使っている人は使っている「教育訓練給付制度」
私の尊敬する先輩は、広告会社に在勤中、教育訓練給付制度を使い、社会福祉士の資格を取りました。資格を取るために社会福祉士養成通信コースを約2年間受講、その間に、資格試験を受けるために福祉施設で合計約3週間の実習を受けなければならないのですが、有給を使ってクリア。合格率18.8%(平成25年)という難関の資格試験を突破しました。
現在は社会福祉士の資格を使って事務所を開設し、区役所からは「この人あり」と言われる存在になっています。
デザイン会社に勤める中堅の女性デザイナーは、「webの仕事が増えて今までの知識では仕事にならない……」と不安を感じ、社長と交渉。現在、教育訓練給付制度を使って夜間に3カ月間、Webデザインの学校に通っているところです。
一流会社に勤める総合職の女友達も、(会社から半ば強制的に)ビジネス英語コースに通っています。昇進・昇格の条件としてTOEICの点数が必要であり、まだまだスコアが足りないとか。こちらも教育訓練給付制度を利用し、3月までにあと20回学校に通わないと……、と焦っていました。
極めつけはこちらも広告会社に勤める友人なのですが、来年、大学院でMBAをとる決心をしたそうです。なぜなら新しい教育訓練制度を利用すると学費の40%を援助してくれることになったから。会社も了解済みです。
私の周囲でちょっとしたブームになっている「教育訓練給付制度」。その制度が2014年10月より拡充されるので紹介します。
講座費用の20%、最大10万円を援助
教育訓練給付制度とは、仕事に関係した技術や技能のスキルアップや、再就職するために講座(学校)を受ける学費を国がハローワークを通じて援助してくれる制度です。利用できる人は、会社に在籍中か、離職後1年以内で雇用保険に3年以上加入していた人で、初回に限り、加入期間が1年以上で利用できます。勉強するための学費は本人負担となりますが、その20%に当たる金額(上限10万円)を上限として援助してくれます。
対象となるのは、厚生労働大臣が指定している講座となりますが、かなり多彩です。
情報処理技術者、簿記検定、訪問介護員、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー、医療事務などが人気ですが、インテリアコーディネーター、旅行業務取扱管理者、気象予報士の資格を取るための講座もOKです。
もし、資格試験のある勉強で、試験に合格しなくても、所要のカリキュラムを受講の上、受講修了すれば支給されます。通学でも通信教育でもOKです。
どんな講座なら給付金がもらえるかは、「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座」で検索を(http://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/T_K_kouza)。希望する資格名や、スクール名から調べることができるので、やってみたいこと、興味のあることを検索してみましょう。
教育訓練給付金の支給手続きは、本人が受講終了後1カ月以内に、本人の住所地を管轄するハローワークに書類を提出して支給申請を行います。会社からは「雇用保険被保険者証」のコピーをもらうだけなので、会社経由で申請しないところも気が楽です。
専門的な勉強をするなら学費の40%を援助
さらに、2014年10月から「専門実践教育訓練の教育訓練給付金」が新設されました。こちらは看護師、介護福祉士、保育士、建築士など、専門的職業に就業するため勉強や、工業、医療、商業実務などの専門学校に通いたい人、専門職大学院に行きたい人へ、1~3年間、支援をしてくれるものです。
申請資格は会社に在籍中か、離職後1年以内で10年以上雇用保険に加入している人で、初めての場合は当分の間、加入期間が2年以上で大丈夫だそう。
気になる支給額ですが、学費の40%で、年間32万円を上限とし、最長3年間も給付してくれます。さらに勉学終了後、資格取得をし、修了から1年以内に就職につながった場合は費用の20%を追加給付してくれます。つまり、最大で合計60%(年間48万円、最大144万円)を給付してくれるというわけです。
さらに、「教育訓練支援給付金」なるものも新設され、受講開始時に45歳未満で離職していることや専門実践教育訓練を修了する見込みがあることなどの一定の要件を満たす人は勉学の期間中、雇用保険の基本手当の日額の半額程度を2カ月ごとに給付してくれることになりました。仕事を辞めて勉学したい人は、この制度をバッチリ利用すれば、雇用保険の失業給付が切れた後も、最大で144万円+教育訓練支援給付金をもらえるというわけです。
「資格取得」について考えてみる
これからの時代、会社に長く勤めているだけでは給料は上がっていきません。勤め人とはいえ日頃から仕事のスキルアップをし、専門性を持たないとリストラの対象になったり、転職したいと思っても再就職先が見つからなかったりということがありえます。
よく、「資格では食べていけない」「資格をとっても給料が上がらないのでは役に立たない」と、資格取得のことをよくいわない人がいますが、資格は持っていないより、持っていたほうが確実にアドバンテージがあります。
趣味のような資格でも、「学びたい」という行動は、日々の生活を豊かなものにするのではないでしょうか。学びを習慣化することで、新しい発見や出会いもあります。せっかく勉強したいことがあるのなら、その分野の資格をとる勉強のほうが張り合いがあるというものです。たとえば同じ英語を勉強するのなら、単なる英会話教室より、TOEICスコアアップ講座のほうがその努力のモノサシになります。料理学校にいくのなら、調理師の資格が取れる講座もよいでしょう。
さらに「学びたい心」のワンランク上をいく「学び直したい心」をバックアップしてくれるのが、「専門実践教育訓練の教育訓練給付金」です。年齢に関係なく、真面目に勉学をすれば、これからでも専門的分野で身を立てることができるかもしれません。
新しいことに挑戦したいときだけではなく、今の業務を極めるためにも、教育訓練給付制度を上手に利用してキャリアを積んでいきましょう。
広告代理店、出版社にてサラリーで働くエディター、ライター、プランナー、コピーライターを経てフリーに。得意分野は投資、住宅関連。大ブレイクはしないけれど、仕事は堅実でハズさない。満を持して2008年に起業。個人投資家としての投資歴は15年選手(ちょっぴりプラス)。