新制度が実施されて、保育施設の種類がふえました。ざっくり認可と認可外に2つに分けることができ、保育料のしくみも認可と認可外では大きく違います。一般に、認可外は保育料が高いと考えられていますが、そうではない場合もあります。今回は、保育施設全般の保育料について解説します。

認可の各種施設は統一料金

認可、認可外の別は次のとおりです。実際に家の近くの施設がどの種類のものかは、市町村の入園案内を見ればわかります。

認可施設:認可保育園、認定こども園、小規模保育、認可の家庭的保育(保育ママ)、地域枠のある事業所内保育など
認可外施設:認証保育所・横浜保育室など自治体が独自に助成する施設、認可を受けない事業所内保育所・保育ママ、ベビーボテルなどの届け出施設など

基本的に、認可に属する保育施設の保育料は、施設の種類にかかわらず市町村が統一料金を決めています。認可外は施設ごとに自由に保育料を設定しています。

認可も認可外も年齢が高くなると保育料が安くなる

まず、基本的なこととして、子どもの年齢が小さいほど保育料が高くなるのは、認可も認可外も同じです。これは、心身のこまやかなケアが必要な3歳未満児には保育士を多く配置するように基準が設けられており、そのためのコストが保育料に反映しているためです。

認可は、保育料基準表が3歳未満児と3歳以上児の2区分になっている自治体と、3歳未満児・3歳児・4歳以上児の3区分になっている自治体があります。

認可外は、3歳未満児は年齢別、3歳以上は一律の金額になっているところも多いようです。

いずれにしても、保育料は子どもの成長とともに安くなりますので、最初の数年は高くても耐えるという考え方が必要です。

認可の保育料は年齢・世帯所得・保育時間認定で決まる

認可の保育料は、市町村ごとに統一料金が決められていると言いましたが、実は保育料は人によって違っています。認可では、世帯所得(住民税額)に応じた保育料額が設定されているからです(応能負担)。これは、家庭の経済状態にかかわらず保育を必要とするすべての子どもに良質な保育を保障するために考えられたしくみなのですが、皮肉なことに、待機児童の多い地域では認可保育園の数が足りなくて、その趣旨を活かせていない状況です。

新制度になってから、保育時間が2区分に分けられ、基本の保育料に3%程度の差が設けられました。基本保育料で「保育標準時間」は1日11時間まで、「保育短時間」は1日8時間までの保育を利用できることになっていて、それを超えるとどちらも延長保育料がかかります。しかし、「保育短時間」の基本保育料は「保育標準時間」と月額で数百円~千数百円程度しか差がなく、「保育短時間」認定だけれども帰る時間が不確定な人などは延長保育料で「保育標準時間」の基本保育料を上回ってしまうことがあるので、要注意です。保育時間認定で困ることがあるときは、自治体の窓口で相談してみてください。

延長保育料は施設ごとに月額や1回ごとの額で決められています。

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新宿区と大阪市の保育標準時間の保育料(3点抽出)

実は、認可の保育料は自治体ごとの差もあります。新宿区と大阪市を例にとってグラフにしてみました。保育標準時間の保育料を3つの階層でとらえています。東京都内の市区町村は全国水準に比べて、中間的な階層の保育料を大幅に軽減しているのが特徴的です。

認可外の保育料は施設によってさまざま

認可外の保育料は、世帯の所得とは関係なく、利用する年齢と時間で額が決まりますが、詳細は施設ごとにかなり違っています。認可にはない入園金があり、別途料金も多いので、事前によく調べておく必要があります。

認可外は保育料が高いイメージがありますが、認可の保育料も自治体によっては最高階層の3歳未満児で7~8万円にもなり、決して安くありません。世帯所得が高く最高額もしくはその近辺の額を負担する家庭の場合、認可外のほうが保育料が安いというケースはよくあります。

さらに、認証保育所など自治体が補助する認可外保育施設の利用者に対して「利用者補助」(利用者に直接補助を給付する)を出す自治体が多くなっています。ただし、「利用者補助」にも所得制限が設けられていたり、認可との差額を出すことになっていたりして、応能負担的な考え方がふえつつあります。

【練馬区の認可とある認証保育所との比較・0歳児の場合】
認可の保育料最高額:57,500円(保育標準時間、1日11時間、週6日まで)
区内のある認証保育所の保育料:61,000円(1日11時間、週5日利用)
……利用者補助20,000円を差し引くと、実質41,000円

認可の第2子以降の減免制度は大きい

このように所得の高い世帯の第1子保育料は、認可と認可外で逆転現象が見られるわけですが、第2子以降の保育料になると、認可のほうが圧倒的に割安になります(ただし同時に在籍することが条件)。

認可では、第2子保育料は半額に、第3子以降の保育料は無料になる軽減措置がとられています。働く親の間では、これがあるおかげで2人目、3人目が産めると言われています。自治体によって、第1子が小学生でもOKだったり、第2子から無料だったり、所得に応じて軽減率を変えていたりなど、独自の制度を設けているところもあります。

質との関係

世の中のサービスは一般に、高いものは質がよく、安いものは質が悪いと考えられていますが、保育に関しては、これが成り立ちません。いや、子どもの福祉を考えると、成り立たせてはいけないとも言えます。

施設ごとに見れば認可保育園は、基準を満たすために必要な費用を公費で支え、保護者の負担を軽減して、子どもに一定の質の保育を保障するように制度がつくられています。

認可外は施設ごとに保育料が違いますが、自治体の助成を受けているかどうかは大きな違いです。自治体の助成を受けないいわゆる「届け出施設」は、利用者が負担する保育料だけで運営されているので、保育料が格安のところは、どうやって運営できているのか注意する必要があります。

と、私はよく話していたのですが、先日報道された栃木県の虐待保育を行っていた認可外は、保育料が高く、高級保育を謳っていたと聞き、やはり保育料額だけでは判断できないと思いました。保育施設選びは、保育料額だけに流されないで、見学をして中味を確かめて選んでください。

保育園を考える親の会代表 普光院亜紀
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務を経てフリーランスライターに。93年より「保育園を考える親の会」代表(http://www.eqg.org/oyanokai/)。出版社勤務当時は自身も2人の子どもを保育園などに預けて働く。現在は、国や自治体の保育関係の委員、大学講師も務める。著書に『共働き子育て入門』『共働き子育てを成功させる5つの鉄則』(ともに集英社)、保育園を考える親の会編で『働くママ&パパの子育て110の知恵』(医学通信社)、『はじめての保育園』(主婦と生活社)、『「小1のカベ」に勝つ』(実務教育出版)ほか多数。