なぜ女友だちとは、こんなに離れがたく、それでいて付き合いづらい存在なのか? プレジデント社新刊『女友だちの賞味期限』の出版にちなみ、各界で活躍する方々の「女友だち」についてのインタビュー、第6回目は、前回に続き、女子高生ビジネスのパイオニア、中村泰子さんです。中村さんは、女子高生の感性をマーケティングに生かす画期的な調査・セールスプロモーション会社、ブームプランニングの創業社長。最近の女子高生(JK)たちの友人関係について語っていただきました。

中村泰子さん

LINEは「あってあたりまえ」のインフラ

女子高生(以下JK)たちにとって、今も昔も友だちは大切な存在です。友だちの中でも特に"いつメン"(いつものメンツ=親友)ともなると、その存在は格別みたいです。また、彼女たちは、小学生から携帯電話を持っていて、中学生の時には当たり前のようにmixiやtwitterが、そして2012年からは、当たり前のようにLINEがあるなかで育っています。LINEは、今年高3の子たちが高1の4月から普及しはじめたので、JKにとって既にインフラに近いですね。ちょっと知り合いになると、簡単にLINEで友だちになって、なかには「知らない友だち」がいる子もいます。

連絡はほとんどLINEで取り合うので、1日スマートホン(以下スマホ)を家に忘れただけで、LINEの未読メッセージが100以上たまることもあるらしいです。LINEでどんなやりとりをしているかというと「日曜日映画観にいかない?」「宿題の答え見せて」といったやりとりから、TVを見ながら「今のシーンの松潤超かっこいい」「明日バイト行くの面倒くさい」といった独り言に近いもの、はてはスタンプの送りあいまでいろいろです。JKは大人と違って1つのメッセージが3行以上だと長いと感じるので、その時の気分を短文かスタンプで気軽に送りあい、“いまの気持ち”を共有します。起きてから寝るまで、友人とのおしゃべりを延々とLINEで続けるわけです。

グループを細分化して人間関係を整理

『女友だちの賞味期限』プレジデント社刊

LINEのグループ機能も使い勝手がいいようです。弊社に登録しているJKの1人当たりの平均グループ参加数は25前後です。これが多いのか少ないのか、一見分からないと思いますが、プライベートで20以上のグループに所属しているようなアクティブな方はなかなかいないと思います。これは、いまのJKがすごくアクティブというわけではなく、人間関係を整理するために「いつメン」「部活」「バイト先」などグループを細分化しているからです。たとえば「クラス全体」「クラス女子」「同じクラスの仲良し」と、参加者は一部被っているんですね。参加人数の少ないコアなグループでのつきあいが彼らにとっての「友情」にあたります。JKのLINEアカウント数は平均で2.2個です。友だちとのつきあいで使う「リアル」アカウント)と、趣味や一人つぶやき用の「裏」アカウント、のようにと使い方によってアカウントを使い分けたり、「高校用」「地元用」など、相手によってアカウントを使い分けたりしています。

スマホは「ゆるく」つながるためのツール

スマホで友情を「保存」できるようになったぶん、JKたちは友情を通じた思い出作りに躍起になっているかのようにも見えます。傍から見たら疲れないのかなと心配にもなりますが、彼女たちは疲れないためにマイペースを保つ術も身につけています。いつでもつながれるからこそ、オンラインでは自分がつながりたいときにつながって、言いたいことを投げる。見せたい要素を見せたいときに見せたい相手に見せている。大人から見れば、「スマホに依存した24時間つながっている窮屈な友情」に見えるかもしれませんが、スマホを通じて彼女たちはむしろ「ゆるく」つながれるようになりました。LINEやtwitterを通じて「元小(もとしょう、小学校が一緒)」「元中(もとちゅう、中学校が一緒)」等の過去のコミュニティとも、つながりたいときに簡単につながれるようにもなった結果、「地元での友情」を大事にするJKが増えている気がします。

中村泰子(なかむら・やすこ)
山口県出身。1986年、企画集団「スキャットクラブ・オブ・ジャパン」を設立、女子高生ビジネスのパイオニアとなる。88年、株式会社ブームプランニング(http://www.boom.co.jp/)を立ち上げ、現在全国約1万人の女子高生を中心としたマーケティングやセールスプロモーションを展開。未就学児から小・中・高生、大学生、OL、主婦にネットワークを広げ、さまざまな職種で企業の商品開発にかかわる。著書に『「ウチら」と「オソロ」の世代 東京・女子高生の素顔と行動』がある。