他人のキャリアに干渉したり、細かいことを比べあったりと、職場の女づきあいは何かと面倒。なぜそんなことが起きるのか? バリ子(仕事優先)とゆる子(私生活優先)は対立するしかないのか? 精神科医と人気タレントが「ややこしい女関係」の謎に迫ります。

どんな人がバリキャリになるの?

あこがれの女性(キャリアウーマン)に近づこうと努力してなった人もいますが、成育歴が関係している人もいます。たとえば両親が不仲で、母親が専業主婦というケース。母親がDVを受けていたり、経済力がなく、離婚したくてもできないという状況を見て育つと、恐怖心から「自立」を志すようになったりします。

元衆議院議員/精神科医 水島広子さん

もうひとつは、いわゆる「優等生」タイプ。常に目の前の課題において成果を挙げることが、自分の価値につながると信じている人たちです。高学歴→バリキャリというのはよく見られるパターンです。

無力感から逃れるため、あるいは他者からの評価を求めて仕事にまい進してきたタイプは、柔軟な思考が苦手。社会が要求する通りにキャリアを追求するか、キャリアそのものをあきらめるか、人生は2つに1つしかないと思い込む傾向があります。

視野の狭くなったバリキャリは、多様な生き方をなかなか認められません。とくに、キャリアとひきかえに何かをあきらめてきた人は、「趣味も仕事も楽しむ女性」や「子育ても仕事も両立する女性」の存在が面白くないのです。

女性の上司は、女性の部下に厳しいとよくいわれます。実際、上の世代のバリキャリは、下の世代のバリキャリに厳しい傾向がありますね。

たとえば男女雇用機会均等法の第1世代(50代前半)。彼女たちは「女性の管理職」という前例がほとんどないなか、自力ではい上がってきたので「女性を活用しましょう」と会社がお膳立てして30~40代の女性が管理職に就任すると、「なぜ、女というだけでゲタをはかせるの?」と反発します。

組織で女性が出世する場合、選ぶ主体は男性であるケースが多いので、上位職の男性のお気に入りになるように振る舞うと、引き上げられることがあります。それゆえに、「期待に応えたい」と、ついいい子になって頑張ってしまう人も多い。このように、「選ばれる性」であった女性の資質が、キャリアにつながっていることもあります。

バリからゆるに転向したくなるときって?

大きなきっかけになるのが「2人目の子ども」の存在。「1人でも大変なのに、これ以上は限界」と2人目の出産をあきらめる人もいますが、実際に2人以上産むと、数年後には子ども同士で勝手に遊ぶようになるので、親はむしろラクになったりします。家庭内における「子どもの世界」の比重が増え、その楽しさに目覚めた人は、「私生活をもっと充実させたい」という思いが強くなるようです。

責任感が強いバリキャリも、突然ゆるキャリに転向することがあります。今の30~40代の多くは、パワハラ上司やミスだらけの後輩のフォローで疲弊しています。最初は張り切っていても、周囲が「彼女がやってくれて当たり前」という態度になると心が折れ、結婚や専業主婦に気持ちが傾くのです。

女同士の対立。解決法は?

価値観の異なる相手とうまくやっていくには、「実は望んで今の場所にいるわけじゃない」と口にすることです。バリキャリが「仕事以外のこともやってみたいんだけどね」と話せば、ゆるキャリは、「この人は仕事のために何かをあきらめているんだ」と認識できて気持ちが落ち着く。一方、ゆるキャリが「本当はもっと働きたいのに、何でも中途半端に感じてしまって」などと話せば、バリキャリは同情するのです。認めあおうと、無理に相手を称賛することはありません。

面倒な「女づきあい」をうまくやるには?

一生懸命、空気を読んで何か言ってもうまくいかなかったり、自分が疲れてしまうようなら、空気を読むのをやめてしまいましょう。

私のおすすめは、「ちょっとヘンな人」になること。最近は「天然」と呼ばれている人が、マイペースな生き方を実現していると思います。ポイントは「後ろめたい空気を出さない」ことですね。堂々としていれば「そういう人なんだ」ですまされます。興味のないことに誘われたら、「ふーん、いいね。でも私そういうの詳しくなくてー」と、にこやかに話題を変えましょう。「私、女子力低いから」も、今風で使えるワザではないでしょうか。

同性への嫉妬心はどうすればいい?

女性というのはどんなライフスタイルを選んでも、大きく失うものがあります。バリキャリは私生活の充実、ゆるキャリは経済的な自由や組織内での発言権。そして互いに、自分にないものを持つ人への嫉妬を必然的に感じるのです。そんな自分を責めることなく、「これは女に特有の傷なんだ」ととらえ、癒やしていくことが必要。自分の中の「傷ついた女」を自分で癒やすのです。

たとえば、ノートに自分の嫉妬心を書きつづったあと、親友に声をかけるように「大変だったね」と慰めの言葉を記していく。「フェイスブック」をやめるのもおすすめ。子どもと遊ぶ様子、出張先での1コマなど、何げない画像も「持たざる女」にとっては傷になるのです。

元衆議院議員/精神科医 水島広子さん
慶應義塾大学医学部卒業、同大学大学院修了(医学博士)。日本における「対人関係療法」の第一人者で、『「ドロドロした嫉妬」がスーッと消える本』『整理整頓 女子の人間関係』など多数の著書がある。1女1男の母親でもある。