経験が私を変えた

これまで私は、何に関しても1番になったことがなく、また1番になれると思ったこともありませんでした。もちろんCEOになるなんて、想像もできません。自分には、1番の人をサポートする“準”とか“補佐”役が向いていると思っていました。ですが今回、CEO for One Monthに選ばれ、初めて1番になれた。「絶対に無理そうなことでも、挑戦をすればできるかもしれない」と思うようになりました。

もちろん名刺もあります! 1カ月のインターン期間を経て、受け渡しも堂に入ったものに。

これまでCEOというと、利益を追求する人、情けに流されない怖い人というイメージがありました。利益追求のため、たとえばリストラをしなくてはならないこともあるだろう。そういうときに情が入り過ぎる人はダメなんじゃないかと。

ですが、川崎社長を見ていると、CEOとは周りから慕われる人、たくさんサポートされる人なのではないかと思うようになりました。

私が好きなフレーズに“If you can dream it, you can do it.”(描ける夢なら、かなえられる)というものがあるのですが、その通りだと感じています。CEOになるなんて、最初は想像もできませんでしたが今は違います。CEO for One Monthになることができた。夢は描くだけでは実現できなくて、描くためには自分も頑張らなくてはいけない。そうすれば結果はついてくるものだと思います。