副収入が20万円を超えたら要注意

普段は会社勤めの人でも、自宅でネットオークションをしたり、友人の仕事を手伝ったりして、お給料のほかにちょっぴり副収入がある人もいることでしょう。うれしい副収入でも、場合によっては確定申告が必要になることがあるから注意が必要です。

昨年分の所得についての確定申告は2月16日~3月15日の間に行います。必要な人は、きちんと申告してくださいね。

まず覚えておきたいのは、会社員の場合は「本業の給与以外の所得が20万円以下なら確定申告は不要」ということ。といっても、これは副収入が20万円を超えたら確定申告をしなくてはならない、という意味ではありません。ここはカン違いしやすいポイント! そこで、ケース別に見ていきましょう。

【ケース1】ネットオークションでたくさん売ったA子さん

A子さんは昨年、引っ越しを前に家中を大整理。ネットオークションでもう使わない洋服やバッグ、アクセサリーなどを大量に売って、約25万円の収入がありました。

ネットオークションに限らず、衣服や家具といった生活用品(生活用動産)を売っって得た所得は課税されないことになっています。このため、A子さんのケースでは収入が25万円あっても確定申告の必要はありません。

ただし、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属、美術品などのぜいたく品は課税対象とされています。では、無理して買ったティファニーのダイヤのネックレスが35万円で売れたら税金を払う? いえいえ、そういうことではありません。課税されるのは代金として手にした「収入」ではなく、その「収入」から「必要経費」を引いた「所得」です。つまり、税金は「儲け」に対してかかるということ。必要経費には、購入代金や売るのにかかった費用などが含まれます。もしダイヤのネックレスが買った値段より高く売れたら「儲け」が出ますが、普通はあまり考えにくいのではないでしょうか。

ネットオークションの場合、友人から預かったものを売って手数料を受け取るケースも多いようです。この場合はビジネスとみなされて、手数料収入が課税対象になります。手数料収入から通信費やオークション手数料といった必要経費を差し引いた所得が年間20万円を超えた場合には、「雑所得」または「事業所得」として確定申告が必要です。

【ケース2】友人の会社で翻訳を手伝ったB美さん

英語が堪能なB美さんは、会社を経営する友人に頼まれて自宅で翻訳作業を行い、25万円の報酬をもらいました。報酬からは源泉徴収されています。B美さんはこの翻訳のために新しい辞書と専門書を何冊か購入、交通費も含めて計10万円の経費がかかりました。

会社員が原稿料や講演料などを受け取った場合は「雑所得」という所得になり、B美さんが受け取った翻訳料もこれにあたります。雑所得は収入から必要経費を引くことができるので、「25万円-10万円=15万円」が所得になります。会社員のB美さんなら、所得が20万円以下なので確定申告する必要はありません。

こうしたケースで、もし所得が20万円を超えていたら確定申告が必要です。友人の会社から受け取った支払調書(報酬の支払金額と源泉徴収税額が記載されている)と、勤務先から受け取った源泉徴収票(給与の支払金額や控除額、源泉徴収税額が記載されている)を用意して、雑所得と給与所得の申告をしてください。

なお、支払調書は源泉徴収票とともに法定調書とよばれる書類の一つで、報酬を支払った会社から税務署にも提出されます。

【ケース3】夏休みと週末にレストランでバイトしたC代さん

旅行代を貯めたいC代さんは昨年、夏休みと週末に親戚のレストランでアルバイト。給与からは源泉徴収されていて、源泉徴収票によると昨年の給与は計25万円です。

会社員が2カ所以上から給与を受け取った場合は原則として確定申告が必要ですが、本業でない勤務先からの給与が20万円以下の場合は確定申告が不要とされています(ほかにも本業以外の収入があるときは合計して20万円以下)。

C代さんはバイト先から25万円の給与を受け取ったので、「給与所得」として確定申告が必要です。確定申告をするときは、バイト先から受け取った源泉徴収票と勤務先から受け取った源泉徴収票の2つを用意、それぞれの給与収入(「支払金額」の欄)を合計した額が昨年の給与収入になります。

【ケース2】の雑所得では収入から必要経費を引いた額が所得ですが、給与所得では必要経費の代わりに「給与所得控除」を引いた額が所得になります。「給与所得控除」は収入額によって変わるので、国税庁のホームページなどで確認しましょう。

副収入を会社に知られたくないときはどうする?

