来年は消費税10%!? 会社員も節税を工夫しよう

消費増税から半年あまり。「最近、なんだかすぐにお金がなくなっちゃう……」と感じていませんか? そんな中で、政府は次の消費増税へ向けて着々と準備中。予定どおりなら、次の増税は来年10月、税率は10%になる見込みです。

こうなれば、私たちも真剣に節税に取り組みたいところ。「でも、会社員に節税なんて無理なのでは?」――そんなことはありません! 会社員にも身近な節税は、「控除」の額を増やすこと。その方法が「年末調整」と「確定申告」です。

会社員の収入にかかる税金は、毎年1月~12月の期間で計算します。ざっくりいえば、この間の給与収入から、さまざまな「控除」を差し引いて、残った金額(課税所得)に税率を掛けて税額を計算するしくみ。つまり、控除を増やせば、課税所得が減って、税金も減らせるというわけ。控除には「配偶者控除」「生命保険料控除」「医療費控除」「寄附金控除」など多くの種類がありますが、このうち「生命保険料控除」などは年末調整のときに申告すれば、会社が税額を計算して、払いすぎた税金を戻してくれます。一方、「医療費控除」などは、翌年に自分で確定申告をすれば、税務署から税金が戻ります。

たとえば医療費控除を5万円申告すれば、戻ってくる税金の目安は、所得税率10%の人なら約5000円。さらに、来年から支払う住民税(一律10%)も5000円安くなります。計1万円も税金を節約できるなら、工夫する価値あり!

今は11月初旬。年末までまだ2カ月近くの時間があります。今からでも間に合う節税対策をいくつか紹介しましょう。

医療費を積み上げて医療費控除を増やす

医療費控除の申告ができるのは、年間に医療費を10万円以上使った人。10万円を超える額について申告ができます。

医療費控除は自分の使った医療費だけでなく、生計が一緒の家族の分も合わせて申告できるので、家中の領収書を集めるのがポイント。保険の効かない歯の治療や出産費用も対象です。また、通院に使った交通費は領収書がなくてもメモを作れば大丈夫。ただし、その医療に対して受け取った保険金や、出産一時金などは差し引かなくてはなりません。

かき集めて10万円を超えるようなら、次は医療費の積み上げを狙いましょう。医療費控除を受けられる年は、気になっていた治療を実行するチャンスです。これまで放っておいた歯の治療は年内に。指圧やはり、きゅう、マッサージによる治療の費用も、資格のある施術者が行う場合は控除の対象になります。また、会社の健康診断で気になるところのある人は、この機会に人間ドックに入るのもおすすめ。人間ドックの費用は原則として医療費控除の対象外ですが、病気が見つかって引き続き治療を行ったときは、人間ドックの費用も医療費控除の対象になります。

薬局で買った薬でも、風邪薬や胃腸薬など、治療に使うためのものは控除の対象になります。医療費控除を申告するなら、薬を買うのは年内がお得。

医療費控除は自分で確定申告をしますが、会社員が税金を戻してもらう申告はシンプルで簡単。国税庁HP(http://www.nta.go.jp)の確定申告書作成コーナーなら、数字を入力するだけで税額を自動計算してくれて、プリントすればそのまま申告書として提出できるので、ぜひチャレンジして!

今年こそ地震保険に加入する

地震保険に加入している人は、「地震保険料控除」が受けられます。

地震、噴火、これらによる津波によって家や家財が被害を受けても、火災保険は支払われません。こうした災害に備えるには、火災保険に地震保険をセットしておく必要があります。思わぬ自然災害が相次いでいる今、持ち家に住んでいる人はぜひ加入を検討してほしいもの。特に住宅ローンを抱えている人は、家を失ってローンだけが残るような事態を避けるためにも、地震保険がおすすめです。

年内に地震保険に加入して1年分の保険料を支払うと、全額が今年の地震保険料控除の対象になります(最大5万円)。この控除は年末調整で申告できますが、今から加入して年末調整に間に合わないときは、自分で確定申告すればOKです。

年末調整で生命保険料控除をシッカリ申告

生命保険や生命共済に加入している人は、「生命保険料控除」が受けられます。この申告も年末調整でOK。死亡保険だけでなく、個人年金保険や医療保険、がん保険なども対象です。控除の対象になる生命保険に加入していれば、契約している保険会社などから10~11月ごろに「生命保険料控除証明書」が届くはず。控除証明書が届かない、見つからないといったときは、契約先に問い合わせてみましょう。再発行も可能なので、あきらめないこと。

これから生命保険に加入しようという人は、年内に加入すれば今年の保険料控除の対象になります。ただ、控除目的で不要な保険に入るのは本末転倒なので、本当に必要かどうか、しっかり検討してください。年内に加入する場合、保険料を年払いにすれば、月払いにするより今年の控除額を増やせます(控除額に上限あり)。

ふるさと納税で特産品をもらう

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ふるさと納税の特典の例(寄付1万円の場合)

節税とは少し違いますが、「ふるさと納税」もおすすめです。ふるさと納税とは、都道府県や市区町村に2000円を超える寄付をしたとき、所得税・住民税が安くなる制度です。

たとえば年収500万円の独身会社員が自治体に1万円寄付をすると、所得税・住民税が合わせて8000円安くなるため、自己負担は2000円だけで済むというしくみ。自治体に寄付をすることで、国や自分の住んでいる地域に税金を払う代わりに、その自治体に税金を払う、といったイメージです。

寄付する自治体は生まれ故郷でなくても、応援したい自治体を自分で選べます。自治体によっては、寄付してくれた人に特産品を送ってくれることもあります。たとえば、1万円以上の寄付でお米10キログラム(新潟県三条市など)、和牛肉1キログラム(山口県美祢市など)をくれるところも。実質負担2000円でこんな特産品をもらえれば家計も大助かり。ふるさと納税の特典については、各自治体のホームページや、ふるさとチョイス(http://www.furusato-tax.jp/)などのサイトで調べられます。

とはいえ、ふるさと納税の基本は自治体への寄付。特典にこだわらず、東日本大震災で大きな被害を受けた地域を応援するのもいいでしょう。普通に税金を払えばどう使われるかわかりませんが、ふるさと納税なら、自分で払う税金の使い道を自分で決めることができるのです。

この制度を利用するには、自治体に寄付して証明書を送ってもらい、これを添えて確定申告で「寄附金控除」の申告をします。今から寄付する場合は、今年の控除に間に合う期限を各自治体に確認しておきましょう。

税金の負担はどんどん重くなっています。“言われるままに黙って支払う都合のいい納税者”から、そろそろ卒業しませんか?

マネージャーナリスト 有山典子(ありやま・みちこ)
証券系シンクタンク勤務後、専業主婦を経て出版社に再就職。ビジネス書籍や経済誌の編集に携わる。マネー誌「マネープラス」「マネージャパン」編集長を経て独立、フリーでビジネス誌や単行本の編集・執筆を行っている。ファイナンシャルプランナーの資格も持つ。