費用と体への負担を心配する人も多い不妊治療。でも、人工授精まではそれほど高額ではなく体への負担も大きくありません。助成金を整備する自治体も増加中。
STEP1:タイミング法 ――排卵日に合わせて夫婦生活を
●1周期あたりの妊娠率約2%、費用は1万円程度
基礎体温などで排卵日を推定し、その少し前に性生活を合わせるのがタイミング法。シンプルな方法ですが、これだけで妊娠するケースも。排卵日を正確に予測することはできませんが、排卵検査薬もひとつの方法。調剤薬局やインターネットなどで購入できます。
ただ、排卵日ジャストの「授かりセックス」にプレッシャーを感じたり、義務的なセックスに抵抗感を覚える男性も多く、夫婦のコミュニケーションや協力態勢が大切になります。女性は「今日こそ!」と気負いがちですが、排卵日にぴったり合わせる必要はありません。精子は子宮頸管粘液や卵管のなかで3~5日は生きられます。排卵日前にできるだけ多くセックスをすることで、授かる可能性もアップ! 「回数を多くすると精液が薄まる」というのは迷信。男性不妊専門医も「妊娠しやすい期間の性生活は、できるなら毎日がベスト」と断言するほどです。
STEP2:人工授精 ――元気な精子を子宮へと送り届けます
●1周期あたりの妊娠率約10%、費用は2~5万円程度
人工授精とは、排卵のタイミングに合わせて精液を子宮のなかに送り込む治療法。精液は、元気な精子だけを集めて不純物を取り除いた状態にし、細くやわらかなカテーテルで子宮まで届けられます。精子の運動率がよくない場合や、子宮頸管に問題がある場合などに勧められます。言葉の響きから、体外受精と混同されがちですが、2つの治療はまったく異なるもの。精子の泳ぐ道のりの半分を医療で手伝いますが、そこからのプロセスは自然妊娠と変わりません。
1回あたりの妊娠率は体外受精の約3分の1程度ですが、費用は体外受精・顕微授精の20~25分の1。体への負担も少ないので、回数を重ねることができるのが強み。一般的には、5、6回トライして妊娠しないようなら、ステップアップを考えます。年齢によっては、タイミング法や人工授精には時間をかけず、急ぎ足で次のステップへと進む場合も。
STEP3:体外受精 ――よく育てた卵子を体外で精子と出会わせる
●1周期あたりの妊娠率約30%、費用は20~50万円程度
卵子と精子を取り出し、体外で受精させた受精卵を子宮に戻す方法。タイミング法や人工授精で授からなかった場合、卵管閉塞がある場合、精子に問題がある場合に検討します。シャーレの中で受精させる体外受精に対し、成熟卵子1個に精子1個を細いガラス管の中に入れて注入する方法を顕微授精といいます。
1度の治療で複数個を採卵し、多くできた受精卵は凍結保存します。よい卵子を数多く育てるために、排卵誘発剤を使うのが一般的。毎日注射する方法や、最小限の排卵誘発剤を使う低刺激法、薬を使わない自然周期法など、方法はさまざま。受精卵が順調に成長し、受精後2日目くらいの「初期胚」、または5、6日後の「胚盤胞」の段階まできたら、子宮に戻します。体外受精で妊娠する夫婦なら1~3回のトライで妊娠するケースが一番多く、ほとんどの場合は5回以内で妊娠に至ります。
体験者の声
●夫との協力態勢で体外受精へ
Aさん(40歳)/2013年11月に結婚したご主人(46歳)とは、交際8カ月のスピード婚。14年1月より不妊治療専門クリニックを受診し、治療をスタート。
治療前の検査では、夫の精子が少ないことが判明。彼はとてもショックを受けていましたが、気持ちを切り替え、治療は人工授精からスタート。5回チャレンジしましたが授かることはできず、医師からは体外受精へのステップアップを勧められています。でも、費用面や体への負担などから、夫のほうが躊躇してしまって……。
「そこまでして頑張る必要があるのか」と悩んでいたときに、友人の子どもに会う機会がありました。屈託なく遊ぶ赤ちゃんを見ていたら、やっぱりわが子を抱きたいという思いが2人のなかにこみ上げてきて、今は体外受精に向けて準備をしているところです。
やさしくて、思いやりあふれる夫に出会えたことが、私にとっては一番の幸せ。彼との子どもができたら最高に幸せですが、赤ちゃんは授かりもの。望み通りにいかないかもしれないことは覚悟しています。そのときは、夫と2人の生活と仕事を楽しんでいくつもり。今後も気持ちを張りつめすぎずに妊活ライフを送りたいです。
●流産を乗り越えて不妊治療へ
Bさん(40歳)/結婚2年目。ご主人は48歳。昨年夏に子宮内のポリープを手術。その後自然妊娠するも、妊娠1カ月のときに流産。今夏より不妊治療を開始。
30代半ばまでは結婚願望も、子どもが欲しいという気持ちもなかった私。38歳で結婚し、自然妊娠したことが転機になりました。おなかに赤ちゃんがいるとわかったときのうれしさは、自分でも驚くくらい。夫も喜んでくれて、今まで感じたことのない幸せに包まれた1カ月でした。残念ながら稽留(けいりゅう)流産してしまいましたが、「まだ子どもが持てるのかもしれない」と励まされた経験でもありました。
今年の夏から、夫が口コミなどを参考に選んだクリニックへ。「年齢的にもダイレクトに体外受精を考えましょう」と提案されました。AMH検査で、卵巣年齢が実年齢よりも高い45歳と診断されたことも大きかったと思います。夫の精子も少ないことがわかり、より効果が望める治療を受けたほうがいいと納得。ホルモン剤を飲みながら、1回目の体外受精に備えています。食事やウオーキングなど、健康にも気を使うようになりました。ヘビースモーカーだった夫も大幅に減煙。夫婦で協力して歩んでいきたいと思います。