確定申告をすると副収入があることを会社に知られてしまうのでは? と心配する人もいるでしょう。まずは勤務先の就業規定で副業禁止とされているかどうか、調べることが重要です。

会社の規定では副業禁止だけど、もうバイトはしちゃったし、20万円を超えたので確定申告しなくてはいけないし……そんなとき、会社に知られない方法はあるのでしょうか?

確定申告をしたからといって、税務署から会社に「この人には副収入がありますよ」と連絡が行くわけではありません。会社が副収入に気づくのは、おもに市区町村から住民税の決定通知が送られたときです。

会社は社員の給与から毎月、住民税を源泉徴収しています。いくら源泉徴収するかは市区町村がその人の昨年の収入額に基づいて決め、5月頃に住民税の決定通知書を会社に送ります。副収入を申告をして収入が増えれば源泉徴収する額も増えるので、それに会社の担当者が気づけば副収入があることがわかる、というわけです。

これを避けるには、確定申告のとき、申告書の「住民税・事業税に関する事項」の中にある「給与所得以外の所得に係る住民税の徴収方法」の欄で、「自分で納付」を選択しておく方法があります。【ケース2】のように副収入が雑所得など給与所得以外なら、こうしておけば会社に届く住民税の決定通知書から副収入の分が除かれるので、会社に気づかれる心配はなくなります。

ただ、【ケース3】のように副収入が給与所得の場合には、この方法が使えません。「市区町村の窓口に相談して何とかしてもらった」という話もあるようですが、基本的に厳しいと考えたほうがよさそう。このため、会社に知られたくないときは、給与所得にならないような働き方にするのが得策です。

もっとも、会社に副業が知られるのは住民税の通知だけではありません。うっかり自分から口にしたり、周囲のウワサで分かってしまうのもよくあるパターン。副業禁止の規定がある会社は多いはずです。厳しい会社なら注意を受けたり、最悪の場合には職を失うこともないとはいえません。規定違反になるようなバイトは最初から避けたほうが無難でしょう。

会社員の副収入と住民税の関係を知っておこう

さて、ここまで「会社員の副収入は所得20万円以下なら確定申告不要」と説明してきました。実は、これは所得税の規定で、住民税にはこうした規定はありません。つまり、副収入の所得が20万円以下で確定申告をしない会社員も住民税は払ってください、ということ。この場合は市区町村で住民税の申告を行います。

でも、住民税の申告って、あまり聞いたことがありません。では、市区町村はどうやって住民税の税額を決めているのでしょう? 会社員については通常、会社から市区町村に「給与支払報告書」という書類が提出されるので給与収入がわかります。このため会社員は通常、住民税の申告は不要です。確定申告をする人については、税務署経由で市区町村に収入がわかるので、住民税の申告は不要です。一方、給与所得以外の所得のある会社員で確定申告をしない人は住民税の申告が必要、とされています。

このことはあまり知られていないので、実際にはどれだけの人がこうした申告をしているのかわかりません。ただ、今後は住民税の徴収がもっと厳しくなることも考えられます。副収入のある人は、心しておいたほうがいいかもしれません。

マネージャーナリスト 有山典子(ありやま・みちこ)
証券系シンクタンク勤務後、専業主婦を経て出版社に再就職。ビジネス書籍や経済誌の編集に携わる。マネー誌「マネープラス」「マネージャパン」編集長を経て独立、フリーでビジネス誌や単行本の編集・執筆を行っている。ファイナンシャルプランナーの資格も持つ。