原作が良くても、映像(映画・ドラマ)がイマイチだということは充分あり得る。

しかしその逆、原作が悪いのに、映像が素晴らしかったということはまず起こらない。冷静に考えてみたら、当然のこと。内容が魅力的でないものは、何をどうしても(映像化にしても)魅力的にはならないであろう。

では、書籍そのものについてはどうだろうか? 書かれている内容・中身と本の外見ともいえる装丁との関係。

内容・中身が良くて、装丁がイマイチ。逆に、内容・中身は駄目だが、装丁は素晴らしい。考えてみてほしい。

『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』
川崎貴子著/KKベストセラーズ刊

答えはどちらもNO。良い本(ここでは、あえて売れる本とする)は、内容・中身、装丁どちらも良いのである。無論、装丁については、ベストセラー・ロングセラーは、書店にも長く積まれ、陳列されるため、「見慣れてくる」「違和感がなくなる」という無意識の効果があることも多分にあるのだが。

1日に何箱、何十箱と入荷してくる新刊段ボールたち! その段ボールを開け、新刊を書店員が取り出す時、「うわ! 売れそう、この本」と思う(感じる)瞬間がある。そして、大概それは当たる。

『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』がそうだった。表紙はイラスト、赤い帯に「愛を乞うより、愛してしまえ。」という印象的なコピー、そしてエッセイスト・小島慶子の推薦文。目立つが、浮ついたところ、媚びたところがまったく感じない装丁。売れる予感がした。そして、中身は……実に魅力的なエッセイであった。

愛する技術を美しく磨く

大抵の女性エッセイは、「愛されるため○○する」「誰かに幸せにしてもらうための○○」、幸せは誰かが運んでくる、何処からかやってくるという精神論が8割以上。

が、このエッセイは違う。タイトルの通り、“技術”“具体”が書かれている。「今こそ結婚する技術」「愛しい男を育てる技術」「毒になる男を捨てる技術」「自分を幸せにする技術」「愛する人を許す技術」。章が進むごとにぐんぐん読むスピードは加速していき、そのどれもが「腑に落ちる」内容だった。

“言い訳をしないエッセイ”“寂しくても、涙を流しても他人のせいにしないエッセイ”、つまりは“潔いエッセイ”なのである。彼女自身が乗り越えてきた、社会人としての“潔さ”がこのエッセイには書かれてあった。

著者は働く女性をサポートするための人材コンサルティング会社の代表であり、女性誌での執筆や講演活動も多数。そして2人の娘を持つワーキングマザー。

こう書くとスーパーウーマンのように思われがちだが、誰もが経験する失敗や痛みも経てきた女性であり、苦い経験も失敗も書かれてある。

実際、著者の講演を聴講する機会を得たが、なんと清々しく、本人が綺麗なことか。「女の人生は面白い!」「何度失敗しても大丈夫。幸せになれるよ。だって女だし!」という本書にある“言文一致”の彼女の姿があった。

幸せになりたい女性(そうでない人はいないと思うが)は必読、日々の生活に言いようのない焦燥感がある女性、結婚もしたい、子供も欲しい、仕事も続けていきたい、キャリアを重ねていきたい、女として綺麗でいたい……という幾つもの選択に迷っている女性、逆に「どうせ、私なんか何の取り柄もなくて……」と自己評価の低い女性、悩みのループに迷走している女性も手にとってほしい。

そして、「男はこうあるべきだ!」「男は女より、社会、会社で大変なんだ!」という頑なな価値観を持っている男性にもぜひ手にとってもらいたい。読み込んでほしい一冊である。