目の前にやるべきコトは山積みなのに、頼まれるとつい断れなくてパンク寸前。心と体が悲鳴をあげる前に、じょうずな断り方をマスターしましょう。
頼まれると断れないのはいい人だから!?
そもそも、なぜ断れないのか。断れない人には共通点があると塚越友子さんは話す。
「断ると二度と声をかけてもらえないんじゃないかなど、自分は非常に弱い立場だからあらがえないという認識が特徴として見られますね」
藤田尚弓さんも断れない人には「相手を尊重しながら主張するアサーティブな考えができない人が多い」と指摘する。一方、誰から頼まれたことでも八方美人的に引き受けるのは人間の美徳、と話すのは内藤誼人さん。
「断れないのはいい人だからです。自分よりも相手の立場で考える人は断れない。だから共感能力の高い女性のほうが男性よりも断りにくいのです」
しかし、さすがに内藤さんも自分が負担に感じる、自分の時間や労力が奪われて本来の仕事ができないといった場合は断ったほうがよいと話す。
また、断ることで関係性がよくなる場合もあるし、お互いの危機管理にもなるとは塚越さん。その大前提として必要なのが“表現力”と力を込める。
「大目標はそのあとの人間関係がよくなることですよね。そのためには、いろいろな表現の仕方を知っていないと。管理職を目指すなら、なおさらですね」
LESSON 1:パターンを知ればこわくない! 公式に当てはめてみよう
じょうずに断るための表現力を身につける第一歩は、公式を知ること。これらのフレーズにのせれば、相手の気持ちを大切にしながら、自分の気持ちもうまく伝えることができる。2つのパターンを紹介しよう。
●こちらも手いっぱいなのに、急な仕事を頼まれた場合
Pattern A:いったん受けて、断る
OK「ああ、いいですよ」→NO「ちょっと待ってください。スケジュールを確認します。あっ、今週は無理ですね」
まず相手の要求を受けることで断ったとはみなされない魔法の公式。「最初に入った印象がすべてと感じる『初頭効果』によって、相手は断られても自尊心を傷つけられたと感じません」(内藤さん)。断ったあとは「来週はできます」とフォローを。子どもに何か買ってと言われたら「いいよ」と受けて「お誕生日にね」とつけ加えるなど、日常生活のあらゆる場面で使える。
Pattern B:理由+代替案を提示
謝礼・お礼「せっかくお声をかけてくださったのに申し訳ありません」+理由「ぜひお手伝いしていのですが、今週いっぱいは○○の案件で手がはなせません」+代替案「来週であれば手があきますので、それでよろしいでしょうか?
第1のポイントは最初に謝辞かお礼をもってくること。「女性に断られるとなめられたと感じる人もいるので『ほかでもない○○さんの依頼なのに』というようなことを入れるといい」(藤田さん)
理由があると人は承認しやすいので、理由の部分は実は理由“らしき”ものを入れるだけでOK。さらに代替案を出すのもポイント。
「代替案を出して交渉して何とか逃れる。この公式どおりに言うと相手も押し通しづらくなり、承諾してもらえますよ」(塚越さん)
相手にいやな思いをさせないで断る
パターンAの内藤さんの公式は明快。“いったん受けて、断る”だ。
「人間って、いちばん最初に入った情報がすべて。何かを頼んだときに断られると相手にネガティブなイメージしか残りません。だから、まず受けて相手に不快感を与えないこと。そうすれば、相手は断られたと感じません」
塚越さんと藤田さんが提案するのがパターンB。「日本人の場合、相手のメンツを立てることが大事なので、そのメンツを立てながらダメなものはダメといっていく方向性」(塚越さん)
断っているけれど、あなたのことは大事に思っていますよ、というフレーズにのせれば大丈夫と藤田さんも話す。
コミュニケーションデザイン研究を行うアップウェブ代表取締役。交渉の仕方は著書『NOと言えないあなたの気くばり交渉術』に。
塚越友子
東京中央カウンセリング代表心理カウンセラー。専門はコミュニケーション論。『辞める前に読む!』のほか、著書多数。
内藤誼人
アンギルド代表取締役社長。立正大学客員教授。実践ビジネス心理学を中心に企業へのコンサルティングも行う。著書は200冊以上。